イラクは、ある意味ポテンシャルの高いヤンキーだ。
見た目は、怖そうだとか悪そうというイメージがあるけども、勉強もそこそできるし、人付き合いもいい。単に見た目で損している。
イラクも同じだ。テロや戦争というイメージで人々は、イラクを恐れる。けれども、実際に行ってみると、そこはまさしく古代遺跡パラダイス。曲がりなりにも、あのメソポタミア文明を生み出したの土地なのだ。
なんとなく頭ではわかっていたとしても、イラクという場所に来ると人類史の長さ、そして2,000年以上前には、すでに洗練された国家や人々の暮らしがあったのだということを実感する。
そんな古代文明をグッと身近に感じられる、イラクの観光スポットをご紹介。
観光ビザ
2019年末の時点で、観光ビザが発行されるのは、団体旅行者のみ。単独の旅行者には、観光ビザは発給されない。観光ビザ代は50ドル。有効期間は30日間。イラクのビザ事情はよく変わるので、要注意。
治安は?
イラクと一口に行っても、場所によって治安はだいぶ異なる。日本の外務省によれば、クルディスタン自治区は危険度は2。首都バグダッドやイラク南部は危険度3。シリアとの国境側やモスルなどを含む北部は、退避勧告が出ている。
イラクの治安状況は、天気のように変わりやすいので、定期的にチェックし、行けるタイミングをみはかるべし。
イラク旅行は個人でもできる?
イラクは、まだ一人で気軽に旅行ができるような場所ではない。ヒンターランドトラベルやアンテイムド・ボーダーズといった旅行代理店のツアーへの参加がおすすめ。ちなみに両者ともイギリスの会社である。
ツアー料金は、時期や人数にもよるが、私が行った時は10日のツアーで3,600ドルほどだった。
イラク国内は検問所が多く、個人が自由に行き来するのも難しい。現地の事情に明るいフィクサーなどと行動する方がベターだ。
イラクへ行くには?
イラクの玄関口となるのが、首都にあるバグダッド空港。イラクの首都バグダッドへは、エミレーツ航空、ターキッシュエアライン、カタール航空、イラクのナショナルフラッグ、イラキエアウェイズなどのフライトがある。
イラクのおすすめ観光スポット12選
ここで紹介しているのは、あくまで私が実際に訪れた場所だ。治安や時間の都合で、回りきれなかった場所も多くある。それほどイラクは、見所にあふれたスポットと言えるのかもしれない。
古代都市バビロンの遺跡
空中庭園やバベルの塔で知られるバビロン。現在我々が見ることができるのは、バビロンの黄金期を築いたネブカドネザル2世の時代に作られた、宮殿や神殿、イシュタル門である。
ちなみに現地にあるのはイシュタル門の複製。本物はベルリンの博物館に展示されている。このように、遺跡保護の観点から、イラクで出土した多くのものが、海外に流出しているケースが多い。
ネブカドネザル2世の広大な宮殿は、アレクサンドロス大王が没した場所でもある。近くには廃墟と化したサダム・フセインの宮殿もある。イラクに行くなら、マストで訪れたい場所だ。
サマッラのらせんミナレットと大モスク
9世紀アッバース朝の時代に建てられたモスクとミナレット。その規模は、当時の繁栄ぶりを物語る。
モスクに隣接する塔をミナレットと呼ぶのだが、通常ミナレットはえんぴつ型だったり、煙突型をしている。サマッラにあるらせん型のミナレットは、世界的に見ても珍しい。
世界一巨大な墓地ワディ・アル・サラーム
イスラーム教シーア派の聖都ナジャフには、世界一巨大な墓地がある。それがワディ・アル・サラーム(平和の谷)と呼ばれる場所だ。
墓で眠るのは、イラク国内の人々だけではない。パキスタンやアゼルバイジャン、インドなど世界中のシーア派たちが、ここで眠っている。
死者の都!?広がり続ける世界一巨大な墓地ワディ・アル・サラーム
古代都市クテシフォンのレンガアーチ
ペルシャ帝国であった、ササン朝の首都クテシフォンに建てられた宮殿。現在残っているのは、「タク・カルサ」と呼ばれる、宮殿の一部であったレンガ状のアーチ。支えなしで作られたレンガアーチとしては、世界最大のものである。
シーア派の聖地ナジャフ&カルバラー
イラクや隣国のイランは、イスラーム教のシーア派が多数を占める。シーア派はイスラーム教の中では少数派だ。そんな彼らの聖地がナジャフ、そしてカルバラである。
