【徹底解説】ラマダンの疑問を解決!2019年はいつ?断食月は太る?

ラマダンといえば、断食。断食といえば苦行。それが一般の人が思い浮かべるラマダンのイメージじゃないだろうか。

けれども、ラマダンは断食だけではない。そんなラマダンに関するあれこれを周りのイスラーム教徒(ムスリム)たちから見聞きした出来事を踏まえつつ、ご紹介。


 

ラマダンとは?

ラマダンとは、イスラーム暦での9番目の月の呼び名である。日本でも旧暦があるように、イスラーム教も独自の暦を持っているのだ。

異教徒にとっては、「1ヶ月間断食」というコンセプトがあまりにも衝撃すぎたのか、ラマダン=断食月などと日本語で訳されているケースをよく見かける。けれどもラマダンは断食だけではないのだ。

イスラームの聖典、「コーラン」では、断食というよりも「斎戒」せよと書かれている。「斎戒」とは、「慎み避けること」を意味する。何を慎んで避けるのか。

    • 日の出から日没まで飲まず、食べないこと(断食)
    • 夫婦間であっても日中の性行為を避ける
    • 他人の悪口を言わない
    • タバコを吸わない

といったことなどである。断食はあくまで斎戒の一部であり、断食がラマダンのすべてではないのだ。

2019年のラマダンはいつ?

2019年のラマダンは、5月5日前後から始まる。イスラーム暦は、太陽暦と比べて11日短い。なので、ラマダンの開始日を知りたければ、前年のラマダン開始日から11日差し引けばよい。

以上の法則にそって、計算するとこんな感じになる。

ラマダンの予定時期
2018年  5月16日~6月14日
2019年 5月5日~6月3日
2020年 4月24日~5月23日
2021年 4月13日~5月12日

ラマダンの開始日は新月が確認された時点で決まる。しかも、それが決まるのがだいたいラマダン開始前の前日もしくは2日前である。何事もきっちり予定を決めたい日本人からすれば、驚きかもしれない。

この新月の確認は、「新月観測委員会」という怪しげな会のメンバーによって肉眼で行われる。各国にいる「新月観測委員会」によって、新月が確認されると正式にラマダンの開始時期が決定するのだ。

関連記事:結局、新月見れんかったんかい【ラマダンメモ】

なので新月が見えたり、見えなかったりでラマダンの開始時期は国によってもずれる場合がある。ちなみにインドやパキスタンといった国土が広い地域ともなると、場所よって開催時期が異なることもある。

ラマダンの期間と時間は?

ラマダンは、約1ヶ月続く。つまり、日中の断食をほぼ1か月連続でこなさなければならない。

また、ラマダンの断食というと、24時間断食をするものと思っている人もいるが、断食をするのは、日の出から日没まで。太陽が出ている間だけなのだ。

なので、国や時期によって断食の時間も異なる。日照時間が短い冬であれば短いし、日没が遅い夏には長くなる。

白夜が訪れる北欧などでは、1日中断食をしているわけにもいかないので、聖地メッカやそれに近い地域の時間帯に応じて、断食をする。

ラマダンの断食はダイエットどころか太る

日中飲まず食わずだから、ダイエットになるんじゃないの?と考える人もいる。しかし、現実は逆だ。

ラマダン中は、いかにヘルシーな食生活を送るか、ということがムスリムたちの目下の目標となる。

ラマダンは太りやすい時期なのだ。ラマダン中は、24時間ずっと飲み食いしないわけではない。日が暮れてから、人々は通常通り飲食を行う。日中は飲まず食わずだから、抑圧されていた食欲が爆発して、つい食べ過ぎてしまう人もいる。

それにムスリムたちにとって、ラマダンは日本でいうところの正月みたいなものである。日が暮れたら、家族や親せき一同が集まり、イフタールと呼ばれる断食明けの食事をとる。それがまあ、豪勢なのだ。

イメージ的には、日中断食をした後に、正月の豪勢な料理をほぼ1か月立て続けに食べる、といった感じだ。もはやダイエットには程遠いということがよくわかる。

いくら日中飲み食いせずとも、結局夜には食べてしまう。胃に負担をかけない、消化の良いものが、ラマダン中には推奨されるが、抑えつけられた食欲によりカロリーのあるものや、あぶらっこいものを食べたくなるのが人の性。

食事を終えると、大して動くこともなく就寝を迎える。このサイクルで過ごしていると、どうにも痩せることは難しい。

水を飲まなかったら熱中症になるんじゃないの?

