元在住者の告白。メディアが伝えないドバイのやばすぎる闇5選

ドバイを離れた今だからこそ書けることがある。本当ならばドバイ在住中にドバイの闇を告発しようと思ったが、逮捕や国外追放を恐れて書くことができなかった。

はん?あのキラキラなリゾート地ドバイなのに何言っちゃってんの?と読者は首をかしげるかもしれない。

まばゆいゴージャスなイメージがあるがゆえに、その闇は見えない。しかも、その闇は深い。ドバイ生活で目の当たりにした、ドバイの闇をお伝えしていく。

キラキラリゾートに隠れた闇

ドバイに限らず、世界の国々にはそれなりの闇があると思う。中南米の麻薬マフィアなどに比べれば、まだドバイの闇なんて可愛いものである。

ところが、どうもドバイという場所は、富裕層の街だとか、ゴージャスなリゾート都市☆というイメージばかり押し出されている。

これはすべて、ドバイのイメージ戦略によるものである。なにせ数十年前は、何もないしけた砂漠の町を、世界の富裕層が集まるゴージャス都市に変貌させ、世界中にゴージャス都市ドバイのイメージを定着させたのだ。このブランド戦略には、電通もびっくりである。

ところがこうしたイメージとは裏腹なことも行われている。ドバイ住民からすれば、「観光客にはあんなにいい顔しているのに・・・・」というギャップである。

そう、意外と表と裏の顔の差が激しいのがドバイだったりもする。

ドバイ王女が国外逃亡

ドバイの総司令官に当たるのが、自炊殿下ことムハンマド首長である。東京都でいう小池都知事みたいなものである。

しかし、都知事とは違い、ドバイの総司令官はありとあらゆる方面において、権力を握っている。

数年前、YouTubeに不可解な動画が投稿された。

投稿主は、ドバイ総司令官の娘を名乗るラティーファという女性であった。ドバイの王女である。動画は王女による父ムハンマドの告発だった。

「この動画がアップされているとすれば、私は死んでいるか、私の身に何かあった時でしょう」

不吉な一言から動画は始まる。

王女によれば、自分の姉は言うことを聞かないから、拷問された挙句、薬漬けにされて監禁されただとか、父は自分の権力を維持するためなら何でもやる、などとのたまうのである。

ひえっ!?

恐ろしすぎる。と言うか、この動画は本当なのだろうか。もしかしたら、王女が錯乱しているだけなのでは・・・?と思うぐらい、奇妙な動画だった。

ところがその数ヶ月後、事件が起こる。ラティーファ王女が、国外への逃亡を図ろうとしたのだ。逃亡作戦は、王女の知人とともに、夜中にドバイから船に乗ってインドへ渡ると言うものだった。

ミッションインポッシブルのような世界観である。

ところが、作戦は失敗に終わる。インドへ上陸する前に船が見つかり、ラティーファ王女はドバイへ送還させられるのだ。この一連の事件をドキュメンタリーにしたのがBBCの「Escape from Dubai(ドバイからの逃亡)」である。

王女に続き妻も亡命

ほどなくして、今度はドバイ総司令官の妻であるハヤ妃がイギリスへ亡命する。日本で言えば、昭恵夫人が亡命するようなもんである。

そんなことってある・・・?

娘の逃亡といい、妻の亡命といい。総司令官はどれだけ嫌われているのだろうか。ドバイで権力を握る総司令官のやばさが伝わってくる。

ちなみにこのハヤ妃は、イギリスのオックスフォード大学卒業で、馬術のヨルダン代表選手としてオリンピックにも出場。国連大使なども勤めたスーパーウーマンである。

ハヤ妃は現在もイギリスにいるが、ラティーファ王女はドバイに連れ戻され、その後ちゃんと「公務をおこなってますよ〜」的な写真が報じられた。しかし、その表情はどこか心ここにあらず、といった感じである。薬でも投与されたのか、はたまた拷問でも受けたのだろうか、と勘ぐってしまう。

「ドバイは素晴らしい場所やねん。きてみんさい」などと世界に発信しているドバイだが、一方で主要王族たちが次々と亡命をしようとしている。ドバイの中枢では何やら、恐ろしいことが行われているらしい。

言論の自由がねい

UAEでは言論の自由がかなり制限されている。ツイッターやフェイスブックなど一通りのSNSは使えるが、王族や国の悪口などを書くと、逮捕されるか国外追放になる。またドバイのイメージをぶっ壊すような言動をしても同じである。

私が「ドバイの売春問題について調べてみたいな〜」などと軽くいうと、ルームメイトのレバノン人が、「やめた方がいいよ。知り合いで同じようなことやった人が、国外追放になったから」というのである。

