ラマダン前夜に恐怖のブートキャンプ始まる

てっきりラマダンといえば、その日の早朝から断食を始めることがラマダンなのだと思っていた。

しかしムスリムのパイセンいわく、「ラマダンの前夜からタラーウィーフが始まるぜ」とのこと。

「タラーウィーフ」というのは、ラマダンの時期にだけ行われる特別な礼拝である。通常イスラム教徒は5回の礼拝(スンニ派の場合。シーア派は3回)があるが、ラマダン中はタラーウィーフも入れて計6回のお祈りをすることになる。

イスラム教徒の礼拝タイミング

1.早朝の礼拝(ファジュル)
2.正午過ぎの礼拝(ズフル)
3.遅い午後の礼拝(アスル)
4.日没後の礼拝(マグリブ)
5.就寝前の礼拝(イシャー)
6.ラマダンスペシャル礼拝(タラーウィーフ)

*( )内はアラビア語での礼拝名

祈り方も通常の礼拝とは違うという。そしてとにかく長い礼拝らしい。そんな心もとない情報だけを頼りに、へえどんな礼拝なんだろ、と思いつつモスクへ。

モスクに着いたのは、就寝前の礼拝時だったのだが、なんということでしょう。

通常この時間帯であれば女性セクションは5人ぐらいしかいないのに、その日に限っては50人近くのムスリムたちが集結していた。

聖なる月、ラマダンということもあってムスリムたちの気合の入りようが違う。


人が集まり始めたモスク内。各々コーランを読んだりしている。

正月に初詣のため神社にたかる日本人を見たような気がした。ここぞという時に熱心になるのは、ムスリムも自称「無宗教」を名乗る日本人も同じなのかもしれない。

いつも通りにイシャー礼拝を済ませる。そこでおひらきにして、退出するものもあれば、「タラーウィーフ」のためその場にとどまる者もいる。

10分ほどして、例の「タラーウィーフ」が始まった。ちなみにこの時点で時刻は夜の9時である。

初めてのことなので、とりあえず周りに合わせて動いてみる。祈りの定型パターンみたいなものがあり、それを何度か繰り返す。通常であれば2~4回ぐらいなのだが、4回目を超えたあたりにその異変に気がつく。

ん?これまだ続くの?

礼拝と礼拝の合間に、ささっとペットボトルの水を飲んで「水休憩」をするものもいる。休憩しながら行う礼拝だと聞いていたが、このことだったのか。といっても、ぺちゃくちゃと世間話に興じるほど長い休憩ではない。3分ほどである。

短いインターバル休憩を挟みつつ、ひたすらこの動作を繰り返す。一体いつまで続くのかわからない新参者にとっては、恐怖ですらある。

そして眠い。明日からラマダンが始まるので、午前3時過ぎに起きなければならない。8時間連続で睡眠をとらないと、翌日のパフォーマンスが著しく低下する人間としては、一刻も早く寝たいところである。

寝ぼけ眼で同じ動作を繰り返し、ラクダの顔モノマネをして、自らを覚醒させてみたりする。

ラマダン時には「天国への扉が開かれる」そうだが、このとき初めて「これは地獄への門が開かれた」の間違いでは・・・?とすら思った。

すると突然、皆の動きがとまり、さっと両手で本を読むような形を作る。


こんな感じ

祈りを先導するイマームが「ラマダンだぜ!みんな気合い入っているか!」みたいなことを言い出す。それに応じて、ムスリムたちも「ウェイ!」などと呼応する。

うあああ。なんかフェスみたいだな、と思いつつその日のタラーウィーフ礼拝が終了。時刻はすでに10時を過ぎていた。もうかれこれ1時間半ほど礼拝に費やしたことになる。

しかも翌日は午前3時起き・・・とんでもないブートキャンプの始まりだと、恐怖におののいた夜となった。

マンガでゆるく読めるイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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