自由すぎ!常識をくつがえす海外の寿司。寿司バーガーから寿司タワーまで

海外で有名な日本の食べ物といえば、ラーメン、てんぷらなどがあるが、ダントツ知名度が高いのが「寿司」。

知名度が高いだけでなく、海外でも広く浸透している模様。

ヨーロッパや中東出身の同僚が働いている私の職場でも、「 今日のランチどうする?」「シースーにしよか?」なんていうぐらい、ありふれた食べ物になっているのだ。

ご存知の通り、海外の「シースー」は独自の進化を遂げたものが多い。日本人が「寿司」と聞いてイメージする握り寿司は、少数派だ。

中東のドバイで発見した、新感覚な寿司たちをご紹介。

寿司なのにピリ辛!インパクト大の寿司タワー

日本アニメおたくが、作ったようなコンセプトのレストラン、「マンガスシ」。その名の通り、店内はアニメキャラの壁紙や、誰もが知る有名アニメの漫画やフィギュアがあちこちに飾られている。

メニューもユニークで、「ヤクザ」、「ドラゴンボール」、「アラジン」、「永井豪」、「ヒロシマ」など、とりあえず知っている日本語をとってつけたものが多い。

メニューだけでもワクワクするが、特にビジュアルのインパクトがすごいと話題なのが、「ヴォルケーノ(火山)・スシ」。


表現力が高いヴォルケーノ寿司。赤と黒のとびこがアクセントになっている。

火山というより、紅白歌合戦の小林幸子を思い浮かべてしまうのは私だけだろうか。

何と言っても特徴は色使い。2色のとびこに、オレンジのピリ辛ソース、そして飛び出したきゅうりである。

さらには、寿司を立体的に積み上げることで、シャンパンタワーならぬ寿司タワーになっている。たいがい、ヴィジュアルがすごい食べ物はヴィジュアルだけで終わることが多い。が、幸子寿司は違う。

シャリに天かすをまぜて、サクサクっとした軽やかな食感をだし、中に入っているきゅうりとカニカマとあわせて、寿司というよりサラダを食べているような感覚である。

しかも、ピリ辛ソースのおかげで、わさびいらずである。辛さをだすのはわさび、という固定観念を見事打ち破っている。もちろんソースがふんだんにかかっているので、しょうゆの出番はなし。