またドバイ市民の電話は盗聴されているだとか、街中には日本でいう特高警察みたいなものがはびこっているという噂がある。実際に、とある新聞社で働いていた日本人は、「電話は全部盗聴されてるから〜」などと言っていた。

政治的にまずい話や特定のワード(テロとか)が出てきた場合に、知らない人間から問いただされたという話も聞く。

在住者たちはお口にチャック状態である。事件や政治などまるで存在していないかのような空気感なのである。

ドバイに住んで初めて、言論の自由がない世界ってこんな感じなのか・・・という体験をした。こんな発言をしたら、逮捕されるかもしれない。そんな恐怖が自己検閲に向かうのである。

日本語だから大丈夫っしょだとか、心配しすぎじゃん?と思うかもしれない。確かに日本で生活していたら、私もそう思っていただろう。

けれども実際にそうした話を間近で聞いたり、人から忠告されるうちに、ドバイは独裁がはびこる中国みたいにやべえ国なのかもしれない、と思い始めるのである。

操作された本の売れ筋ランキング

ドバイでよく見かける本ナンバーワンが、先のドバイ総司令官、ムハンマド首長の自叙伝である。空港の免税店や町中の本屋、ドバイ紀伊国屋書店などありとあらゆるところにある。

しかも、読む人もさしていないはずなのに、スペイン語や中国語などにも翻訳されており、まるでどこかの新興宗教本のような勢力を持ってドバイ各所にはびこっている。

世界最大規模と呼ばれるドバイモールには、紀伊国屋書店がある。そこには、売れ筋の本トップ10がカテゴリー別で並べられている。日本の書店ということもあってか、漫画の人気ランキングコーナーもある。

4年近く定期的に通っていたのだが、人文書ランキングでは、不思議なことにいつも1位に君臨し続ける本があるのだ。

それが、先のムハンマド首長の自叙伝である。

どう見てもランキング操作じゃないのか・・・?

町中であれほど見かける本だが、実際に本を買っている人や話題にしている人を見たことがない。

唯一の例外は、職場のデスクに例の本を飾っていたレバノン人同僚ぐらいである。

彼は、どこか異質な雰囲気を出していた。

なにせ、自分のPCモニターをクリスマスツリーにひっさげるような電飾で縁取り、仕事中だというのに、まばゆいネオンをきらめかせるのだ。それだけでは物足りないのか、さらにネオンをチカチカさせ、目の前にいる中国人同僚が迷惑そうにしているのを見て、ケタケタしていたような人間である。

関連記事:
ドバイ紀伊国屋書店で感じた違和感

ブラック労働がまん延

高級なイメージがするドバイでは、欧米出身の外国人たちは、プールやジム付きのアパートに住み、週末は豪勢なブランチを食べに行く、そんな優雅な生活を送っている。

一方で、そんな生活とは程遠い暮らしを送る人もいる。それがアジアからの出稼ぎ労働者たちである。

大家族のアラブ人家庭には、だいたいメイドさんたちがついている。そのほとんどは住み込みである。住み込みだから、家庭内で何が行われているかがわからない。家庭内は、ブラックな労働環境がまん延しやすい場所なのである。

奴隷のようにメイドを扱う家庭もある。かつて有名な王族の家で働いていたという女性に出会ったが、2年近く休みなしで働いていたという。あまりにも壮絶な体験だったのか、勤め先が有名な王族だったためか、当時のことを聞いても、あまり話したくなさそうであった。

これはドバイに限った話ではなく、オイルマネーで豊かになった湾岸の国にも言える。クウェートでは、レバノン人カップルの家庭で、フィリピン人のメイドが殺害された上、冷凍庫に放置するという事件が起こった。

この後、フィリピン大統領は「今後、自国民をクウェートに送り込まへん!クウェートで働くの禁止!」などと言って、国家間の問題にまで発展した。

メイドのパスポートを取り上げて、簡単に帰国させないという家庭もある。外国人にとってパスポートは、かなり重要な書類である。

ところが、ドバイでは従業員のパスポートを管理する会社が多い。帰国するからパスポートを返してくれ!と言っても、会社が拒否するケースも多々ある。

 

ドバイの闇についてつづったが、何もドバイをディスりたいわけではない。私自身はドバイに住んでよかったと思っているし、ドバイには日本にはない素晴らしい点も多々ある。

どこの国においても闇はある。けれども、ドバイに関しては美しいイメージという光が強いあまりに、闇の部分が消されてしまっているのではないか、と思った。

ドバイではこういう話をしたくとも、他の住民と分かち合ったり、SNSなどで発信することはできない。思ったことを発言すべきか、生活のために言いたくとも我慢すべきなのか、などとも当時は考えたりした。

ドバイの生活はよかったが、こうした言論の自由がなく少々息苦しかったのも事実である。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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