私が移住し始めた7年前と比べると、ドバイは移住先としてほんの少し認知度が上がってきているように思う。当時はドバイ=金持ちの国、中東やばくね?みたいなイメージしかなかった。
けれども、有名投資家が家族で移住したり、有名YouTuberの動画で取り上げられたりしたこともあってか、ドバイは意外といいとこなのでは?と気づき始めている人が出ているらしい。
というわけで、ここでは淡々とドバイ移住のポイントについて語ってみたい。ドバイにやってくる人はすでに海外移住経験がある人も多いので、日本だけでなく他の国と比べてどうなのか、という点を踏まえるようにした。
<生活>
高度なインフラ
ドバイのインフラは先進国並みである。ここ最近で成長してきた都市なので、日本に比べればおおよそすべての建物が新しい。歴史がない国と揶揄されることもあるが、その分、最新のシステムやデジタル化など、新しいものを積極的に導入しようという姿勢がある。よってシステム面では、日本よりもずっと発展していることもある。
水は硬水だが、UAEは世界でも稀有な水道水が飲める国でもある。停電や断水といった心配もない。生活において、不便を感じることはまずないだろう。
安全な環境
下手すると日本よりも安全かもしれない。カバンで席取りをしている人もよく見かける。日本では一般的な光景だが、海外の常識では「どうぞ、カバンとってください」といっているようなもんだからだ。
ドバイ人口の大半は、海外からの労働者。ドバイで犯罪を犯す=強制送還=人生詰むという公式になっているので、わざわざ人生を棒に振ってまで、犯罪を犯そうという人はあまりいない。
またほとんど自然災害がないのも特徴。地震がないせいか、町には高層ビルがわんさかと建っている。
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余裕のある暮らし
高度に発展した都市でありながら、ドバイ人口はたったの300万人程度。東京やロンドンのようにあくせくしていないし、どこへ行っても空いている。レストランに並ぶとか、美容院を1ヶ月前から予約なんてことはまずない。
メトロでは、常に女性専用車両があるのも嬉しいポイント。料金を多めに払えば、ゴールドシートと呼ばれるVIP車両で快適に移動することもできる。
妊婦や子連れに優しい
妊婦や子連れには、みなが優しい。妊婦が電車に乗ってくると、「こっち空いてるよお!」と譲り合い合戦が始まる。子連れファミリーには、その辺の人がニコニコと話しかけているのを見かける。
男性でも育児休暇を取るし、産休や子どもの体調不良で早退、欠勤しても、みな当たり前のように受け止め、何も言わない。何か言おうもんなら、「この人やばあ」と思われるだけである。深夜まで残業しようもんなら、おかしい人とみなされ、社内の珍事件として扱われる。みなが各々のペースで自然に働いている。日本社会がもがいて手に入れたい社会が、すでに実現した社会とも言えるだろう。そうした意味では気楽だ。
英語が通じる
もはやアラビア語が公用語ということが忘れられているのでは?と思うぐらい、ドバイは英語ファーストな国である。人口の比率でいえば、アラビア語を話す人の方が少ない。
イギリス、インド、パキスタン、フィリピンなど、英語ネイティブの国も含め、いろんな英語が飛び交う。人によってはかなり早口に話したり、ネイティブでも訛りが強いケースがあったりするので、いろんな英語に触れることが可能。世界の人の英語力の高さにビビることもある。
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天候に左右されない
ドバイの気候は、年間を通じて気温は25度~35度と一定している上に、乾燥している。これにより、天候に関するお悩みとはほとんどサラバできる。
梅雨のジメジメ感、夏の湿度、花粉、虫、寒さなど。私はドバイにいる4年間、一度も蚊に刺されたことがないのだが、日本に行くとしょっちゅう刺されるので困っている。ドバイにいると、天気予報を見なくなる。毎日同じ天気だからだ。寒いから、雨だから、外に出たくないということもなくなる。
年間を通して気温が温暖とは言え、東南アジアの気候とは違う。乾燥地帯かつ高度なインフラのせいか、虫を見ることは少ない。そして、室内では寒いぐらいにクーラーが効いているので、長袖や長ズボンぐらいがちょうどいい。
それに、宗教的にもTシャツや短パンで出歩く人はあまりいない。というわけで、冬服を着ることはないが、そこそこの服のバラエティも楽しむことができる。
夏は地獄
ドバイの天気は冬季と夏季に別れている。冬季と言っても、雪が降るような寒さではなく、朝晩がややひんやりするといったぐらい。言い換えれば、人間が快適に過ごせる時期と言えるだろう。
対して5月から10月の夏季は、最高気温が50度近くになることもある。外に出るだけで、命の危険にさらされるような暑さが待っている。室内ではクーラーが効いているので、基本的に家に引きこもったり、室内で過ごすことが多くなる。人によっては、快適なヨーロッパに逃避旅行に出かける人もいる。
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車社会
ドバイで移動するなら車が必須となる。ガソリン価格も安いので、車に乗る人には嬉しいポイント。車を持たない人は少数派である。けれどもメトロやウーバーなども使えるので、車がなくとも生活をしていくことは可能。
