ドイツ語の集中講座に通い始めてすでに1ヶ月が経っていた。しかし悲しいことに、今だ全く聞き取れなければ、話すこともできないベイビー状態である。
中途半端なドイツ語で話せば、「あー」とか「うー」とか出てこないので、自分がやべえやつみたいに思えてくる。なんともプライドが傷つく話である。英語に切り替えて大人としての自尊心を保つ戦法もやってみるが、これではドイツ語は上達しない。
なぜドイツ語を勉強するのか
語学学校のクラスでは、2年や5年ベルリンに住んでいるものの、ようやくドイツ語を勉強し始めたというクラスメイトもいる。彼らが証明するように、確かにベルリンでは英語のみで生活することは可能らしい。しかし、私自身は圧倒的にドイツ語の必要性を感じている。ドイツ語ができないと圧倒的に不利かつ、生活に制限がかかるためだ。
例を挙げればキリがない。就職、郵便の受け取り、携帯契約書の確認、生活に便利なアプリなどなど。たった1ヶ月だというのに、ドイツ語がわからずモヤモヤすることが多かった。しかもなぜかドイツではめちゃくちゃインターホンを押され、訪問してくる輩がいる。マレーシアでは年に数回あるかないかなのに。
とにかくほとんどがドイツ語のオンパレードであり、英語だけで生き抜くのは、戦場で小型銃だけで戦うのと同じである。そう、強く戦うにはドイツ語というオートライフルが必須なのである。
ドイツ語で話しかけられる
ドイツではアジア系でもアフリカ系でも見た目で判断せず、全員がドイツ人と見なされるという前提がある。オフィシャルな場所だと、「(説明は)英語がいいですか、ドイツ語がいいですか」という選択肢が与えられ、見た目でジャッジせず、相手の出方を伺うという戦法がよく見られる。これはいいことなのか、悪いことなのか・・・
というわけで、近所のおばさんや、タバコくれおじさんなど、道端でいろんな人にドイツ語で話しかけられる。このことを語学学校のクラスメイトたちに話すと、「俺はいつも英語で話しかけられるけど・・」という韓国のクラスメイトがいた。
おそらくその理由は、彼はこのクソ寒い中だというのに、クロックスに白靴下、スウェットという韓国で定番のファッションをしているからだろう。広いベルリンだが、冬にクロックスを履いている人を彼以外に見たことがない。このことをドイツ人の友人に話すと、「クレイジーだ」とのたまわっていた。
ドイツ人でさえも驚愕するという、韓国のクロックスファッションとは・・・
ドイツ語は習得が難しい?
勉強し始めてようやく、「あ、これはやばい言語だ」ということに気づいた。世界でも難しいと言われるアラビア語を勉強したことがあるので、それに比べれば楽でしょっと思っていたが、そうでもなかった。それにドイツ語は、アルファベット文字なのでまず読み書きは簡単にクリアできる。が、すぐに壁にぶち当たることになるのだ。
とにかく長い
こんなに長い単語があるのか、と思うぐらいドイツ語ではとにかく長い単語がよく出てくる。例えば「すみません」という意味の「Entschuldigung」。これを最初に見たときは驚愕した。長すぎて読めねえ・・・
そう、英語であれば簡単な言葉で言えることも、ドイツ語だととにかく複雑で長い。無理だと分かっていても、ドイツ語の先生に「なんとか短くなりませんかねえ」と直談判してしまうほどである。その度に先生は、「これがドイツ語というものです。とにかく受け入れ、覚えて、練習しなさい」といわれるだけである。
名詞の性ってどういうこと?
長さよりもとにかく驚愕したのが、いちいち名詞に性があることである。女性名詞、男性名詞、中性名詞と3パターンある。性によって単語の前にくっつく言葉も異なるため、それをセットで覚えなければいけない。しかもその性の単語も、使われ方によってどんどん変化していく。これを覚えるのは無理ゲーでは・・・?
これは英語にも日本語にもない発想である。近しいヨーロッパ言語のスペイン語やフランス語には、同じ概念がある。クラスにはスペイン語やフランス語を話すクラスメイトもいるが、スペイン語では女性名詞なのに、ドイツ語では男性名詞といったように異なるため、彼らも困惑していた。
「これがXboxです」とドイツ語で書かれたポスター。Xboxは女性名詞。こうした固有名詞を含め、あらゆる名詞に性が存在する。
トリッキーな動きをする動詞
これまでに習った言語は、基本的に主語>動詞>目的語といった構成をしていた。しかし、ドイツ語の動詞はかなりトリッキーな動きをする。動詞を2番目に置くというのが基本ルールで、最初に来るのは副詞や目的語で、主語が3番目といったこともよくある。これぐらいならまだ良いが、動詞の中には、電車の切り離しのように、分解して使うものもある。おいおい、初めから1単語で済ませてくれよ・・・
とにかくドイツ語はあらゆることを複雑にしたがる言語らしい。それを考えれば、英語ってなんて簡単な言語なんだろうと今更ながらに思う(習得するのにだいぶかかったが・・・)。
複雑すぎる!長すぎる!といった文句を私がいちいち入れるので、語学学校の先生も、辟易しているだろう。とんだクレーマーやないかと。
というわけで、語学勉強の意欲の火が消える日もそう遠くはないかもしれない。