ムスリムを知るガイド。これだけは知っておきたいムスリムの9つこと

日本人からすると馴染みのないムスリムと呼ばれる人々。なじみがないのは昔も今も変わらない。

けれども、世界人口の約4人に1人がムスリムだと言われる現代。今後、日本にも多くのムスリムたちが観光や仕事でやってくることだろう。そんな彼らを知るために、ムスリムとはなんぞや?について解説。

ムスリムとは?

ムスリムとは、イスラーム教徒のこと。原義は、「帰依する者」という意味で、イスラーム教の神アッラーの教えに帰依する人々のことである。女性の場合は「ムスリマ」と呼ばれることもある。

では一体何をもってイスラーム教徒とするのか?

イスラーム教徒には、イスラーム教徒としての5つの義務がある。5つの義務とは、信仰告白、メッカへの巡礼、1日5回の礼拝、貧しい人への施しや寄付などの喜捨、断食月(ラマダン)の斎戒である。

それらの義務を果たしてようやくイスラーム教徒だというのは、ちょっとハードルが高いので、とりあえず、イスラーム教の神であるアッラーを信じるという”信仰告白”を行ったものがイスラーム教徒の最低条件となっている。

イスラーム教のルールまとめ。これだけは知っておきたいイスラーム教

人口の4人に1人がムスリム!?

世界でのムスリム人口は約18億人だといわれている。世界人口の約4分の1を占める割合だ。

イスラーム教徒の人口増加率は高く、2100年にはイスラーム教徒はキリスト教徒人口を抜いて、最大勢力になるという予想も出ている。

世界で最もムスリム人口が多い国は?

イスラーム教徒というと、アラブ人をイメージする人もいるかもしれない。確かに、イスラーム教徒はアラブ人が多いアラビア半島で誕生した。その周辺に住む多くのアラブ人は、イスラーム教徒である。

けれども、ムスリム人口が圧倒的に多いのはアジアなのである。アメリカのピュー・リサーチ・センターの調査によると、ムスリム人口の62%を占めるのがアジア圏で、中東や北アフリカ圏は、たったの30%程度である。

とりわけインドネシアのムスリム人口は2億3,000万人と、世界最大のムスリム人口をほこる国である。


ムスリム人口の数を示した世界地図:ピュー・リサーチ・センター資料より引用

ムスリム人口が多い国ランキングをみても、トップ5は、ナイジェリアをのぞきすべてがアジアの国出ある。

ムスリムが多い国ランキングトップ5

1.インドネシア:約2億3,000万人
2.パキスタン:約2億人
3.インド:約1億9,000万人
4.バングラディシュ:約1億5,000万人
5.ナイジェリア:約1億人

日本のムスリム人口は?

一方で日本にはどれぐらいムスリムがいるのだろうか。日本のムスリム人口は20万人前後と言われており、日本人口全体の1%にも満たないほど少ない。

世界人口の4分の1を占めるイスラーム教徒でありながら、日本ではレアポケモン並みにその数が少ないのだ。イスラーム教が日本にとってなじみがないのも、納得である。

しかもその20万人の大半を占めるのは、海外からやってきたムスリムである。日本人ムスリムの数は、さらに少ない。

日本人ムスリムといっても、イスラーム教徒の男性との結婚を理由に改宗したという人が多い。イスラーム教徒の男性が結婚をする場合、相手は一神教であるキリスト教やイスラーム教徒でなければいけないからだ。

ムスリムが礼拝を行うモスクは、日本全国で80箇所以上ある。

中でも、東京の代々木上原にある「東京ジャーミイ」は誰でも入れるモスクで、そのモスクの美しさを一目見ようと、多くの観光客が訪れる。東京でムスリムについて触れることができる、希少な場所だ。

ムスリムの服装

ムスリムだから、これをきなければいけない、といった日本の制服のような厳しい服装規定はない。

が!

女性は髪や肌、体の線を露出させないように、というのがルール。よって、スカーフをかぶったり、ゆったりとした服装を着ているのだ。それが国や地域によっては、アバヤのような黒いロングスカートだったりする。

イスラーム教においては、女性の髪や肌は、男を誘惑するものであり、むやみたらと公衆に女性のお色気を蔓延させないようにするためである。

一見すると、女性に服装の自由がないように見える。けれども、必ずしも服装規定に縛られた哀れな女性だけ、というわけではない。

おしゃれなムスリムのインスタグラマーたちを見ていると、それがよく分かる。


各国のおしゃれムスリムインスタグラマーたち

一方で、彼らの社会からすれば、むやみやたらと短いスカートや体の線が出る服装をしていると、”娼婦”扱いになることも知っておきたい。

ブルカ、ニカブどう違う?イスラム教徒の女性の服装を徹底解剖!