この手の質問を、いろんなイスラム教徒にしたことがあるが、熱中症で倒れただとか、飲み食いをしないラマダンのせいで死んだ、という話は出てこない。

夏には、連日熱中症で運ばれる人がいる日本とは大きな違いである。そもそも、断食中のムスリムは、ラマダンをやり過ごすための知恵をつけている。

例えば、日中は体力を消耗するので、外に出ず家の中にこもるだとか、寝て断食明けまでの時間をやり過ごすとかいったことである。

仕事上、どうしても炎天下で作業をしなければいけない、という人もいる。そうした場合には、特例が発令されることもある。正確には、「ファトワー」と呼ばれる宗教令である。

ドバイでのある年のラマダンのこと。日中の気温が40度を超したドバイでは、「健康に害が及びそうな場合は断食を早めに切り上げてもよい」というお触れが発令された。

とはいえ、ムスリムの間では「わ~い、水が飲めるぞお」という声よりも、そんなお触れが出ようが、俺は日中の間は断食をする!という声も多かったのだとか。

ラマダン中の仕事は休みになる?

いくら日中飲まず食わずだからと言って、仕事はすべてキャンセルというわけにはいかない。通常の仕事もこなしつつ、断食をするのがムスリムたちの生活だ。

イスラームを国教とする国であれば、ラマダン中は就業時間が2~4時間ほど短くなる。就業時間の短縮も会社によって異なる。ちなみに、これはムスリムに限らずに適応されるので、断食をしていない人でも、早く帰ることができる。

就業時間の短縮のせいもあってか、一般的には、ラマダン中は仕事の進みが遅いといわれる。何事につけても「まあ、ラマダンですから」などといって、仕事への士気は、だだ下がりになる傾向がある。

一方で、カナダやアメリカのようなイスラーム教徒が少数派を占める国であれば、ムスリムたちは通常の生活を送りながら、断食を遂行することになる。

知られざるラマダンのルール

ラマダンは、ただ単に断食をすればいいというものではない。

断食をするにあたっても、「断食します!」と心の中で意思表明をしないとイスラーム教上での断食をしたことにならない。

「そういえば、今日忙しくて何も飲み食いしてなかったなあ・・・」という場合はイスラームにおいて「断食」をしたとはみなされないのだ。

ちなみに断食の方法についても、細かい規則がある。イスラームにおける断食の基本ルールは、「口を経て何かを体内に入れてはいけない」である。

勘のいい人はこう考えるかもしれない。

え、じゃあ歯磨きはどうなの?とか顔を洗っている最中にうっかり水を飲んだ場合はどうなるの?といったことだ。

そんな迷えるムスリムのために、ちゃんとその辺も細かく規定している。

国や宗派によっても異なるが、UAE(アラブ首長国連邦)の例だとこんな感じ。

【断食が無効になる例】
口をゆすぐ、意図的にアラブのお香(バフール、ウード)を焚いて香りを吸い込む、栄養注射を打つ

【断食中に行っても問題ない】
風呂に入る、化粧水をつける、化粧、夢精、インシュリン注射を打つ、路上の埃を吸い込む、つばをのみこむ、香水をつける、リップクリームをつける(ただし香りをのどで感じたらNG)、水泳、ダイビング、目薬(ただしのどで香りや味を感じない限りにおいて)、ニコチンパッチをはる

知らずにやってしまうと、せっかくの断食が無効になってしまうこともあるので、ムスリムたちもハラハラもんである。せっかくドミノを立てたのに、完成間際でダーっと倒れていくあの悲しい感じだ。

真面目なムスリムは、「この場合ってどうなの?」と心配が絶えない。そんな疑問に答えるため、イスラーム圏の国では「ムスリムのための電話相談窓口」が設置されている。UAEのケースだと、ラマダン中はお問い合わせ件数が3倍近くにもなると報道されていた。

ちなみにこの電話相談窓口は、イスラーム教以外の質問にも答えてくれる。

相談したことがあるぜ!という知人に聞くと、「大学の課題を友人にやってくれと頼まれたのだが、代行しても良いか」という質問をしたそうだ。

イスラーム教、全然関係ないじゃん?

 

1ヶ月断食ってやっぱり辛い?

異教徒からすればさぞかし辛い苦行でしょう、と思われているらしい。しかし、周りを見る限りや自分で実践する上では思ったほど辛いものではない。

確かに最初の1週間はみな辛いという。けれども断食が板についてくると、飲み食いできない現状がそれほど辛いことではないと思うようになる。

なにせ彼らの多くは、いやだなあ・・・という我慢大会というよりも、信仰心ゆえにやっているのだ。周りのムスリムたちを見ていても、「お腹減ったあ」とか「喉乾いた!みず飲みてー!」などという人はあまりいない

特にラマダンが夏にかぶった時は、一層辛いのでは?という意見もある。

UAEを始めとする湾岸諸国では、夏の最高気温は40度越えもザラだ。けれども、室内に入ればクーラーがガンガンに効いている。むしろ寒さで凍えてしまうぐらいだ。

それに車社会でもあるので、日中はほとんど外に出ることはない。シリアに住んでいた知人も「ドバイでのラマダンは楽だよ。なにせどこでもクーラーが効いているからね。シリアだと通勤にしても外を歩かなきゃいけないから大変だった」という。