町全体が車フレンドリーな都市なので、町歩きを楽しんだりするスペースはほとんどない。
人工的な都市
ドバイは、数年前は砂漠だった場所に、高層ビルをバンバン建てて作られた近未来都市である。高層ビルのコンクリにも、大量の砂が使われているので、砂の都市といっても過言ではない。
人工的に作り上げた都市なので、そこに自然はない。道端に芝生や綺麗な花が咲いていても、森や林のような緑あふれる自然はない。高層ビルに囲まれた生活に、違和感を感じることもある。
ドバイに長らく住んでいると、自然欠乏症になる。と言うわけで、ドバイ住民は自然豊かな近くのスリランカやジョージアへ息抜き旅行する人もしばしばだ。
日本食材も手に入る
東南アジアほど豊富ではないが、必要最低限の日本食材は手に入る。DEANS FUJIYAやグルメ屋といった日本スーパーが数件あり、お菓子や生鮮食品、乾麺、冷凍食品などが手に入る。一般的なスーパーでも、スペースは小さいが日本や韓国食材コーナーがある。
日本食レストランも、最近では増えている。それまでは高級ホテルに入っているレストランやイギリス発の回転寿司チェーンYo! Suhsiぐらいだったが、日本人オーナーによる日本風居酒屋レストランなども現れている。
ドバイにいる邦人は、3,000人程度なので、それほど日本人に特化したレストランは少ないが、それでも困らない程度に日本食は身近に食べることができる。
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<物価>
富裕層向けの都市というイメージがあるせいか、物価も高いと思われがち。確かに住居費や外食費は日本より高いが、実は日本より安いものもある。
日本よりも高くつくもの
・住居費
・外食費
・日本食&日本食材
・お酒
・サービス(マッサージ、美容院など)
・観光(ホテル代、ツアー費、入場料など)
日本よりも安く済むもの
・移動費(メトロ、タクシー)
・日用品
・食品
人付き合いをする社交的な人であれば、かなり出費がつく。しかし、私のような引きこもり&自炊人間だと、家賃以外はそれほどお金がかからないのである。
住居費は、場所にもよるがタワマンの1ベッドルームで月17万円〜ほど。上はキリがない。東南アジアのように、安くてハイクオリティな生活はここにはない。しかし、お金を払うほど、良いサービスが受けられるのも事実なので、富裕層フレンドリーな都市でもある。
高いとは思いつつも、東京の家よりは圧倒的に広いし、ドバイの美しい夜景が見えたり、5つ星ホテルのレジデンスに住めるなど、サービス、クオリティ共に高い。それに新興都市ドバイの建物は、新築物件が多いのも特徴。
途上国やヨーロッパで同じような暮らしをしようと思ったら、それ以上かかるだろう。安全で快適、インフラの整った環境を月17万円で買えるなら安いものじゃないだろうか。
また給与水準も日本より高いので、家賃が高いといっても、手元に残るお金は、コスパの良い東南アジアで働くよりも一般的には高くなる。
<文化>
多国籍な文化
ドバイ政府の情報によれば、200カ国以上の人々がドバイに住んでいると言う。私が働いていた職場は、40カ国ぐらいの人間が働いていたので、あながち間違いではないだろう。もはや国連である。
アメリカ、ヨーロッパ、アジア主要国はもちろん、ブラジル、南アフリカ、ロシア、コンゴ、シリア、カザフスタンなどなかなお目にかからない国の人々とも簡単に会えたりする。普通に考えれば、現地語ができないと、こうした人々とはコミュニケーションが難しいのだが、ドバイで働いているので、皆英語でコミュニケーションができるのも嬉しいポイント。
まるでイッツア・スモール・ワールドの世界である。おそらく、こうした経験はドバイ特有のものなんじゃないかと思う。個人的には、ドバイに住んでよかったなあと思うイチオシのポイントだ。
ただ多くの移住者は、数年でドバイを離れるケースが多いため、長期的な関係を築くのは難しいと言う点もある。
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現地人との関わりがない
逆に言うと、現地人であるUAE人との関わりを持つことが難しい。現地人は人口の10%しかいないし、普通に生活しているとまず関わることがない。ショップ店員は、だいたいフィリピン人やインド人だし、タクシー運ちゃんも南アジア、アフリカ系である。
この国で、UAE人というのは特権階級の人々なのである。民間企業で働くUAE人はほぼいない。私は4年半ほど住んでいたが、現地人とまともに話したのは10人もいないぐらいである。周りの在住者に聞いても、UAE人の知人がいるのは、長年住んでいる人ぐらいである。
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格差が激しい
ドバイにやってきて多くの人が驚くのが、圧倒的な格差である。高級車を乗り回し、豪邸に住むUAE人やヨーロッパ人がいる一方で、7~10人ほどが住むタコ部屋に住み、猛暑の中でも道路作業などをする南アジアの労働者たちがいる。
この国での待遇は、パスポートによって決まる。ヒエラルキーの頂点にいるのが、UAE人。そして次にヨーロッパ人、アラブ人である。日本や韓国、中国などもここに含まれる。ここの層は主にホワイトカラー職についている。
次いで、飲食店やショップの接客業、メイドとして働くフィリピン人。最下層に、タクシー運転手や建設現場などで働く、南アジア、アフリカの人々がいる。彼らは人権侵害すれすれの過酷な生活を強いられるケースもある。
