イスラム教の礼拝。礼拝時間やルールについてわかりやすく解説

イスラーム教に関する知識もままならないうちに、イスラーム教徒になってしまったため、改宗した当初、とりわけ礼拝はわからないことだらけだった。

そんなわけで、イスラームの人々と暮らしながら、見聞きしたイスラームの礼拝についてご紹介しようと思う。

礼拝の時間とタイミング

一般的にイスラーム教徒の礼拝は1日に5回と紹介される。細かく言えば、スンニ派は1日5回、シーア派は3回である。

しかしスンニ派のほうがイスラーム教人口の中では圧倒的に多いため、便宜上1日5回と紹介されている。

祈りの時間は、太陽の位置によって決まる。よって礼拝時間は毎日微妙に違う。おおまかに説明するとこんな感じだ。礼拝にもいちいち名前がついている。

礼拝のタイミング

早朝(ファジュル):夜が白み始めてから日の出前までに行う

正午(ズフル):太陽が頭の上にきてからアスルの礼拝まで行う

午後(アスル):物の影が本体と同じ長さになった時から日没までに行う

日没後(マグリブ):日没直後からイシャーまでに行う

就寝前(ジュムア):日没後の残照が完全に消えてからファジュルの礼拝までに行う

1日5回も礼拝するのは結構大変

このように紹介すると、イスラーム教徒というのはみな1日5回も時間通りに礼拝をしているんだ~と無邪気に人々は考えるだろう。

しかし、いざやってみるとこれが実は大変なことだったりする。

なにせ、正午を過ぎれば、午後、日没前、就寝前と立て続けに礼拝がやってくる。その間は2~3時間ほどしかない。時間通りにやろうと思えば、何かに集中して取り組もうにも難しい。

自慢じゃないが、私は今まで一度たりとも時間通りに1日5回の礼拝をクリアしたことはない。

人によっては、まとめて2~3回分の礼拝を行うこともある。ちらっと知人のWhatsapp家族グループ(LINEグループみたいなもん)を見ると、「礼拝は時間通りに行うべし」とアラビア語で書かれた画像が流れていた。送り主は、叔母だという。

本来は時間通りに行うのが望ましいとされているが、現実は違うのだろう。

とりわけ年配のムスリムは、こうした善良なムスリムになるためのスローガンを画像や動画とともに送りつけてくる傾向がある。

仕事中の礼拝はどうしている?

イスラーム教の国であれば、会社のビルやショッピングモールなどたいがいの建物には礼拝所が設置されている。

礼拝所といっても、小さな部屋に絨毯がひかれたシンプルな場所である。


会社のビルに入っている礼拝所。各々のタイミングでやってきて礼拝を行う。立っている女性の前にはメッカの方向をさす矢印が印刷された紙が貼られている。

礼拝時間は10分もかからないので、仕事中にさっとぬけて礼拝をする人も多い。中には、タバコ休憩のごとく「一緒に礼拝行こうぜ!」と誘い合う人々もいる。

女性の礼拝所には、髪や肌を隠す貸し出し用のアバヤやヒジャーブもおかれている。仕事中は、髪も肌も出しているというムスリムも少なくない。礼拝時は髪も肌も覆う必要があるので、こうした貸し出し用の衣装が用意されているのだ。

“金曜礼拝”はイスラーム教徒にとって特別な礼拝

ふだんは時間通りに礼拝をしなかったり、毎日モスクで礼拝をすることがないイスラーム教徒たちも、この時だけはきっちりと時間通りにモスクに集まる。

それが金曜日の正午礼拝。この時ばかりは、みな気合を入れて、ビシッと時間通りに集まるのだ。

礼拝開始に遅れそうになると、「やべえ!間に合わねえ!」と全力でモスクに走るやつもいる。

失礼ながら海外は時間にルーズな人々が多いと思っていたので、国も文化も違う人々が時間通りにモスクにやってくるという光景は、今見ても感心させられるものがある。


金曜礼拝はとにかく人が多いので、モスクの外まで礼拝する人々であふれることもある

みなが一堂に会する礼拝ともあって、人々は近況報告などのおしゃべりに興じる。

そのほかにも金曜礼拝の前には、アザーンから礼拝が始まるまでの時間が長く、その間イマーム(祈りを先導する人)が、あれこれとイスラームとは何たるや、について信徒たちに熱く語るのである。

