日本人にとって近くて遠い隣人、それが北朝鮮の人々である。
テレビやネットでは、謎の美女軍団や独裁国家などいったワードで語られている。日本人でも北朝鮮に旅行にいけなくはないが、やはり一般市民にとってはいまだ謎に満ちた国である。
そんな謎に満ちた国、北朝鮮の人々に会うことができるレストランがドバイにある。
北朝鮮人とのはじめての会話
それが、デイラ地区にある「Okyru-Gawn」だ。バール・ドバイのアスコットホテル内にも、もう一軒ある。そしてアブダビにも1店舗。外食産業の競争が激しいドバイにおいてはなかなかの実績である。
せっかく北の人々に会うのだから・・・という謎の意気込みにより、ドバイではまず不要の電話予約なるものまでしてしまった。というか単純に北朝鮮の人に会える!という期待のもと、もしかしたらものすごい人気店なんじゃないかとすら考えていた。
ドバイにいるわけだし、多少英語は北朝鮮の人もできるよね・・・?と思いつつ、電話先の一声は「안녕하세요예약을받습니다〜」。バリバリの朝鮮語であった。その後、こちらが朝鮮語を理解しないとわかると、英語にきりかえる。
声を聞く限りハツラツとしていて、ものすごく元気がいい。親父のラーメン店を手伝うしっかり者の娘というイメージである。
電話番号は?名前は?ハキハキした様子で答える。あちらは満足した様子で、「じゃあお待ちしております〜」と電話を切りそうな雰囲気になったので、慌ててこちらから肝心の予約時間を伝える。ハキハキとしている割にとうっかり者のようである。
これが北の人との初めての会話であった。
一歩入れば、そこは完全に北朝鮮ワールド
たかが飯を食うのに、これほど緊張が高まったことはかつてない。なにせこれから会うのは、謎に満ちた北の人々だからである。そこにはむしろ、テレビの報道やネットを通じて見続けた北朝鮮の人々に会うのだ、という「有名人」に会うという緊張感が漂う。
予約日当日。緊張しながら、北のレストランへ向かう。北朝鮮・・・なんていうちょっと後ろめたいワードゆえに奥まった場所にあるのかと思いきや、見通しのいい道路に店は面していた。
北朝鮮国旗カラーの看板に、怪しげなネオンがあたりを照らす。周りは真っ暗なので、妙にレストランがあやしげに浮かび上がっているように見える。入り口は、なぜか透明のビニールカーテン。ネオンといい、ビニールカーテンといい、歌舞伎町の無料案内所を彷彿させる。
しかし、店の中に入ると歌舞伎町ではなく、そこは北朝鮮ワールドだった。目鼻立ちがくっきりとした、あどけなさの残る北女が出迎える。いわゆる美女というやつである。
あらま!
これがかの北朝鮮美女か!北のファースト・インパクトである。とりあえず「アンニョハセヨ〜」と挨拶してみる。
北女もそれに応えるものの、どうやら英語が話せないらしい。英語ができる北女2がやってきて、席に案内される。予約席には、きちんと人数分の皿と箸が置かれていた。
席に着くと、北女3がメニューを持ってきてくれた。やはりこちらもそこそこの美人である。注文を取りながら、「お客はんどこからきたんどす〜?へえ、ドバイに住んでるんですか〜?」
北朝鮮の美女に興味を持ってもらえている?という謎の嬉しさがこみ上げた・・・のも一瞬。耳をすますと、あちこちのテーブルで北女たちは同様の質問を客に投げかけていた。定型文かよ!
訪問前の緊張とは裏腹に、目の前にいるのは純粋そうな北朝鮮の美女たちである。すっかり気を許し、北朝鮮ワールドに入り込んでいくのであった。