日本は素晴らしい国だ!アラブ人が親日派である3つの理由

今まで「ヒロシマ」「アニメ」といった単体ワードで日本を語るのが、親日派の基準を満たす一定のレベルだと思っていた。

しかし、そんな今までの私の親日派の定義を覆しつつあるのが、パレスチナ人のヒシャームである。

彼はいわゆるパレスチナ難民というやつで、祖父母はパレスチナで生まれたがその後国を追われ、シリアへ移住。

シリアで生まれたが、ISの勢力拡大とそれに伴う対ISへのアメリカの空爆によりシリアにいることが困難になったため、ドバイへ逃れてきたという。

いかにも激動の時代とともに生きている感がある人間である。

玄人親日派と出会った衝撃

中東の内戦や紛争とは無縁の日本人からすると、なんとまあ大変な経歴の持ち主だと思ってしまうが、本人は意外とひょうひょうとしている。

難民感や悲壮感はない。

口から生まれたような人間でまあよくしゃべる。聞いてもいないのに、口を開けば家族の話になり、なぜかいつもシリアやパレスチナなどの政治の話になるのがオチである。

ヒシャームは自称日本好きというが、世界によくいるアニメ・漫画好きの素人の日本好きとは一線を画している。奴がただならぬ日本好きだと気づいたのが、彼のお気に入りアニメである。

聞いてもいないのに、好きなアニメの話をしだす。ヒシャームのお気に入りはちびまる子ちゃんで、特に「まるちゃんの町は大洪水」というエピソードを名指しで指名してくるほどだ。

それを聞いた瞬間、こいつはただならぬ日本好き、いや玄人親日派だと体に電撃が走ったのである。

しかし残念なのは、アラビア語のなまりのせいなのか、「まる子」と言っているのに、どうしても「モロッコ」と聞こえてしまうのである。

それを皮切りにこの玄人親日派は、「おまえは本当に日本人か?」というテスト問題を繰り出してくる。

「現在の天皇制はどうなっているのか?日本における天皇の位置づけはなんなのだ?」

「日本は資本主義か?」

「神風特攻隊についての貴様の意見を述べよ」

といった日本人との会話でのぼる確率1%以下の問題が毎回出題されるのである。これはセンター試験以上のレベルである。

彼の周りに日本人は皆無。であるからここは日本代表として、中立的かつ博識ある答えを見出さなければならない。このプレッシャーは並々ならぬもので、決して島国では感じることがない種のものである。

前置きは長くなったが、ある日の討論テーマは「なぜアラブ人は日本に好意を寄せるのか」というテーマである。それについて、明確な答えをアラブ人本人より得ることができた。

1.アニメで日本人の道徳の高さを知る

アラビア語化された日本のアニメは60タイトル以上にものぼり、どうやら幼い頃からこうした日本のアニメを見て日本を身近に感じるようだ。

特にアラビア語化されているアニメは現代アニメというよりも、「赤ちゃんと僕」、「家なき子」、「一休さん」といった日本の道徳や家族愛をテーマにしたものが多い。

それが日本人の道徳や規律を守る姿勢に感心することが日本へ好意を抱くことにつながっているようだ。

2.「ヒロシマ」からのサクセスストーリー

アラブ人やアフリカ人の「ヒロシマ」への反応はただならぬものがある。

肝心の本国の人間でさえ「ヒロシマ」など忘れ去っているというのに、アラブ人たちは「ヒロシマ」と聞くと過剰に反応する。

彼らにとって「ヒロシマ」の原爆は相当なインパクトだったようで、あの原爆で甚大な被害を受けながらも見事に復興を果たした日本は尊敬するに値すると考えているらしい。

そのリスペクト度合いは、日本人が考えている以上に大きなものである。

サウジアラビアの日本を紹介する人気番組、「ハワーテル」のオープニングでも、ヒロシマの原爆映像が使われているほどである。

考えてみれば日本人としてはごく自然かつ当たり前のことだと思ってきたが、今のシリアやイラクの状況から復興を果たし日本のような状態になれるのか、と考えるといかに日本の復興が奇跡なのかということがわかる。

日本から来たというと必ず「日本のどこだ?」という相手は明確化を求める。

最近わかったのは、相手がアラブ人やアフリカ人だと、ここで知名度の高い「東京」と答えるよりも、「広島」だと言った方が反応がよいということである。

特に「広島出身だ」と聞いた時のソマリ人のおっさんのリアクションを、今でも忘れることができない。

あの驚愕した表情。

株価暴落に衝撃を受けるウォール・ストリートのアメリカ人リーマンみたいなおおげさなリアクション。

ちなみに欧米人やアジア人に対しては、「東京から来た」という。すると彼らは妙に納得したような表情をする。

おまえは相手の反応のために出身地を偽るのか?と思われるかもしれないが、広島で生まれ、東京で人生の過半数を過ごした人間としては双方とも事実である。

3.政治的なしがらみがない

日本が諸手をあげて迎え入れる欧米であっても、アラブ人にとっては因縁深い相手である。

アメリカはもっての他であるし、欧米の国もなんらかの形で中東政治には絡んでいる。

その点日本と中東のつながりといえば、石油販売のお得意さんであるぐらいで、歴史的にみても中東諸国に積極的に絡んでいない。

その点がアラブ人にとっては高ポイントなようで、特に政治的に恨みや憎しみを抱く対象となり得ないのである。

諸手をあげて日本は世界から尊敬されている、好かれているという論調には賛成し難い。

けれども懐柔的にもならず、懐疑的にもならず、中立的に世界と日本を比べると、やはり日本が尊敬される理由にも納得がいくのである。

アラブの片思い

ちなみに「アラブ人が思う日本」について尋ねると、必ず「日本はアラブ諸国についてどう思う?」とセットで聞かれる。

毎回答えに窮する。

正直に言えば、「日本人はアラブ諸国にたいして、興味がない」だとか、「メディアの影響でやべえ危険地帯だと思っている」、というのが答えになってしまう。

だから「まー、メディアの影響もいろいろありましてねえ」などといって適当にごまかすのである。

その点は非常に寂しい。

アラブ人はあんなにも日本に好意を抱いているのに、一方の日本はアラブに対して冷めている。

だからこそアラブ文化のよさを伝えて、紛争やテロだけじゃない中東諸国を理解してもらう必要があるのだと強く感じる。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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