日本の空港がすごいことになっていた…海外帰国者レポ。PCR検査、帰国手続き、14日間の隔離生活

1年でこんなにも変わったのか・・・

コロナがアフリカでも流行し始めた一年前、タンザニアからやむなく日本へ帰国した。それから再び1年後、エジプトから日本へ帰国することになった。

1年前は、入国の際に空港で書類にサインをして簡単な質問に答える。たった10分ぐらいで終わるものだった。ドキドキした割に、実際の手続きはあっけないものだった。

しかし、それから1年後、事態は一変する。

日本人でも入国するのが困難

こんなに入国するのが難しい国ってあるのか・・・?もはや単なる入国審査というよりも、SASUKEである。次々と襲いかかる無理難題。入国するには、それらをクリアしなければならない。

入国前からすでに帰国者には、いくつかの課題が課せられる。

接触確認アプリや地図アプリをインストールし、どこから帰国するのか、隔離期間の滞在場所などを記す質問票を記入しなくてはならない。

そしてもはや国外移動では必須になりつつあるPCR検査。数日前にカイロでPCR検査を受けて、結果が出るまでは祈るような神妙な面持ちで過ごす。陰性が出た時は、大学受験に合格したぐらいホッとする。

なにせ陽性が出てしまえば、飛行機に乗れない。航空チケットも14日間の隔離先ホテルの予約もパアである。

PCR検査を受ける病院を現地で探すのも一苦労である。私がエジプトのカイロで探した時は、PCR検査も5,000円から2万円のものまであり、一種のビジネスのようにもなっていた。旅行者たちは、そうしたPCR検査を受ける場所を探し出すのに、右往左往である。

さらに着陸空港の選定も重要である。基本的に空港からは公共の交通機関を使うことは禁止されている。よってハイヤーなりレンタカーなりを借りる必要がある。ハイヤーを雇えば、数キロの距離でも2万円以上はする・・・

げげっ。

帰国するだけでこんなにお金がかかるとは・・・

吝嗇な私は考えた。

空港から徒歩で脱出することは可能だろうか・・・しかし、距離的には可能だったが、法的な問題で現実的ではなかったので却下。

羽田か成田という2択だったのだが、羽田からは検疫所の無料のシャトルバスが出ている。しかも、1時間おき(実際は30分おきぐらいだった)に出ており、予約は不要。これを利用しない手はないということで、着陸を羽田空港に決定。成田からは、無料シャトルバスはあるものの、特定のお高いホテル宿泊客でなければ利用できないものであった。

入国の検疫チェックで1時間ほどかかる

渡航前の準備でも一苦労だったが、本当の苦労は日本着陸前から始まる。

バサッ

機内で分厚い紙の束を配られた。ホチキスで10枚ほどの紙が止められている。中には、誓約書や質問票など、読むのに20分ぐらいかかりそうな情報量が詰め込まれている。

ここから新入生オリエンテーションならぬ、検疫オリエンテーションが始まるのである。

海外帰国の書類
機内で渡された書類一式。この中にサインが必要な誓約書などが含まれている。

飛行機を降りると、そこはいつもの空港ではなかった。コロナチェックのために空港内は魔改造され、まるで検疫アトラクションのような空間が出現していた。ここからがSASUKEの始まりである。

第1関門はやはり簡単。係員に、事前に質問票に答えましたYo!という証拠のQRコードを提示するだけでいい。難なくクリアである。

次は唾液採取によるPCR検査。検査キットを渡され、投票所のような区切られた場所で、壁側を向いて唾液を採取する。壁には唾液採取の説明と、レモンと梅干しの写真が貼られていた。

・・・?

「唾液が出にくい方は、レモンもしくは梅干しの写真を見ていただくと、スムーズに唾液が出るかと思います」

親切すぎる案内である。

第2関門は、ITセッションである。携帯ショップのごとく係員がつきっきりで、このアプリをインストールしたか?など、自分のスマホを見せながら、5項目ぐらいの確認を行う。

隔離期間中の連絡方法として、SkypeもしくはWhatsAppのアプリ(実際に連絡が来ることはなかった)や位置情報アプリ「Overseas Entrants Locator」などのアプリをインストールする必要がある。

また、Googleマップの設定で、デバイスに位置情報の共有を許可する設定をしましょう、といったミニITセッションが開催された。

世界有数のiPhoneユーザー大国である日本は、設定の説明もiPhoneがメインになっていた。一方で、私のスマホはアンドロイドだったため、係員も「えっ?」と困惑しており設定がわからず、別のパイセン係員を召喚する事態になってしまった。