お会計はデスノートで。細部までこだわる。

新感覚な寿司がここにはあった。

食べてる途中で我を失う、ブリトー寿司&寿司バーガー

寿司とはそもそも何か。

そんな寿司の概念を問いかけてくるのが、ブリトー寿司と寿司バーガーである。ハンバガーといえば、アメリカ。ブリートは、メキシコの食べ物である。

見た目からしてもはや寿司とは言い難く、完全にハンバーガーやブリトーにのみこまれてしまっている。

使われている食材も注目に値する。両者に使われているのは、「チートス」。チートスとは、チーズ味で、アメリカのスナック菓子である。


寿司バーガー。まぐろ、レタス、ひじきを米でサンドし、その上にチートスを惜しげも無くまぶしている。


寿司ブリトー。アボカド、きゅうり、トマト、たくあんなどを海苔とご飯で巻き、これまたチートスをまぶしている。

バーガーといっても、手でつかむと崩れてしまうので、箸で食べることになる。寿司を食べているのだが、チートスの味が強すぎて、わさびもその味には対抗できない。

そもそもチートスは、食材というよりお菓子である。これはお菓子なのか、料理なのか、寿司なのか。

一体自分は何を食べているのだろう。

いろんなコンセプトが錯綜しすぎて、食べている途中で我を失ってしまった。

形も食材も日本の常識をくつがえす!自由形の寿司たち

寿司バーガーや寿司ブリトーの後では、かすみそうになるが、地味に変わった寿司もある。

思えば日本の寿司はシンプルだ。素材である魚の旨さがあるから、余計なものはいらない。そんなミニマリスト精神を体現したのが、日本の寿司である。

しかし、主役である魚がいない場合どうなるのだろう。

主役の鮮魚が不在。

それが、多くの海外寿司に起こっていることである。

なにせ世界のどこでも、生きのいい魚がとれるわけではないし、日本ほど高い冷凍技術を保つ国も少ない。さらに、生魚を食べる習慣がない人々の方が大半なのだ。

主役不在ともなると、意外な脇役や助役が活躍することになる。

たとえば、四角い形の寿司。形だけならなんてことないが、米にひじきが混ざっている。白い米だけだとつまらんから、アクセントカラーとして、ひじきを投入した模様。


バジルの葉にのった、甘エビのスクエア寿司

黒い海苔を不気味に思う人もいるらしい。そこで、代役として登場したのが、生春巻きの皮。これなら、寿司も怖くない。

春巻きの皮が、ごはんを包むのである。見た目は違っても、ご飯にご飯を巻いていることには、変わりがない。

ヨガとか健康志向が高そうな一派に人気がありそうなのが、ブラック寿司。カルフォルニアロールの一種だが、他の仲間と違うのは、米が黒い点である。


ブラック米カルフォルニア・ロール

ブラック米の中には、きゅうり、アスパラ、人参などが行儀よくおさまっている。米よりも、野菜の比率が高いので、サラダに近い。

寿司に使う米の色は、白だけじゃない。そう言わんばかりに、ブラック米、ブラウン米、白米と米の種類をチョイスすることもできた。

寿司とは何か。

寿司を寿司たらしめる最低条件とは何か。

海外寿司は、そんな哲学的な問いを投げかけてくる。

みんな大好き食べ放題!ビュッフェ形式の寿司ビュッフェ

日本でも寿司食べ放題はあるが、寿司をビュッフェ形式で出すところは、あまりないだろう。なにせ寿司は鮮度が大事なのだ。

日本人は、回転寿しの寿司でさえ「あれは、乾いているから鮮度が落ちてる」などといい、目の前の寿司をスルーし、直接注文するこだわりを見せている。

ビュッフェ形式ともなると、ハケ具合にもよるが30分~1時間以上は放置されるのだ。鮮度を重視する日本人の感覚からすれば、もはやパッサパッサの状態やん?と思うだろう。

しかし、ここドバイで寿司といえば握り寿司よりも、ロール巻きが一般的。魚だけでなく、野菜をつかったネタも多いので、人々はそこまで鮮度を気にしている様子はない。

一見すると、日本人があまり寄りつかなそうなネタが多いものの、店内はブッフェ目当ての客でにぎわっていた。


ビュッフェ形式の寿司

ヨーロッパ系、ロシア、アラブ系と客層もバラバラである。ネタの売れ行き具合をみていると、特に人気なのがロール系。一方で、日本では定番の握り寿司は、ほとんど売れていない状態だった。

おそらく多くの国では、生魚を食べる文化がないからだろう。私だって日本に生まれていなかったら、生魚がボンッと乗った謎の物体を、進んで食べてみようとは思わない。

どうやら日本人が好む寿司と、海外で好まれる寿司というのは、タイプが違うらしい。

1 貫1,200円!本格的なフォアグラのせ大トロ

よもやまさか、日本人が大好きな大トロを、中東で食べることができるとは、ほとんどの人は思っていないだろう。

しかし、ドバイでも本格的な大トロを食べることができるのだ。

値段は、中とろが60ディラハム(約1,200円)、大トロが2貫で70ディラハム(約2,100円)。さらに大トロに限っては、プラス10ディラハム(約300円)でフォラグラをのせることが可能。

さらにこの大トロの驚くべきポイントは、寿司なのにあったかいのである。大トロとフォアグラをバナーで炙りあげ、すだちをまぶした素敵な一品。


フォアグラのせ大トロ。小さく刻まれたすだちが、上品な香りを引き立てる

大トロをうやうやしく運んできた店員は、

「お皿が熱いので、直に触らないようきをつけてくださいね〜」

と注意を付け加えた。ファミレスの鉄板焼きを頼んだ時にしか聞かない、あのセリフである。

えっ?寿司なのに熱いん?

一貫まるごと口の中へ入れると、それはそれはもう・・・回転寿司の金の皿をはるか超えて、銀座の寿司(食べたことないけど)を食べているような感覚に陥った。

これはおふとんや・・・

口の中でとろけるフォアグラと大トロ。まるで舌が高級羽毛ぶとんにつつまれたような、そんな食感なのである。

さらに驚くべきはこの寿司、オールインワン寿司なのである。通常日本の寿司はしょうゆをつける。しかし、この大トロには、すでにオリジナルのたれが染み込んでおり、しょうゆいらずの味付けとなっている。

ここまでくると、そもそもなぜ寿司にしょうゆをつけるのか、という当たり前の概念に疑問を抱く。考えてみれば、しょうゆをつけるのは、2度手間じゃないか。すでに、味付けしていたほうがいいんじゃないかと。

日本でも食べたことがないようなウマ寿司、ちゃんと海外にもあるじゃないか。

海外寿司、進化のポイント

以上を踏まえて、日本と海外の寿司の違いポイントをまとめてみるとこんな感じだ。

・寿司といえば、握り寿司よりもロール巻き
・ベジタリアン向けのベジ寿司も一般的
・寿司を食べる上で、しょうゆは必ずしも必須ではない
・シャリを巻くのは、海苔のみにあらず。きゅうり、アボカドなど慣れ親しんだ食材を利用
・ピリ辛な寿司もアリ
・とにかくカラフル
・生魚がメインではないので、鮮度はそこまで重要ではない

海外の寿司を食べている時、なんだか不思議な気持ちになる。

とにかく新鮮なのだ。寿司なのにあったかかったり、辛かったり、具が飛び出てたり。その度に、今までの寿司に対する概念が壊されて爽快だ。

響きは「寿司」だけれども、未知の食べ物を食べているような気がするのだ。

そこにはわれわれが知る「寿司」はいなくて、同じ響きを持った新しい何かが存在している。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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