聖地にはシーア派を語る上では欠かせない重要人物、殉教王子ことイマーム・フサインやイマーム・アリーなどの聖廟がある。聖廟の近くには、日本の寺のようにお土産屋やスイーツショップがひしめきあう参道があり、聖地に参拝する信者たちで、にぎわっている。
日本の大学が発掘に携わったアッタール洞窟遺跡
国士舘大学のチームが発掘に携わったという洞窟遺跡。カルバラーから車で1時間ほどの場所にある。洞窟からは、約2,000年前の墓や当時の織物、皮革製品などが出土している。
シュメール時代の神をまつったニップル遺跡
紀元前6,000年前に宗教的中心地であったニップルに残る遺跡。遺跡は人里離れた荒野にあり、遺跡にたどり着くまでに約1時間ほど歩かねばならない。遺跡の周りには、当時のものかと思われる陶器の破片が、無数に散らばっている。
アガルクーフのジッグラト
首都バグダッドから車で1時間ほどの場所にあるのが、紀元前2,000年前の古代都市ドゥル・クリガルズで築かれたジッグラト。
ジッグラトは神に祈りを捧げる場所として作られた聖塔のこと。ジッグラトの近くには、シュメールの神を祀った神殿の遺跡や、サダム・フセイン時代に作られた廃墟と化したバーがある。
古代都市ウルのジッグラト
イラク南部の町ナシリアの近くにある。紀元前2,000年頃に作られたという古代都市ウルのジッグラト。シュメールの主神であり月神であるナンナを祀るために作られた。
世界一美しいウルのジッグラト。ピラミッドに並ぶ古代遺跡の謎を解く
メソポタミア文明を知るイラク国立博物館
首都バグダッドにある博物館。「イラク建国の母」とも呼ばれた、イギリス人のガート・ルート・ベルが中心となって設立した。
アッシリア、バビロン、ウルなどこの地で栄えた古代文明に関する発掘品が展示されている。
イラク戦争で多くの品が略奪され、海外へと流出してしまった。しかし、国内外の関係者の努力により再び集められ、博物館再開へと至った。バグダッドを訪れるならば、ぜひとも行きたい場所である。
沼地のアラブ人が暮らす湿地帯
中東というと、どこも砂漠でしょう?と思われがちだが、イラク南部には湿地帯が広がる。古くから湿地帯には、マーシュ・アラブ(沼地のアラブ人)と呼ばれる人が住んでいた。
沼地には葦で作られた家がぽっかりと浮かび、水牛がのっそりと歩く。現在、沼地で暮らす人々は減ったが、ほのぼのとした沼地の光景は今でも残っている。
チグリス川とユーフラテス川が出会う場所
イラク第3の都市バスラから車で1時間ほどの場所にあるのがクルナ。そこにチグリス川とユーフラテス川が合流する地点がある。2つの川が合流し、シャットルアラブと呼ばれる1つの川になって、ペルシャ湾に流れ込む。
合流地点は、ジモティーの憩いの場になっており、釣りをしたり、まったりする人々でにぎわっていた。
近くには、「アダムの木」と呼ばれる木がある。イラクの南部は、聖書に出てくる「エデンの園」だった場所かもしれない、と言われている。
中東のヴェニスと呼ばれた港湾都市バスラ
かつてはヴェニスのような光景が広がっていたバスラ。現代では、石油製品を輸出する重要拠点として知られる。
イラン・イラク戦争やアメリカの侵攻などをへて、様子はすっかり変わってしまったが、16世紀頃の建物が残る旧市街や、バスラ湾クルーズを楽しむことができる。
メソポタミアの恵みがつまったイラク料理
肥沃な土地と呼ばれるだけあって、イラク料理は彩り豊かな野菜や果物がふんだんに使われている。
イラク料理はインドやイランの影響も受けており、ケバブやチキンティッカは、日本人の口にもよく合う。国民的料理であるチグリス川の鯉を使った「マスグーフ」は、イラクに行ったら一度は食べたい料理。
古代文明パラダイスなイラク
メソポタミアの恵みを感じるイラク料理、そして静かに横たわる雄大な歴史の鱗片。イラクには、ワクワクするものがたくさんつまっている。
そこはまるで、古代文明ランドである。けれども、現代の戦争やテロで旅行客が少なくなり、その事実が忘れ去られている。
現代の我々にとってイラクは、一種の秘境とも呼べる場所になっているのかもしれない。
イラクをもっと知るなら
イラクには観光客がほとんど訪れないゆえに、歴史的な遺跡もあまり知られていない。イラクのサマッラのミナレットやニルムドな度をはじめとする、消滅の危機に瀕した遺跡を紹介するのが「消滅遺産」。
イラクといえば、メソポタミア。メソポタミアといえば古代文明。この古代文明を知らずして、イラクを知ることはできない。