ドバイ人口の半数近くを占めるのは、インド、パキスタンである。ここは同じ国のパスポートを持っていても、運命はまちまちである。ナンバープレートに1億円をかけるとんでもない富裕層やビジネスで成功する経営者、ホワイトカラー職につく人がいる一方で、月数万円の稼ぎで建設現場などで働く人もいる。
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イスラーム圏
UAEは”一応”イスラームの国である。一応としたのは、ドバイは観光客集客や経済のために、イスラームの規律をかなりゆるくしているからである。お酒も飲めるし、パリピでにぎわうバーやクラブもある。グラスビール1杯で1,500円なので、それなりにお金はかかる。
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エンタメが少ない
日本と比べると地域密着型のイベントやコンサート、娯楽施設は圧倒的に少ない。カラオケ、ボーリング、クラブなどは数えるほど。またイスラーム圏なので、基本的には未婚の男女がいちゃつく場所が少ない。どちらかと言うとファミリー向けのアクティビティの方が充実している。
旅行に行きやすい
中東のハブということもあって、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなどあらゆる場所へ直行便で行けてしまうのもポイント。ヨーロッパへは5時間程度でいけるし、航空券も日本から行くよりは安く住む。旅行好きには嬉しいポイント。
表現の自由度が低い
UAEは君主制の国であり、王族批判や政府批判などは、拘留、逮捕につながることもある。メディアや政府発表の信頼性はあまり高くない。近年ではドバイ首長の娘が、ドバイから脱獄しようとしたり、ドバイ首長の妻がイギリスへ逃亡するといった動きもある。
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<仕事>
無税
無税、これに勝るパワーワードはない。税金だらけの日本からすれば、信じがたい天国である。細かく言えば、消費税に当たるVATが2018年から導入されているが、個人の所得にかかる税金はまだない。
どういうことか。
額面の金額がそのまま懐に入るのである。日本で働いている人は、まず自分の給与明細を見て欲しい。決められた給与に対し、年金、健康保険、住民税、そのほか諸々の税金が引かれて、”手取り金額”になっているはずだ。
つまり日本で取られていた税金分も、すべて自分がもらえるお金となる。日本の平均年収が500万だとして、日本であれば実際にもらえる額は、400万円程度。しかし、ドバイであれば丸ごと500万円が手に入る。これを5年も続ければ、500万円の差がつく。
日本にいるか、ドバイにいるか。同じ労働をしても、1年分の給与差が発生するのである。
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給与水準が高い
無税な上に給与も高いとなれば、もはや無敵である。ドバイで働く外国人の平均年収は750万円。もちろん年齢や職種によるが、先進国の給与水準と比べても1.5~2倍になるイメージだ。
ドバイで働く外国人は30代、40代が圧倒的に多い。つまり、若い年齢でも日本の平均年収を圧倒的に越えることができる。
え?ドバイの平均年収って1,000万円とか2,000万じゃないの?
それは、現地のUAE人の給料平均である。人口の10%程度しかいない現地人は、あらゆる面で待遇されている。彼らはだいたい公務員であり、民間企業ほどあくせく働かずとも、給料は民間企業の倍以上もらえる。そして休みも多い。
彼らは特権階級の人々なのである。彼らの暮らしと自分の暮らしを比べると不幸になる。けれども、ドバイではあらゆる国の人々が自国よりも、グレードアップした生活を送っている。とりあえずみんながWin-Winな暮らしをしているので、余計なやっかみや嫉妬には、ふたをしておくべし。
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まとめ
まとめると、生活水準、お金の面では多くのメリットがあるが、文化方面でめっぽう弱いのがドバイである。ただこうした文化面は、旅行などで補うこともできる。
ドバイ移住で、多くのメリットを享受できるのは、ファミリー層や働き盛りの20~40代だろう。物価や家賃が高いので、支出を最小限にしたいリタイア世代にはあまり向かないかもしれない。
ドバイというと、無税や給料が高いという点ばかりが、先行しがちだが、あくせくした日本よりも、心の余裕を持って生活できるし、多くの国の人と接することで、”海外に住んでいる感”が存分に味わえる。
ただ、世界からフツーに英語ができる人々が集まっているので、そこそこ英語ができないと楽しく暮らすには、ハードルが高い国でもある。
先に述べたとおり、ドバイ人口の9割は、外国人である。よって、周りの誰もが知らない国にやってきた苦労を抱えている。同じ境遇の人間がいるということは、時には救いになるし、助けられる。「ドバイってさあ〜」みたいな話もできる。
数年でドバイを離れる人が大半だが、それでも「やっぱりドバイがいい!!」という出戻り組も多い。私もドバイを離れて数年経つが、時々そんなことを思う。