ベルリン4月日記。モラハラ男、3日で同棲解消、騒音問題で精神病む

季節の変わり目は、天気も精神も乱高下するらしい。そして相変わらず、ベルリン生活では変なことばかり起きている。ベルリンに来て半年経つというのに、相変わらずベルリンとの距離を感じる。焦りすらある。なぜ自分はやたらとベルリンに溶け込もうとするのか。そこには一種の激しい憧憬があるのかもしれない。

過去の日記
ベルリンの1月。裏切り、依存からの解脱。絶望から這い上がるまでの31日奮闘記
ベルリンの2月。大荒れのドイツ選挙とセックスクラブデビュー
ベルリンの3月。退去トラブルで発狂寸前、朝からクラブ、異国で一人で暮らす苦悩

4月1日(火)
椅子をペンキで塗り直す。なんでここまでしなきゃいけないんだ*。ドイツは借主の清掃負担が多すぎる。こんだけ高い家賃を払っているのに。しかし、それも全てはデポジット全額回収のためだ。とりあえず家にあったペンキで人生初めてのペンキ塗り。

*多分しなくても良いのだが、筆者は何かに取り憑かれて、すべての汚れを消し去ることに必死になっている

4月2日(水)
追加のペンキを買うため、ホームセンターへ。やはり犬猫は売られていない。しかし、虫や魚、モルモットは売られている。これらにはアニマルウェルネスは適用されないらしい。買ったペンキを塗ってみたが、色が微妙に違った。汚れを増やしただけだった。何かをやる度に、問題が増えていく。もうこの世の終わりだ*。

*ドイツ人が求めるスタンダードがわからず、筆者は追い込まれている

4月3日(木)
近所にある刑務所の前を通ったら、ムショの窓が開いており受刑者らしき男が見えた*。男が口笛を吹いて気を引こうとしている。あたりにはそれらしき人はいない。私に声をかけているのか?あちらが手を振ってきたので、とりあえず中の人に向かって手を振り返す。なぜ私は見も知らぬ受刑者に挨拶しているのか。というか受刑者ですよね?頭が混乱。というわけで、ドイツの刑務所に関するドキュメンタリーを鑑賞。

*ドイツにはオープン形式で塀が低く、中の建物が見える刑務所がある

4月4日(金)
ホームセンターで新たにペンキを買い直す。どうやら先日買ったのは、同じ白でも色が違う白だったらしい。汚れをすべて一掃。これにて問題解決。

4月5日(土)
この家で過ごす最後の日。通常の引越しだと、感慨深くなるものだが、清掃と引越し手続きで忙しくそんな余裕もなし。ドイツでの引越しは、過去一忙しい。寝ようとしたら、爆音のテクノが近所から聞こえる。音源はかなり遠いはずだが、テクノの振動は勢力を失っていない。今までだと「眠れんやろがい!」とキレていたところだが、「やべえ、テクノパーティーに行かなきゃ」という謎の焦りに駆られる。深夜1時過ぎからますますパーティーは勢力を増していた。あんだけ爆音なのに、誰も文句言わないベルリン市民が逆に怖い。

4月6日(日)
ウーバー2往復で荷物を運び込む。新居にはエレベーター無く、4階なのできつい。新居に着いたが、家主*もまだ引越しが完了しておらず、親戚総出で荷物を運んでいる。私より荷物があるはずなのに、引越し業者を使わない倹約ドイツ人にビビる。そして今日も家主は授乳中。この後、車でフランクフルトに向かうという。「毎月、自分たち宛の郵便を転送してくれ」という謎の業務を承る。カビが生えるから注意して!と窓の開け方や頻度について細かくレクチャーを受ける。カビが生えたら一巻の終わりらしい。そして本日より、同棲が始まる。

*新居はサブレットといういわゆる又貸しスタイル。家主が長期の旅行に出かけるのでその間、家を間借りするという方式。

4月7日(月)
前の家の引き渡し。最後の掃除を終えて、不動産会社の担当と落ち合う。「きれいじゃん、やるねえ。クリーニングは不要だから、全額デポジットが戻ると思うわ」と言われる。勝利の瞬間。