アザーンについては、別の記事を参照されたし。
なんて言ってるの?時間は?アザーンを徹底解説

どうやって祈るの?イスラームの祈りの作法

これまたスンニ派とシーア派で微妙に違うのだが、ここは長いものに巻かれとけ精神で、スンニ派の基本形をお伝えする。

文字や動画で解説されたものを見てもいまいちわからなかったため、ここでは実践的で一番参考になったブックレットを引用する。

当初はこのブックレットを見てなんども練習したものである。こちらのPDF版には、祈りの方法から礼拝の言葉まで細かく掲載されているので、大いに役立つ。


ダールッサラーム出版「ぼくの・わたしのサラー(れいはい)」より引用

上記の動作は礼拝の一部であるが、簡単に言えばこの動作の繰り返しである。タイミングによって、2回だとか3回だとかになる。

動作にあわせて祈りの言葉も言うことになっている。正直に言うと、祈りの言葉に関しては何が正解なのかはわからない。

なにせ人によっては動作のみで無言で済ませる人もいるし、別の祈りの言葉をブツブツつぶやいている人もいる。バラバラなのだ。

逆にブックレット通りに祈りの言葉を言う人の方が、私の周りでは少ない。と同時に、より熱心な人のほうが、祈りの言葉を正確に発する傾向がある。

スンニ派は、体一つで礼拝を行うが、一方でシーア派は祈りの小道具を使う。シーア派のモスクに必ずあるのが、「タスビー」と呼ばれる数珠と「モフル」と呼ばれる土の塊だ。

礼拝の時におでこを地面につける動作があるのだが、シーア派の人々はこのモフルに額におしつけるのである。


タスビーとモフル。スンニ派のモスクにはおいていない小道具

礼拝は男女別に行う

社会の節操を保つ観点から、イスラームではむやみやたらと男女が混ざり合うことを避けることを好む。イスラーム教徒にとって神聖なモスクも例外ではない。

礼拝の時、男女は分かれて祈る。モスクは男女別のセクションがあり入り口も別々にある。

モスクによっても異なるが、2階建てのモスクだと1階が男性、2階が女性。1階建てのモスクであれば、仕切りをたてて、男性側、女性側といったようにだ。


女性セクションの一例。礼拝は足の曲げ伸ばしがあるので、椅子に座ったまま礼拝をする人もいる

ただ、祈りをする際はモスク中にイマームの声が響き渡るようになっているので、女性たちはイマームの姿がみえなくともその声を頼りに、礼拝を行うのである。

メッカの方向を向いてお祈り

礼拝の時に、イスラーム教徒はある方向を向いて祈る。それが、聖地メッカの方向だ。イスラーム圏のホテルであれば、天井にメッカの方向を示した矢印があったりすることもある。


モスクにはメッカの方向を示すくぼみ、「ミフラーブ」がある

野外であっても、メッカの方向を示す礼拝アプリがあるので、それをもって方角を知ることができる。

礼拝アプリは、礼拝の時間も教えてくれる。礼拝10分前になると、アザーンがスマホから流れる仕組みになっている。便利な世の中になったものだ。

清潔な場所であればどこでも祈ってもOK

礼拝をするには、モスクでしないといけないのでは?と思うかもしれない。しかし、慈悲深いアッラーが君臨するイスラーム教は、実にフレキシブル。

基本、礼拝は「清潔な場所」であればどこで行ってもOK。ただし、トイレだけはいかにピカピカに磨こうとも「清潔な場所」とはみなされない。

町中を歩いていると、公園の草むらやメトロの駅構内、その辺の駐車場に“マイ絨毯“(アラジンが乗っている魔法の絨毯ぐらいのサイズ)をしいて、礼拝をする人々を見かける。

時には砂漠や山でもおもむろに礼拝をする人もいる。絨毯さえひけば、道路でも「清潔な場所」と見なされるらしい。


砂漠で礼拝中

礼拝をするのに必ずしもモスクに行く必要はなく、道具が必要というわけでもないのだ。必要なのは、祈る心と清潔な場所、そしてメッカの方角を向くこと。実にシンプルである。

マンガでゆるく読めるイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

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