コレはハマる!天にも昇る魅惑の料理「インド中華」の正体

インド料理屋の中には、しばしば中華料理を提供している店がある。

店の前の看板をみても、「インド料理・中華料理・アラブ料理」などと書かれている。

はて。

UAEはアラブ人の国だ。アラブ料理ならまだわかる。しかし、なぜインド料理屋で中華なのだろう。

海外のアジア系レストランにありがちな、韓国、中華、日本などとりあえずアジア料理をまとめて出しとけ、という精神ではなさそうだ。

その謎を探るべく、インド中華で有名な店を何軒か回ることにした。

病みつきになる!魅惑の満州風スープ

まずやってきたのは、ドバイのヘルスケア・シティにある、「Grub Shack」というお店。

地元民の間では、相当な人気の店。それほど良い立地ではないのに、次から次へと客がやってくる。

しかし、気になるのが店の雰囲気。

筋金入りのインド料理屋のはずなのだが、見た目は、ハンバーガーとポテトを出してきそうなアメリカンな店である。

さらに、真昼間だというのに、金髪の美女による生演奏が繰り広げられていた。これまたアメリカのカントリー・ミュージックである。

しかし、店内にいる客は、現地のアラブ人かインド人家族である。

とにかく情報が多い店である。

注文したのは、「マンチョウ・スープ」、「シェズワン・ライス」、「シェズワン・チキン」の3品。

マンチョウは満州風、シェズワンは四川風を意味する。なので日本語に訳すと、「満州風スープ」、「四川風チャーハン」「四川風チキン」といった感じになる。

こうすると、聞きなれない料理が、ぐっと身近になる。

「満州風スープ」にいたっては、満州で実際に食べられている料理というわけではない。あくまで気分の問題である。

ネーミングともかく、味はどうなのか。

それは一口食べただけで、食べたものをとりこにする魅惑のスープといってもよいだろう。


マンチョウ・スープ。パリパリっとした乾麺がトッピングされているものもある。

とろりとしたスープは、醤油、ニンニクが効いており、みじん切りにされた野菜や鶏肉が、味をより複雑にしている。辛味が効いていて、額に汗がにじんでくる。

あくまでこちとら、中華料理を食べているつもりなので、店員に「箸はあるか」と聞いた。

しかし、店員に「そんなもんねえよ」と言わんばかりに、一蹴される。そうだ、あくまでここはインド料理屋である。

四川風チャーハンとチキンは、四川というだけあって、辛い。

赤チリをふんだんに使ったシェズワン・ライスは、見た目こそインドっぽい。しかし、香りといい、口の中で米が舞う感覚といい、中華のチャーハーンのそれである。


レッドチリとニンニク、ビネガーを混ぜ合わせたシェズワンソースを使ったシェズワン・ライス


酢豚の食感に近い辛旨な「シェズワン・チキン」

外の気温は40度越え。しかし、クーラーが効いたこの部屋で、猛烈に汗をかきながら、辛旨料理を食べるこの爽快感。

アメリカンバーガー風のインド料理の店で、金髪美女の英語の生演奏を聞きながら、インド人やアラブ人に囲まれ、中華料理を食べる。

店には何一つ一貫性がないが、インド中華はうまい、ということで全会一致である。

コルカタ発祥のインド中華

「インド中華」は、中国から移住してきた中国系移民によって作られたのが、始まりだと言われている。

彼らが移住したのが、インド西部のベンガル地方にあるコルカタだ。インド中華といえば、コルカタが発祥なのだ。

現在でも、こじんまりとした中華街がコルカタにはある。しかし、それは横浜の中華街に比べれば、規模は小さく、コルカタに住む中国人は、現在2000人ほどと言われている。

そんな本場の味を引き継ぐのが、「コルカタ・インペリアル・ドラゴン」。飲食店の入れ替わりが激しいドバイにおいて、20年以上も営業を続ける老舗である。


豚のキャラクターがお出迎え。UAEは豚が不浄とされるイスラームの国だが、気にしない。

こちらは、インド中華がメインの店で、インド料理定番のメニューは少ない。店内をみても、中華料理屋そのものである。


中華料理屋でよく流れているBGMが流れていた。

老舗ゆえか、店は相当ガタがきていた。はっきりいって、ボロくて汚い店である。店に入った瞬間、古いエアコンのにおいがする。

えづきそうになった。

一瞬帰りたくなったが、それは失礼なので、ねっとりと迎え入れてくれた化粧が濃いおばさん店員に導かれ、席に着く。

天に昇るような至福感「天国のドラム」

正直、料理の方も心配である。

しかし、料理が出てくるやいなや、ほったて小屋も宮殿に早変わりである。もはや、ソファが破れていようが、気にならない。

こんな人が近寄らなそうなビルの一角で出てきたのは、ジャジャーンという登場音をつけたいぐらいの、料理たちである。

インド中華の代表的料理ともいえる、「ハッカ・ヌードル」、「ゴビ・マンチュリアン」、「天国のドラム」である。


「天国のドラム」。グレイビー(肉汁)をしっかりかけた骨つきチキン。

なぜ「天国のドラム」と呼ばれるのかは、不明だ。

しかし食べると、天国で天使が太鼓をドコドコやっている景色が見え、幸せな気分に浸れる。

決して、怪しげなドラッグが入っているわけではない。また、天に昇れるかどうかは、個人差があるので、ご了承を。


実家で食べた野菜焼きそばを思い出させる「ハッカ・ヌードル」

「ハッカ・ヌードル」のハッカとは客家と呼ばれる、漢民族の人々のことを意味する。


香菜をトッピングしたゴビ・マンチュリアン

「ゴビ・マンチュリアン」のゴビとは、カリフラワーのこと。素揚げしたカリフラワーに、ソースを絡めた一品である。仕組みとしては、酢豚と同じである。


寿司屋の醤油のごとく各テーブルに置かれていたのが、グリーンチリとレッドチリソース。どちらも辛さを増す。

インド中華は、本場の中華料理と比べると、辛いし、味も濃い。しかし、それこそがインド中華の特徴ともいえよう。

一人暮らしゆえに、食事には頓着しない。食べられればなんでもよいという精神なので、毎日同じものを食べても平気な人間である。

しかし、インド中華を食べた時ばかりは、なぜか天にも昇るような至福感に包まれる。それがインド中華の魅力だ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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