夏の暑さをふっとばす!珍アイスから黄金アイスまで。夏に食べたいアイスクリーム一挙紹介

夏は地獄だ。

地球温暖化の時代、それはどの国の住民であっても同じだろう。

私が住んでいるアラビア半島は、日中の気温が40度越えをすることも珍しくない。朝8時の段階で、気温はすでに35度近くになる。

この地をよく知る人は、「人類が生きる上でもっとも過酷な場所」だとか、シンプルに「地獄」などとのたまう。

そう、私は今地獄に生きているのだ。

しかし、地獄の住民は「ここは地獄だねえ」と軽々しく言わない。みな、地獄に住まなければいけない事情を抱えているからだ。

ゆえに人々は、日傘をさしたり、布を頭からかぶって、無駄な地獄逃れをする。

我々は無力だ。

しかし、そんな無力な我々を微力ながら、支えてくれるものがある。

それがアイスクリームだ。

日中40度の暑さに、冷えた食べ物はよく効く。そんなわけで、ドバイで食べられるアイスクリーム、ならびに類似アイテムをご紹介しよう。

夏を味わうイランの麺アイス「ファールーデ」

麺を細く切ったような形をしているのが、このアイスの特徴。「麺」という見た目からして、良からぬ味を想像してしまいそうになるが、ご心配なく。

「ファールーデ」は、イランのシーラーズ発祥の料理。紀元前5世紀前に生まれたという。白い麺の正体は、コーンスターチ。それに、アーモンドやピスタチオを加えた牛乳をかけて冷やし、できたもの。

そのまま食べてもいいが、レモンジュースやローズ・ウォーターをかけるとなおよし。

酸味のあるさっぱりとしたレモンジュースと、深みがあるローズ・ウォーターが、味をより多彩にしてくれる。

シンプルな見た目だが、口の中では涼しさが通り抜けていく。

ファールーデを食べるなら
おおよそのイラン料理屋なら提供している。私が食べたのは、UAE国内でも特に人気がある「Bahar」というイランレストラン。ドバイ・マリーナ地区にある、ハイエンドなイラン料理屋。

世界一高いスパイスを使った「サフラン・アイス」

イランといえばサフランの産地として有名。日本人からすれば、「サフラン?ああ、パエリアに入っているあの赤いやつでしょ」程度の認識だろう。

サフランは一般の人々の間では相当みくびられている。しかし、実際には世界一高いスパイスとも呼ばれる高級品なのである。

掃除清掃員かと思ったら、実は社長だった・・・そんなドラマのありがちなワンシーンを思い浮かべていただきたい。

そんなイランが誇るサフランを使ったのがこちらのサフラン・アイス。高級スパイスのサフランを使っているが、等級が低いサフランを使っているので、アイスの値段も良心的。

サフランアイスを食べるなら
デイラ地区にある「Sadaf Iranian Sweets」。イランスイーツや、ドライフルーツ、サフランなどイラングッズが一通りそろっており、お土産ショップとしても使える。

大人のための練乳アイス「マトカ・クルフィ」

牛乳を煮詰めて、ピスタチオやカルダモン、ローズウォータなどで味付けしたアイス。発祥はインド。

ドバイでは、インド人が人口の多くを占める。よって、インド人向けのインド系のレストランやショップが充実しているのだ。

棒状になった「クルフィ」もある一方、小さな素焼きの入れ物に入ったものは「マトカ・クルフィ」と呼ばれている。

様々なスパイスが入っているためか、口当たりもよく、しつこくない上品な甘さが特徴だ。濃厚で固く仕上がっているために、西洋のアイスよりも溶けにくいとも言われている。

クルフィを食べるなら
ドバイ各地に店舗がある「Bikanervala Sheikh Khalifa」。カラマ地区にあるクルフィ専門店の「Kulfi House」も人気。

見た目がベビースターラーメン「クナファ・サンデー」

「クナファ」というアラブスイーツの定番のお菓子と、アイスクリームをコラボさせた一品。

見た目はベビースターラーメンか、チキンラーメンがふりかけられているようにしか見えないが、味はまったく別物。


通常の「クナファ」は、こんな感じ。小麦粉で作った麺状の生地で、チーズを挟んだもの。食感はパリパリっとしている。この生地自体を「クナファ」と呼ぶこともある。

モッツアレアチーズのような食感と、パリパリっといい具合に焼かれた生地の食感がなんともいえない。

「クナファ・サンデー」を食べるなら
国内各地にあるアイスチェーン店「London Diary」。おすすめは、ファイナンシャル・センター駅近くの「London Diary Bistro」。アイスだけでなく、ケーキや食事などもそろっている。