ムスリムの食事

ムスリムには、食事規定がある。彼らは、食べ物をハラール(食べても良いもの)かハラーム(食べてはいけないもの)に分ける。

彼らが口にしないものとして有名なのが、お酒と豚だろう。豚やお酒が入っていなければOKと思うかもしれないが、それ以上にもある。

飲むお酒の他に、醤油に含まれているアルコール成分もお酒とみなされる。豚もとんかつや豚汁などに限らず、ポークエキスが入ったコンソメポテチもNGである。

肉で言えば豚肉だけがNGかと思いきや、イスラーム教徒のやり方に則って屠殺されなければ、鶏肉や牛肉も口にはできない。

要は、どこのだれが屠ったのかがわからないものをむやみやたらと口にいれないのだ。

日本に住んでいたムスリムの話を聞くと、肉を買うときは、必ずイスラーム教徒が運営するハラールショップで購入していたのだとか。

日本のスーパーでは、どこの誰がどのようにおろしたのか分からない肉ばかりなので、買うのがためらわれるらしい。

イスラム教徒の食事を徹底解説。ハラールフード&禁止された食品一覧

ムスリムの礼拝

イスラーム教徒は1日5回の礼拝をする。しない人もいる。基本は、トイレ以外の清潔な場所であれば、礼拝はどこで行ってもよいことになっている。

イスラーム圏であれば、ショッピングモールやオフィスに必ず礼拝所が設置されているので、大体そこで礼拝を行う。

中には、駅の構内や道端で、マイ絨毯をひいて礼拝をおっぱじめる人もいる。礼拝所であるモスクに、毎回行く必要はない。

イスラム教の礼拝に関する疑問を解決!礼拝時間&方法を徹底解説

ムスリムになるには?

ムスリムになるのは、思った以上に簡単。時間にすれば、たった3分ほどで終わる。難しい手続きや知識テストなんかも必要ない。

イスラーム教徒の男性2人(女性のみの場合は4人)の前で、「アッラーを信じます!」という宣言をすればよいだけである。

注意したいのは、一度ムスリムになると「やっぱムスリムやめるわ」という棄教ができないこと。

ちなみに、イスラーム教の神を信じていれば、信仰が薄まること自体はOKとされる。国によっては、イスラーム教を信じないとは何たることか!ということで死刑になることもある。

イスラム教に改宗する前に知っておきたかったこと

ムスリムの特徴と日常生活

ムスリム人口はなんて言ったって世界で18億人である。同じ宗教を信じているからといって、ひとくくりにすることはできない。日本人と同じくして、様々なライフスタイルや考えを持っている。

国によっても、ムスリム女性の服装は違うし、家庭によってイスラーム教との向き合い方も異なる。

私の周りの例で言えば、礼拝には行かず、お酒も飲み豚も食べる世俗化したモロッコのムスリム。

一方で、親が厳しいため自分の意にはそぐわないが、仕方がなくアバヤやヒジャーブをつけているパキスタンのムスリム女性。毎日5回の礼拝を欠かさない、スイスのムスリム女性。

あげたら切りがないが、イスラーム教でこうあるべきだからといって、18億人全員がすべてそれを忠実に実行しているわけではない。

イスラーム教との向き合い方は、個人によって差があれども、イスラーム教の神を信じているという点は共通しているだろう。

日本人がムスリムを理解することは難しい?

多くの日本人は、ムスリムというと怖い人というイメージを持っている。おっかないアラビア語を話して、異教徒を殺戮する野蛮な連中といったところだろうが。

イスラム教は怖い?イスラーム教の国に暮らす日本人が考えてみた

ムスリムとて人である。一方で世の中には、彼らも日本人と同じ人なのだ、と楽観視する人もいる。

けれども、”無宗教”を名乗る日本人がイスラーム教という宗教を信じるムスリムを理解することは、結構難しい。いや、到底無理な話だと思う。

なにせ神がいる世界観と神が存在しない世界感とでは、物事の捉え方や考え方がまるで違う。

ムスリムたちと話してみて思ったのは、同じ事象でもまったく別の視点で捉えている、ということだった。そして、その考え方は日本人からするとなかなか理解できるものではない。

とはいっても、理解不能な人々と思考停止することはできない。なにせ世界人口の4分の1を占めるメジャーな人々なのだ。ここは、世界においては日本人がマイナーなのだという意識を持たなければならない。

ゆえに、メジャーな人々がどんな風に振る舞い、何を信じているのか、といった基本知識ぐらいは、常識として持って起きたいものである。ムスリムへの常識を持たないことが “常識”であったかもしれないが、それも今後は変わっていくだろう。

マンガでゆるく読めるイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

管理人をフォローする
内向型のつぶやき
シェアする
進め!中東探検隊