断食は全員強制ではない。免除もあり

イスラーム教は、1ヶ月の断食をしなければならないストイックな宗教だと思う人もいるかもしれない。

けれどもイスラーム教だって、ちゃんと考えているのだ。12歳ぐらいまでの子どもや、妊娠している女性、生理中の女性は断食が免除される。

しかし、あくまでもラマダン期間中の免除なので、ラマダンが終わればその日数分だけ埋め合わせをしなければならない

旅行者も免除の対象になる。じゃあ、断食から逃れるために、旅行にいっちゃえばいいじゃん、と思うだろうが現実はそうでもない。

結局ラマダンは、神と己が向き合う時期。旅行で断食をスキップしたからといって、必ずしもムスリムたちが得をするわけではないのだ。

それにここでいう「旅行」というのは、「移動」の意味合いが強い。イスラーム教が生まれた時代には、飛行機にもタクシーもなかった。ロバやラクダに乗って、長距離を移動する。そんな大変な時にまで断食はしなくてもよい、という意味合いで免除されるのだ。

一方で、断食がどうしても無理!という、高齢者や病気の人々には、断食をする代わりに、貧しい人々に食の施しが義務づけられている。

ラマダンはより良い人間になるチャンスの月

ラマダンといえば、やたらと断食だけがフューチャーされるが、イスラーム教徒にとってラダマンの目玉は断食ではない。

「聖なる月」とも呼ばれるように、ラマダン中には人々の信仰心も高くなる。

人々は、ここぞとばかりにモスクに集結し、祈りまくる。ちなみに普段はそんなに人がいない礼拝の時間帯でも、ラマダン中だけは、大量の人であふれていることがよくある。

まるで初詣だけには、ここぞとばかりに神社に参拝する日本人を見ているような気にもなる。

通常、イスラーム教徒は1日5回の礼拝(シーア派の場合は3回)が義務付けられているが、ラマダン・スペシャルということで、「タラーウィーフ」と呼ばれる通常よりも長めの礼拝や、深夜の礼拝も追加される。いずれも、義務ではないので、やりたい人はどうぞ、というスタンスである。

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また、ラマダン中にコーランをすべて暗誦することも推奨されている。知人のムスリムは、「今年は、コーランをすべて読破してやる!」と意気込んでいた。

いずれにしろ、日頃の煩悩や欲望を抑えて、ひたすら祈りまくるのだ。ラマダン前は、お祈りしてなかったけど、ラマダンを経て毎日祈るようになったという人や、あんだけ悪だったやつもラマダン後は、人が変わったように善人になったんだ。とかいう話もよく聞く。

ムスリムたちはしきりに「いいか。ラマダンはより良い人間になるための絶好のチャンスなんだぞ」と口をそろえる。

ビジネスチャンス!?消費が活発になるラマダン

国民の大半が断食をするイスラーム教の国では、ほとんどの飲食店も昼間は閉まってしまう。ドバイの街もラマダン中だけは、日中はゴーストタウンのように人気がなくなる。

ムスリムたちは、体力を温存するために家にこもりっきり。消費が停滞して、経済に大打撃なのでは?と思う人もいるかもしれない。

しかし驚くことなかれ。むしろラマダン中は消費がより活発になるのだ。

スーパーをのぞくとラマダン・セールと称して、セールやラマダン中に需要が高まるデーツの特大パックなどをみかける。抑圧された食欲が物欲に代替されるのか、人々はいつもより多くのものを買い込む。

英ガーディアン紙によると、イギリスのラマダン市場規模は200万イギリスポンド(約1.5億円)とも報じられた。人口のたった4.4%がムスリムだという国でこれほどなのだ。他のイスラーム圏はいわんやだろう。

さらにグローバル・イスラミック経済レポートによると、2021年までにイスラーム関連のマーケットは3兆円規模に上るとしている。

こっそり飲み食いしてる人もいるんじゃないの?

一口にムスリムといっても世界で16億人もいる。逆に16億人全員がきっちりと断食をしていたら、みなが同じタイミングで大学を卒業し、会社に就職する日本社会のごとく、不気味といえるだろう。

「ちょっとぐらい隠れて飲み食いするんじゃないの?」と意地悪っぽくムスリムの先輩に聞いたことがある。

けれども、彼の回答曰く、

「これは俺と神の問題なんだ。神は全部お見通しだから、ズルは通用しない」

とのことだった。

人が見ているか、見ていないかなどは関係ない。あくまで、断食は神と自分のため。他人が見ているから、飲み食いしないとかそういう低俗なレベルの話ではないのだ。

ちなみにムスリムであっても、「今年はパスするわ」などといって断食をしない人。普段は礼拝なんぞほとんどしないが、断食だけはちゃんとやる人。いつもは短いスカートを履いて、長い髪をあらわにしていても、ラマダン中は断食はやる人など。

なにせムスリムの人口は16億人。ラマダンとムスリムたちの向き合い方も、人それぞれなのだ。決して一括りにすることはできない。

マンガでゆるく読むイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

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