マレーシアに滞在していた時のことである。マレーシアは、英語が通じることでも知られている。英語が通じるなら安心じゃ!と思っていたのだが、どうやら甘かった。
店で買い物をしていた時のこと。店員がやってきて、あーだのこーだのと英語で説明する。そこで飛び出たのが「フリーら!」である。
2つ買ったら1つ無料だよお!という意味で飛び出たのだが、なぜフリー(free)に”ら”をつけたのか。
さらには、テレビを見ていた時のこと。
ラマダン明けの休日で混雑する動物園。レポーターが「混雑していて大変ですね~」と、訪問客に声をかける。訪問客は、「そうなんですよ~でもオーケーら!」と答える。
オーケーら!?
そこはオーケーだけでいいだろ。
そう。これがマングリッシュの衝撃である。これまでインド、フィリピンはもちろん、アメリカ、ヨーロッパ、イギリス、ロシア、アラブ諸国、東アフリカなど、いろんななまりのある英語を聞いてきたという自負があったが、マングリッシュという突如出現した謎の英語に、その自信は紙くずと化した。
な、なんだ。この英語は・・・
そして自分の世界の矮小さを知った。
というか、フリーら!とかOKら!って言葉を変えてる時点で、アウトじゃないか。これを英語とみなしても良いのだろうか。
いや、待てよ。
では、ふなっしーはどうなのか。
「お疲れ様だなっしー」
「そんなことは、わからないなしな」
なんだ。”なっしー”とか、”なしな”って。けれども、一応日本語ではある。ふなっしーの言葉は、日本語ではないという人はいない。
とすれば、OKら!も、フリーら!も英語かあ・・・
語尾問題はまあ良いとしても、表現やイントネーションはどうなんだろう。ちなみにマングリッシュによく似ているシングリッシュがいかなるものかという教材として、こちらをご覧いただきたい。
値段を聞くときに、通常であれば、”How much?”などと聞くが、”How many money?”と聞いている。直訳すれば、お金いくつ?である。文法はガン無視である。
となれば、多くの日本人はこう思うだろう。
義務教育の6年間で英語を学んだのはなんだったのだろう、と。マングリッシュやシングリッシュは、シンプルである。そうしたシンプル単語をつなぎ合わせて、会話が成立するならそれに越したことはないじゃないか。小難しい単語を覚えたり、正しい発音に拘泥する必要なんかないじゃないか・・・
一般的な英語が、一般車だとすると。マングリッシュは、改造車である。表面上は、魔改造されているが、車という点では同じモノだと判別できる。
当初は、その魔改造された英語におののいていたが、時間が経つにつれマングリッシュはクセになるらしい。なぜだかわからないが、聞いていると心地がいいのである。改造のパターンが分かれば、聞き取りもそう難しくはない。
で、結局マングリッシュは英語なのだろうか。