しかし家に帰ると、同棲がつらい。自分の時間がなさすぎる。今まで100%自分の時間だったのに、自分の時間が1時間もない。町で一人で歩いている人を見かけると、うらやましくなる。なんだこの精神状態は。

4月8日(火)
3日目にして、同棲解消。相手はモラハラ気質のやべえやつで、毎日夜になると、機嫌が悪くなり人格否定をするタイマー式モラハラ野郎だった。翌日からロンドン出張。モラハラ野郎を私の家に置いておくわけにはいかない。我慢ならずに出ていってくれと通達。その時、夜の9時。逆ギレされ人生初の「警察を呼ぶ」を食らう。怯んだ。警察を呼びたいのはこっちである。しかしドイツ語ができないしな・・・こういう時、言葉ができない外人はつらい。モラハラ野郎は、その後自分で食事を作り、シャワーを浴びるなど、ゆっくりと時間を過ごし、深夜12時に出ていった。どういう精神の持ち主なのか。サイコパス殺人鬼なのか。これにて関係は全て終了。

4月9日(水)
朝からベルリン空港に行く。仕事のイベントに参加するためロンドンへ。ドイツと基本的に景色が同じなので、違う国に来た感じがしない。しかし、ドイツと違いバリバリのカード社会*だったため、現金を引き出すという無駄なことをしてしまった。駅のプラットフォームで誰もタバコを吸っていない**ことにビビる。がっつり冬服なのに、足はサンダルやビーサンを履いている人がいる。これがロンドンのおしゃれなのか!?アジア人が多い、自分と同じ背丈の人が多いことに感動。ロンドンは随分と多様な街らしい。そしてベルリンにはアジア人が少ないことを改めて実感。

*ドイツは現金社会のため、現金でしか支払えない場所が多くある。よって常に現金を持ち歩く必要がある。
**ベルリンでは禁煙と書いてあっても、駅でタバコを吸っている人が多くいる

4月10日(木)
イベント会場のブライトンは、しけているがどこか落ち着く。メインストリートには2メートルおきに中華料理屋がある。ブライトンの雰囲気は、ベルリンに似ているなあと思っていたら、イギリス人の同僚が「ブライトンはLGBTQフレンドリーな街なんだよ」と言うことで納得。世界各国から人々が集うイベントで、「ドイツはネットが遅い」などとディスられていた。つられて笑う自分。ヨーロッパジョークが理解できるようになったらしい。ハリポタジョークは未だイギリスで健在の模様。イギリスはすべて英語で楽だが、なんだかドイツ語が恋しくなる。

4月12日(土)
週末なのでロンドン散策へ。やっぱりロンドンのホームレスは堂々としていた。ホームレスらしき男性が電車に乗り込み、国の社会保障制度について、まあまあの声量で文句を言っていた。そして向かいに座る人が「それは大変ねえ」と相槌を打つ。慈悲深い人である。しかし、電車を降りると、「何だったのあれ」と態度を一変していた。

ソーホーのユニクロに立ち寄る。ベルリン、ロンドン、クアラルンプールでも、ユニクロは飛び抜けていつも人が多い。世界はどんどんユニクロ化しているらしい。スマホはアップル、家具はイケア、服はユニクロ。世界の画一化は避けられない模様。

その後、古着マーケットがあるブリックレーンに。どの店も服のサイズがぴったりで嬉しすぎる*。ドイツ人の客がいたが、「これ小さすぎるねえ」と話していた。立場逆転である。ブランドもの古着もあったが、やたらと高いし、ブランド品を買うのはクールじゃない、と思ってしまう自分がいる。どうやら脳内がベルリン化**してきているらしい。夏にベルグハインに行くと言うお姉さんに遭遇。ロンドンのクラブ事情について教えてもらった。

深夜ベルリンに戻る。電車に乗っていると、クラブに行く若者軍団に遭遇。予習がてら?なのか、ヘッドフォンでテクノを一生懸命聞いているのが、微笑ましい。

*ドイツではXSサイズが日本のMサイズぐらいあるので、サイズの合う服を見つけるのが難しい。そのため、筆者は店に行くたびに「なんででかいのしかないんだよお」とキレている。
**ベルリンで繁盛しているのは、もっぱら古着屋。新しくて綺麗な洋服を買おうとか、ブランドを身につけたいという心意気を持つ人は少ない。環境にもお財布にもエコな消費がメイン。ベルリンの人々の雰囲気は、下北沢や高円寺にいる人に似ている。

