環境が違いすぎて慣れるのに苦労する分、驚きも多くある。というわけで、まだ1週間だがドイツ(ベルリン)に住んでみて驚いたことを紹介。
食品への意識が高い
ドイツのスーパーでは、商品にランク付けをしている。どういうランクかというと、栄養バランスの高さを示すニュートリスコアである。これは色んな商品についている。5段階評価で、栄養素に優れていたらA、逆に優れていなかったらEである。いわば栄養素の通信簿である。
消費者にとっては健康な食品を買うための指標になるのかもしれない。しかし、個人的には困ることもある。何せ日々食べているものが、すべて優等生な食品とは限らないのだ。ドイツが誇るソーセージやサラミ類は、健康に害を与える可能性が高い塩分や飽和脂肪酸が多いということで最低スコアのEがほとんど。チーズも同様である。これでは食わない方がいい、と言っているようなもんである。
ソーセージのほとんどは最低ランクのE。それでもドイツ人は食べる
ちなみにニュートリスコアはドイツだけでなく、スイスやフランスでも導入されているが、スイスでは「本当に意味あるかね?」ということで廃止を検討している企業も出てきているという。
さらに、肉類や牛乳などはニュートリスコアに加え、動物福祉スコアなるものがついている。これは、動物たちがどのような環境で過ごしたかや、屠殺条件、動物の健康管理の方法などをスコアにしたもの。例えば最高ランクの4であれば、小屋の密度が低く、快適な環境で過ごしたプレミアムお肉となる。簡単に言えば、5つ星ホテルでミシュランレストランのものを食べていた動物は最高ランクみたいな感じである。
右下にあるのが動物福祉スコア(Haltungsform)。
これまで鶏肉に限っては、身動きができない狭い小屋で一生を暮らしている、という悪いイメージしかなかった。普段の買い物ではそこまで深く考えていなかったが、こうして明らかにランク付けされると、買う方も安心である。値段や生産地、キャッチコピーに惑わされることなく、自分が必要な品質を明確な基準で持って選んで買える、というのは大きい。
ドイツではいやがおうにも買い物の際に、こうして動物や環境のことを考えるはめになる。うーん、めちゃくちゃ進んでるなあ。
ビオ(Bio)の席巻
先のスコア以上に、ドイツを席巻しているのがビオ(有機食品)の存在である。商品を見るとやたらとビオと書いてあるし、ビオ専用のスーパーもある。ビオだらけである。
有機栽培だとか、無農薬と書いてあると何となく良さそう、という浅さはかなノリでビオ商品の方を選択してしまう。そうした商品は高いイメージがあるが(実際は高いものも多い)、中には一般の商品とほとんど値段が変わらないものもある。ただ、ビオマーケットに行くと、やはり普通のスーパーよりも人が少なく、やはりそこまでして・・・と思う人も一定数いるのだろう。完全なバイアスだが、ビオマーケットにいる人は、確かに意識高そうである。
というわけでドイツに来てまだ1週間も立っていないのに、食品に対する意識が爆あがりしてしまうのであった。
犬が服を着ていない
寒くて暗い冬のドイツ。外に出ても何も楽しいことはない。そんな中、唯一外に出てほっこりするのが、町を行くワンコの存在である。ご存知の通り、ドイツでは公共の交通機関でも、ショッピングモールでも、どこにでもワンコを連れて入ることができる。
ZARAでもダックスフンド2匹を連れたおばさまが買い物をしていたが、よく考えれば犬連れで洋服を買おうというモチベーションがよくわからない。また、人間ですよ、と言わんばかりにリードなしで歩いている独立した犬もいる。
というわけで、ワンコを見かける機会は多くあるのだが、驚くべきことは、ほとんどの犬が洋服を着ていないということである。いや、驚きポイントは服を着ていないことではなく、このクソ寒いのに着ていない、というポイントである。人間はあんだけ着込んでいるのに。
寒くないのか・・・?