そして次に連絡方法の確認が行われる。登録したメールアドレスが本物かを確かめるため、前の前にいる担当者が私のメールアドレスにテストメールを送信。

こちらは、「メールがちゃんと届きましたよ〜」と係員に画面を提示する。確認が終わったら、担当者は確認用紙にサイン代わりにハンコを押していた。

そして、ハンコが押された用紙を別の場所に提出するのである。

ハンコ、まだいるじゃないか・・・

審査が厳しい陰性証明書チェック

特に問題が多発したのが第3関門である。ここでは、渡航前に受けたPCR検査の陰性証明書をチェックする。すでに声を荒げており、押し問答状態になっている挑戦者もいる。このステージはどうやら一筋縄でいかないらしい。

はて。なぜ陰性証明書をチェックする必要があるのか。陰性は陰性じゃないのか、と思いきやそうではないらしい。

PCR検査にも色々と方法があり、日本政府が認める検査法で陰性を獲得しなければ陰性と認められないのである。これがとても厄介である。

係員「ちょっとこの陰性証明書では、規定に沿っていないので陰性とは認められないですねえ」

帰国者の女性「そんなこと言われても・・・数ヶ月前に入国した時は、同じ証明書でOKだったんですよ!?」

係員「最近になって規定が変わってしまったので、同じものでも今回は陰性証明書としては認められません」

帰国者の女性「そんな・・・じゃあ、私どうすればいいんですか?」

隣にいた緑パスポートを持つ女性と係員のやりとりである。

地獄絵図だ・・・

陰性なのにあんなにケチをつけられるとは・・・

そして待つこと数分。担当の係員が駆け寄ってきて、私の審判の時がやってきた。

結果はいかに・・・!?

「お待たせしましたあ。結果から申し上げると、今回は提出してもらった陰性証明書でOKです。ただし、色々と協議したんですよね〜。ほら、ここの”NS”って書いてあるところ。普通に考えればNasopharyngeal Swabで鼻咽頭ぬぐい液の略かな〜と推測できるんですけど。今後は同じ書式でもNGになる可能性があるので、くれぐれも気をつけてくださいね」

ひえっ!?

エジプトのカイロ空港では、ノールックだった紙切れ。それがなんとここでは、数分かけて担当者が誰かに確認をとり、細かいフィードバックをくだす重要な書類に格上げしていたのだ。

ちなみに陰性証明書が認められなくとも、日本から追い出されることはない。政府が指定する検疫施設で3日間滞在することになる。

最後の審判。PCR検査結果の発表

そして最後の難関。先ほど、空港内で受けたPCR検査の審判が下る時である。これが陽性であれば、やはり政府の隔離施設行きである。

先ほどの唾液検査を受けた瞬間、我々には囚人のごとく番号が振られた。6582。それが空港内における私の名前である。

6582!

受付カウンターへ行く。

「え〜今回の検査では陰性でした。お疲れ様です」

そういって、陰性証明書の紙を渡される。

完全制覇の瞬間である。

いくつもの難関を乗り越え、ようやく手にした尊い「入国」。それは日本到着から1時間後という長き道のりであった。

荷物を受け取り、ターミナル内へのドアをくぐる。しかし、そこには誰もいなかった。わずかな人数の帰国者がいるだけだった。

14日間の隔離生活

羽田空港の片隅にある駐車場から、無料シャトルバスに乗り込む。隔離先ホテル近くの駅で降ろしてもらい、徒歩で14日間の隔離先へ向かう。

正直、メールアドレスや電話番号などをばらまき、色んなアプリをインストールさせられて、何が何だかよくわからない状況だった。てっきり電話やSkype経由で連絡が来るのかと思いきや、そうではなかった。

毎日11時きっかりに、厚生労働省からメールが送られてくる。発熱やせきの症状はあるか?体温が37.5度以上あるか?という2つの質問が、14日間毎日送られてくる。この質問に14時までに回答しないと、氏名を公表すっからな、という警告文も添えられている。

帰国者は入国に際し、誓約書にサインをしなければならない。

帰国から14日間の隔離を守ること
帰国から14日間、公共の交通機関を利用しないこと
帰国から14日間、他者と接触しないこと

いずれかを破れば、氏名を公表すっからな、という旨の誓約書である。

入国にこんなに困難が伴うとは・・・

もしも、これを読んでいる人で帰国を考えている人がいるならば、言いたい。出来ることであれば、今は帰国しないほうがいい、と。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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