4月13日(日)
海賊の宝箱みたいなインテリアが家にあるのだが、中に前の住人の持ち物が入っている*。何気なく中をのぞいてみたら、激ヤバなものが入っていた。ブログですら書けないものが入っていた。この家、過去一でヤバすぎる。パンドラの箱を開けてしまったことを悔やむ。なぜ個人の秘密に関わるものを置いていったのかが謎である。

*前の住人はもうこの家には90%戻る気がないらしいのだが、なぜか自分のものを残していった

4月14日(月)
今更気づいたが、家のバスルームが激狭な上、カビだらけで汚い*。こないだドキュメンタリーで見たドイツ刑務所にいる受刑者のバスルームより劣悪な環境である。この日からまた掃除が副業となる。ドイツのDIY精神にのっとり、自力でパッキンの張り替えを試みるが、思ったより重労働。業者を呼ぼう。

*内見の時によく確認していなかった。家探しの焦りで、見落としていたことを悔やんでいる

4月15日(火)
業者がすぐに来てくれ、バスルームはまともになった。掃除、引越し、モラハラ、出張、新しい家問題などで、力尽きる。一人ではもはや抱えきれんぞ。新しいことを楽しめないのは、疲れているサイン。

4月16日(水)
生活を立て直すため、再びジム探し。1日で3件のジムを回る。2週間後に閉店するジム、パリピジムを経て、ようやくまともなジムにたどり着いた。ジムのBGMはどこもテクノだった。

ホームレスが多く治安が悪い路線として知られるU8のプラットフォームで、DJがテクノを演奏してもいいというニュース。爆音テクノでホームレスを追い出す作戦らしい。それにしても、ベルリンの鉄道会社は奇抜なことを考えるな。

4月17日(木)
ベルリン市内での引越しといえど、場所が違えばまた生活を一から整えなくてはならない。使う路線や通うスーパーも異なると、すべてがおニューである。またレベル1からのやり直しか・・・ちょっとしんどい。

4月18日(金)
ロンドンから帰って以降、騒音問題に悩まされている。上の住人がドスドスと歩くたびに、机が揺れる。朝は足音で目が覚める。巨人でも住んでいるのか。騒音は精神をおかしくさせるらしい。発狂寸前になる。騒音以外にも、家のいろんな欠陥が目につくようになる。入居して数週間でこれか・・・先が思いやられる。ドイツには賃貸者保護協会*なるものがあるが、基本対応はドイツ語オンリー。追い込まれて、前の家に戻ろうかと思い、値段をWebサイトで見たら、月額200ユーロも値上げしてやがった。嘘だろ。調子こきすぎじゃないか。絶望である。取り合えずオーナーにメールを送る。

*家賃が高すぎないか、契約書のチェック、そのほか住まいの問題などについて相談ができる、とのことだが予約が取れるのが数ヶ月後先ということもしばしば。そして対応は基本ドイツ語。

4月19日(土)
オーナーから返信が来ていた。オーナー曰く、「5年間住んだがそんな騒音に悩まされたことはない」と言うことと、「その家はこれまで私が住んだ家の中でも一番平和な物件だ」と言う。私はまた、世にも奇妙な世界に来てしまったのだろうか。と思いきや、その日から騒音は忽然と消えた。騒音がない生活って素晴らしい。

デザインマーケットへ。面白いデザインのアクセサリーを作っている店主と会話。生物学的男性だが、心は女だということで、白いハイヒールを履き、3Dプリンターで作成したという謎の胸とブラジャーを身につけていた。コンセプトが斬新すぎるため、凡人には理解しづらい。本人曰く、「第2の皮膚」だという。性転換はしないのか?と聞くと、自分の体は個性だから変える必要ない。ただ女性として自己表現をしたいから、こうしたアクセサリーで女性を表現しているのだ」という。「自己表現」を追求する姿勢がベルリンらしい。

