コロナ禍の寂しさもあって、とにかく誰かと話したい。というわけで、HISが主催しているインド人の占い師にZoomで占いをやってもらうことにした。
しかし占いといえば、必ず悩みを持参せねばならない。こちとら、仕事や恋愛といったものに深刻な悩みがあるわけでもない。どちらかというと、占いが本当に当たるのかを、自分で確認したいという嫌な客である。
HISが主催しているということで、占いはとてもスムーズだった。事前に両手の手のひらを撮影した写真と、生年月日や住所などを相手に送付する。Zoom占いは通訳の男性と占い師を含めた3人で行われた。
占いが始まるやいなや、画面からリキシャの音が聞こえてくる。画面越しには、アリババみたいな占い師のおじさんが鎮座している。
さっそく、占い師が話すのかと思いきや、開始から10分ひたすら通訳男性が話し続けている。「この方はお父さんのお父さんの代から占星術をやっておりまして、25年以上もやっています〜」という使い古したテンプレに始まり、占い結果をニュースのようにアナウンスした。
占い師との一問一答かと思ったが、ひたすら通訳男性が話し続けるので、どちらが占い師かよくわからなくなってくる。アリババ風の占い師は単なる置物と化している。
「アナタ、フリーランスやりたいアルね」
ひえっ!???
当たっている!!!
職業は事前に伝えていないはずだが・・・この時、私はすでにフリーランスとして働いていた。手相で、フリーランスかどうかが分かるとは・・・・さらに、アナタは何でも自分で決めてやりたいタイプなのだといった追加情報を加える。逆に言えば会社員に向いていないということなのだろう。
まあ、占いというのは大体誰にでも当てはまりそうなことをいったりするものである。それに、10個ぐらい「あなたは〜アルね」と言われるが、本当に当たっているのはその半分ぐらいだったりするのである。
一通り占い結果のアナウンスが終わり、質問コーナーになる。特に悩みがあるわけではないので、悩みも抽象的になりがちである。
「私の人生どうなんでしょうかね」
何気ない質問だった。
しかし、次の一言が私の人生を決定づけるものになる。
「あなたの人生・・・・」
「問題ないね」
アナタノジンセイモンダイナイネ
アナタノジンセイモンダイナイネ
アナタノジンセイモンダイナイネ
問題ない人生とは・・・?
人生というのは問題ばかりである。特に、遺伝子レベルで不安を感じやすい日本人というのは、人生に対して悲観的になりがちである。特に先のわからない未来に対しては、この先どうなっちまうんだろう、と不安しかない。むしろ、自分の人生は明るいと胸を張れる人の方が少数派なのではないか。
しかし、占い師の一言は、こうした悩みや不安を吹き飛ばすのである。今や住所不定で自分の家がなく、ホームレスみたいな暮らしを送っていても、この先問題ないというのだ。
同時に、人生問題ばかりというのは、自分の思い込みだったのだと気付かされる。これまで、嫌なことや辛いことがある度に、人生は大変だと思ってきた。しかし、この占い師の言葉によれば、そんなのは問題でもなんでもない。
逆にいえば、私の人生は、問題がないぐらい平凡にして平坦な人生ということか。
「あなたの人生問題ない」
とてつもないパワーワードである。マリオカートでスーパースターを引き当て、何がやってきても吹き飛ばす無敵状態になった気分ですらある。
未来にどんな心配があったとしても、自分の人生に問題はないのだ。だから、どうにかなっているはず。
占いの後は、いつも当たっているような当たっていないようなモヤモヤ感が残る。けれども、モヤモヤ感以上に彼らの言葉が、人生の迷いを晴らし、背中をそっと押してくれるような気にもなるのだ。