インジェラを超えるツワモノ現る!甘いパスタ、「バラリート」の衝撃

エチオピアのインジェラの味はとにかく悪名高い。食べた人々は、一様にして「まずい」と形容する。

一体どうしてこんなものを食べようと思ったのだろう?というものさえ食べる雑食な日本人ですらも、このインジェラからは、距離を置こうとするほどだ。

そんなインジェラに続き、私の中でさらなる衝撃が走ったのが、「バラリート(Balaleet)」と呼ばれる食べ物だ。通称「甘いパスタ」。

「バラリート」はUAEやカタール、バーレーンといった国で食べられている食べ物である。個々の国に行くと、「バラリートは俺のもんじゃい!」と言わんばかりに、「伝統料理」の争奪戦が起きている。

UAEでは「UAEの伝統料理!」というし、バーレーンでは「バーレーンの料理だべ!」という。他の「伝統料理」にしても同じだ。

そもそも湾岸諸国は、国としては歴史が短いし、気候や人々の暮らしも似通っている。そんなわけで、特定の国というよりもこの湾岸あたりで食べられている物と認識したほうがいいのだろう。

さて、この「バラリート」とやら。見た目はなにやら美味しそうである。


オムレツが乗っかったバラリート

しかし、口にした瞬間。

ぎゃっ

と心の中でたまげてしまった。エチオピアのインジェラをしのぐ、第2の使徒襲来である。不味いというよりも、期待値の問題である。我々はとにかく塩辛いパスタしかしらない。けれども、目の前に君臨するのは、甘いパスタなのである。

きれいな女性だなあと思ったら、実は男性だった。そう、目に見えてるものへの期待値とリアリティが完全に乖離している時、我々はとてつもない衝撃を受けるのだ。

ちなみにインジェラはバラリートと逆のケースである。クレープ状なので「甘そう」と見せかけておいて、すっぱいのである。このギャップに脳が完全ノックアウトされた結果、人々は、「不味い」とすっぱり切ってしまう。

正直、このバリラートは、インジェラよりも手ごわかった。インジェラの聖地、エチオピアのレストランで食べた時は、半分ほどインジェラを食べきった。付け合わせと食べれば、インジェラは結構イケるのだ。

しかしこのバラリートの場合は、どうしても3口以上進むことができなかった。何より「塩辛い」でおなじみのパスタが、甘いのだ。父親がある日突然、母親になってしまった・・・そんなコペルニクス的転回に頭がついていくことができない結果だった。

それにしてもなぜこんな衝撃的なコンセプトの食べ物が、未だ世の中であまり知られていないのか。

ドバイやバーレーンは、世界中の料理がすでに入ってきている。日本食もあれば、洗練された高級料理もある。そんな豊富な食の選択肢があれば、まずバラリートにたどり着くことはない。それゆえに、まだ世間に認知されていないのだろう。

第2のインジェラ、バラリートはひっそりと生き続けるのか、それとも食のグローバル化の波にさらわれて、姿を消してしまうのだろうか。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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