4月20日(日)
今日は暑い。半袖でも暑いぐらいだ。8ヶ月ぶりにマウアーパークへ行った。初めてベルリンを訪れた時に来た場所である。ベルリンの雰囲気に圧倒され、若い頃であれば移住していたな、と思ったのがこの場所である。しかし8ヶ月後に、ちゃかーりベルリンに住んでいるのだから、人生はわからない。

8ヶ月前のベルリン訪問についてはこちら
大麻、トップレス、テクノ。やっぱりベルリンは狂っていた

マウアーパーク
もはやトップレスには動じないぜ・・・


天気がいい日のベルリンは、公園でこうした路上イベントがそこかしこで開かれている。大麻を吸いビールを飲みながら踊る人々。ヒッピー感がすごい。

4月21日(月)
再び肌寒い曇天。なんだこのジェットコースター天気は。4月でもそこそこ厚めのジャケットが必要になる。けれども、曇天で寒い方がベルリンらしくて落ち着いてしまう自分もいる。天気同様に精神もなんだか不安定になる。

ベルリンはとにかくイベントが多い。春になると、一気にイベント量が激増し、路上や公園に人が多くなる。好奇心が無駄に旺盛なために、あれもこれもやろうとして、力尽きたり、イベントを逃してはならぬ、という焦りすら感じる。落ち着け、自分を取り戻せ。


リサイクルボックスにもイベントポスター。クラブイベントが多い。町はイベントポスターであふれており、あらゆる平面はポスターの餌食になっている。こうしたポスターは、1週間おきぐらいに張り替えられており、イベントの多さとスピード感の速さを思い知る。

4月22日(火)
ベルリンでは、不用品を路上に置いておくと、すぐになくなる(誰かがかっさらう)。試しに使いかけのシャンプーや、食べかけのハリボーを置いてみたのだが、やはりすぐに消えるので面白い。初めは、他人が捨てたものなどもらうまい、と思っていたが、最近ではどんなものが捨ててあるのか、近寄って品定めしている自分がいる。自分にとってはいらないものが、他人の家で活用されるのが嬉しい。


電気製品、リーバイスのジャケットも24時間以内に消える


ベビーチェアのような大型物品もちゃんと消える

4月23日(水)
ネットフリックスの「Next in Fashion」に感化され、自分で服を作ろうと思い立ち、アップサイクルのワークショップへ。ベルリンは安い古着にあふれ、モノを捨てない主義のためか、アップサイクルファッションがかなり普及している。それにドイツで買う服はすべてサイズがでかいので、毎回裾直しなどが発生する。自分で直せれば節約にもなるし、服の幅も広がる。我ながらいいアイデアだと思ったが、初心者なので当日はミシンで裾直しをするだけに終わった。道のりは長い。


週末になるといろんな場所で開催される古着マーケット

4月24日(木)
ベルリンのあちこちに、オノ・ヨーコが出没している。単なる日本のアーティストだと思っていたが、ここまで大々的にやっているので、日本とか関係なく、世界的なアーティストだったということを思い知る。オノ・ヨーコの思想はヨーロッパと相性が良い模様。オノ・ヨーコ展に行こう。


ベルリン市内に出没するオノ・ヨーコ

4月27日(日)
朝クラブ。やばい、定期的にテクノを体に入れないと、ムズムズするようになってしまった。テクノの呪いか。2回目なのに、顔を覚えられていた。スタッフは「人の顔を覚えるのが仕事だからな」という。毎回ここに来ると、見たこともない珍景が出現する。
やべえやつに話しかけられる。子供が2人(母親はそれぞれ違う)いるが、家庭に縛られたくねえ!だから今週は週3でクラブに来た、と愚痴をこぼされる。ロンドンで見たホームレス対応を思い出し、ひたすら「それは大変でしたねえ」と無心で対応する。

4月29日(火)
なぜドイツ人は、ジムの更衣室でも平気で全裸になれるのか。しかもまったく隠さない。

4月30日(水)
最近やたらと、交通網がおかしくなっている。最終目的地まで行かずに、途中駅止まりになったり、工事のせいで、遠回りする羽目になっている。主要駅への路線も平気で断絶。よって30分でたどり着ける場所も、1時間ぐらいかかる。暖かい春だから作業しやすくなったのか・・・工事の看板を見たら、工事期間はなんと3ヶ月。長すぎるだろ。