実家で飼っている犬は、冬になるとプルプル震えているのに、ドイツの犬は、まったく震えていない。同じ犬種なのに何が違うのだ?ペットショップでは犬の服は売っているものの、服を着る犬はあまりいない(←寒さが増すにつれて着用率が増えていくことが確認)。ドイツの犬は、やはりその土地の気候に慣れているから平気なのだ、と考えるしかない。
アートのレヴェルが高い
ビビり過ぎて”レヴェル”などと書いてしまったが、思った以上にベルリンのアートレベルは高いことに衝撃を受けた。何気なしにアートマーケットに行ったのだが、売られている品々のレベルが高いこと・・・しょせんは庶民が作ったクラフト作品でしょ、となめていたのがばちが当たったらしい。
ベルリンのアートマーケット。絵やポスター、アクセサリーなど本格的なアート作品が並ぶ。
もはや人間国宝が作ったのではないか、と思われる品々ばかりなのである。その完成度とオリジナリティ。これでは大量生産されている既製品が霞むのもわけはない。
芸術意識が高い
街中を歩いていると、壁や金網にポスターがよく貼ってある。日本でポスターといえば、マナー意識を高める啓発系や、政治家のむなしいスローガンを添えたポスターぐらいだが、ここベルリンでは、そのほとんどが芸術に関するものである。
明らかに寂れた通りでも、ベートヴェンのシンフォニーなどという高尚な言葉が掲げられているのは驚きである。なのでどーでもよい道端で、「へえー面白そう」などと言って、ベートヴェンについて考えをめぐらせる時間が発生する。そう、街中を彷徨っているだけで、予定が結構埋まるのがベルリンである。
街中に貼ってあるポスター。ほとんど人通りがない
中にはどういう趣旨のイベントかよくわからないものもある。そしてこういう時ドイツ語が必須となるのである
ある日、住宅地を歩いていると、どこからか爆音でオーケストラの曲が流れていた。きっとクラシック好きな素敵な人が流しているのね、と思いきや。ふと横を見ると、その音源が判明。
バリバリのオープンカーである。
そう。オープンカーやスポーツカーなどイキった車体からは、イキった音楽が流れているのが相場である。
オープンカーだというのに、クラシック。そのギャップがベルリンらしさなのかもしれない。
魚がない
1週間ほど色んなスーパーを巡ったが、見ていないものがあることに気づいた。鮮魚だ。ベルリンに2年住んでいるというクラスメイトのリディアに聞くと、
「えっと。魚はないことはないんだけどね・・・中心地から結構離れたところにあるかも」
何とも曖昧な回答である。
鮮魚というありふれた食材は、少なくともベルリンではほぼ幻の食材と化しているらしい。ドイツで魚と言えば、通常は缶詰のニシンやサーモン。よくて、冷凍のサーモンやタコ、イカぐらいである。ドイツの北は海に面しているので、魚が取れなくもないと思うのだが・・・やはり伝統的に魚を食べる習慣がないから、スーパーでは扱いが少ないのだろうか。
巨大なスーパーで発見した”魚”売り場。数が少ない・・・
同じスーパーの肉コーナー。ソーセージ&サラミだけでこの広さ。この差は一体・・・
後日、ドイツ人の友人に聞いたら、「俺も魚好きなんだけど、ドイツではマジで魚がないんだよな〜」という。いや、ドイツだって海に面してるじゃん?というと、あそこは海域が狭い上に、デンマークとかいろんな国に面してるから、取れる魚が少ないのっ!デンマークやスウェーデンは、人口が少ないけど、ドイツはEUで一番人口が多い国。だから十分な魚が取れないんじゃっ!と論争になった。
酒の種類が多すぎる
24時間いつでもどこでも酒が飲める国、日本ですらこんな種類は見たことがない。というぐらい、スーパーで売っている酒の種類がとにかく多い。ビールはもちろんのこと、イタリアやスペイン、フランスなどからワインなどもドカドカ入ってきている。さすがEU圏である。
さらに冬になると、ウィンタービールや冬ワインなど冬季限定も加わる。アルコール飲料ってこんなに種類があるんだ・・・もはやアルコール博物館と化している。
色んなスーパーを回っているが、その度にビールの顔ぶれも異なる。ほとんど被っていないのが恐ろしいぐらいだ。というわけで、スーパーに行っては見たこともないアルコールをせっせと買い込む日々である。そもそもパッケージがおしゃれなので、飲まなくてもとりあえずインテリアとして飾っている。