トルコじゃないけどのび〜るアイス「ブーザ」

のびるアイスといえば、トルコアイスが有名。けれども、シリア発祥の「ブーザ」と呼ばれるアイスも、これまた伸びるのである。

作り方は、非常に独特。筒状の容器に入れた生地を、太い棒で、「えいや!えいや!」と叩いて粘り気を出すのである。餅をつくプロセスによく似ている。


ブーザを長い棍棒でつくおじさん

アイスがのびる理由は、サレップと呼ばれる粘り気を出す粉を混ぜているため。

こんもりと器に入ったピスタチオに、アイスを押し付け、完成である。涼しげがある味だが、我々が慣れ親しむアイスとは一線を画している。

ブーザを食べるなら
ドバイでブーザをその場で食べられるのは、ドバイモールの地下にある「アラベスク」という店のみ。

ドバイモール近くのスーク・アル・バハルにも「ブーザ」というアイスクリーム屋があるが、こちらでは「ブーザ」は提供していない。ただ、ハルワやサフラン味といった中東独特のお味のアイスが楽しめる。

富裕層向け。1個約9万円の「ザ・ブラック・ダイヤモンド」

やたらとドバイは規格外のものを作りたがる。庶民の発想でいえば、そんな価格設定で誰が買うねん、と思うのだが、世の中には高いからこそお金を払う、というポリシーの富裕層がいるのだ。

国内で一番値段が高いアイスもその1つである。その名は「ザ・ブラック・ダイアモンド」。お値段は1個約9万円。

別にダイアモンドが入っているわけではない。とにかく素材にこだわった結果こうなったのだ。

マダガスカル産のバニラビーンズに、高級スパイスであるイランのサフランに、イタリアのブラック・トリュフ。23カラットの食べられる金箔をちらして、出来上がりである。

とりあえず世界中の高級食材をアイスに詰め込んだらしい。

さすがにアイスクリームに9万円出すのは、ちょっと・・・ということで、富裕層の方はぜひお試しあれ。といっても、富裕層はこんなブログを読まないだろうが。

ザ・ブラック・ダイアモンドを食べるなら
高級住宅街のジュメイラ地区にある「Scoopi Cafe」。ここにしかない。

庶民価格で食べられる!24純金の金箔アイス

金のアイスを食べてみたいけど、9万円は無理!という方に朗報。庶民向けの金のアイスもドバイには存在する。

1つ1,500円とずいぶんとお安く食べられる。しかも、金箔の量は「ザ・ブラック・ダイヤモンド」より多い。

金箔自体は味があるわけではない。見た目の問題である。「金箔を食べているんだぞお」という気分に浸ることで、一瞬だけ富裕層気分を味わえるのが、このアイスの特徴である。

ピスタチオ味の金箔アイス。5つ星ホテル内にあるショップということで、味も洗練されている。

同じく金箔を食べられることで有名なのが、アブダビのエミレーツ・パレス。観光客の中には、金箔カプチーノをお目当てにしている人もいる。

が!ここであれば、金箔アイスと金箔カプチーノをダブルで、堪能することが可能。

金箔アイスを食べるなら
ヘルスケア・シティにある「Rolling Corns」というお店。ハイヤット・リージェンシー・ホテル内にある。

知られざる日本の歴史を語るフィリピンの「ハロハロ」

アイスか?と言われれば微妙だが、一応アイスが入っているので、アイス部門と同じくくりにした。

かつてフィリピンに住んでいた日本人移民の甘味処で出されていた、かき氷や、あんみつにヒントを得てできたのだという。

日本人移民といっても、その内実は、貧しい家庭出身の娼婦たちだったらしい。彼女たちは「からゆきさん」とも呼ばれ、19世紀後半に東南アジアに出稼ぎに出た人々である。

今では完全にフィリピンの食べ物になってしまったが、食感や味は、懐かしい日本のそれとひどく似ている。

夏の暑さを吹き飛ばすには十分だが、それと同時に懐かしさや、貧しかった頃の日本を思い出す切なさもセットでついてくる。

ちなみになぜ、ハロハロだけ実物の写真ではないのか。注文したところ、具材は同じだが、見た目がまったく違う商品がでてきたからである。

SNSの写真と本人が違いすぎる、あの現象と同じである。よって、ハロハロの名誉のためにも、美しい写真をのせることにした。

リアル写真が見たい人はこちら。
フィリピン人に大人気!甘いスパゲッティが名物の「ジョリビー」で食べてみた

ハロハロを食べるなら
見た目を気にする人であれば、それなりのレストランに行くべし。フィリピン人は、一様に「ハロハロ」なら「Chowking」をすすめてくる。しかし、フードコートの「Chowking」は要注意だ。味は美味しいのだけれども。

 

たかが、アイスクリームかもしれないが、時にはアイスクリームに救われることもある。気温40度近くの外を徘徊した後の、アイスクリームは格別。

地獄と言われながらも、アイスクリームを食べる時ばかりは至福を感じる。

まあ、アイスクリームがこんなに美味しく感じられるなら、暑くてもいいかな、などとは、決して思わないけれども。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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