ドバイの民族衣装、アバヤを買うまでの道のり

すでにアバヤ的なものは何着か持っていたのだが、どれも数年前に買ったものばかりだった。

ソマリランドにいくためにドバイ空港で買った初めての黒のアバヤ。たしか3,000円ぐらいだったはず。そしてイランのテヘランに行った時に、買った頭巾のようなヒジャーブ。ソマリアで仕立ててもらったカラフルなワンピースにお尻まですっぽり隠れる大きめのヒジャーブ。

どれも着たいから買ったわけではない。必要に迫られて買ったものばかりである。だから、思い出こそあるものの愛着があるわけではない。

乞食姿からの脱却。おしゃれなアバヤが着たい

しかし、モスクにいくようになってから気づいた。周りはみなアバヤなのである。しかも金曜日の礼拝ともなると、ファッションショーか!というぐらいきらびやかでおしゃれなアバヤをまとった女性たちが集まる。

普段アバヤを着ない私は、モスクで貸し出されるアバヤもどきを着る。アバヤもどきというのは、それが真っ黒なアバヤではなく、大きめの防災頭巾みたいなものに、布切れ一枚で作ったスカートのセットだからだ。

はたから見れば、とりあえず肌を隠すための布切れにしかすぎない。しかし、ゴージャスアバヤと並ぶと、まるで乞食のような格好なのである。

そんな乞食姿の己に耐えきれなくなった私は、ちょっとおしゃれめなアバヤが欲しいなと思うようになった。街中じゃあアバヤが欲しいなんて思わないが、9割がアバヤを着た人しかいない環境にいると、人間コロリといっちまうものなのである。

アバヤを探す旅始まる

そんなわけで、アバヤ探しが始まったのだが、これがなかなか見つからない。それまでの私は、ドバイで服を買う=モールと理解していたので、とりあえずモールに足を運んでみた。

とりあえずドバイ・モールなどでみてみるが、これがぼったくりバーのごとく高い。たかが布のくせに5、6万もしやがる。こんな高い伝統服があるかボケと心の中で思ったが、店員のフィリピーノは「マダ〜ム、ここはドバイなのよ」とたたみかけてくる。

やっぱりゴージャス都市ドバイの名を借りた、ぼったくりショップだ。

アバヤってこんなに高いものなのか・・・?すると思わぬアドバイザーが。知人のモロッコ人が、「アバヤを買うならスークっしょ。モールなんて観光客向けなんだから高いにきまっとるやん」というのだ。

しかし、どうもスークでは買う気がしない。確かにスークでアバヤはよく見かける。安いことは安いだろうが、どうも地味なものが多そうだ。


スークで見かけるアバヤショップ

ということで探しているとアバヤ・センターなるものを発見。アバヤセンターというぐらいだから、アバヤ専門店に違いない。そう踏んでセンターに行ってみたら、これが結構正解。

黒だけがアバヤじゃない

「マムザー・アバヤ・センター」にはなんと80店舗もアバヤショップが入っている。


これだけ種類があれば、必ずお気に入りの一着に出会えるはず


黒ばかりなので若干ホラー感があることも否めない

選び放題である。値段もずいぶん安い。値段は5,000円ほどから。しかも、黒だけじゃなくてカラフルな素材もたくさん。麻っぽいものからベルベット生地まで。アバヤの多様性ここにあり。


大胆な刺繍が入ったアバヤは日本の着物に通ずるところがある


冬に良さげなベルベットのアバヤ

黒を基調としたアバヤはあったのだが、ここでハタと気付く。アバヤって普段使いできなくね?外国人がアバヤを着るということは、外国人が着物を着るようなもんである。

しかし金を払って買うからにはたくさん着たい。アバヤを着て会社なんかに行った日には、いくらドバイでも単にコスプレしている人間になりかねない。それほど、アバヤというのは取り扱い注意な服なのである。

普段使いできるアバヤにしたくて

ならば路線変更。会社にも着ていける服にしよう。ということで最近はやりのKIMONOスタイルのアバヤに仕立ててもらうことにした。


こんな感じのカジュアルなスタイルで

ディスプレイしているアバヤはどれもマツコデラックスみたいなサイズである。つまりは横にも縦にもでかいのである。だから布を選んで、自分のサイズに仕上げてもらうのが一般的。

モールなんかだと仕立人が常駐していないことがあるので、仕上がりに2~3日かかるケースもあるようだが、ここのショップはどこでも常駐しているので20~30分ほどでできるのも良い。

てっきりメジャーできっちりと計るのかと思いきや、測ったのは丈と袖の長さだけ。「え?もっと胴回りとか測ってくれよ」と思ったが、速攻で仕立に入ってしまう。


このおっちゃんで大丈夫なのか?

出来上がったのを着ると、ちょっとイメージと違う。

だからちゃんと測るべきだったんだよ。と思いながら、「ここ直しておくれ」と再度注文。テイク2、テイク3を経て、良さげなサイズになった。その間、たったの15分ほど。今回は通常のアバヤではなく、KIMONOスタイルにしたため、イメージが伝わりづらかったのだろうと思う。

それにしても、仕立るのがこんなに短時間でできてしまうとは。

そんなわけで仕上がったのがこちら。仕立代込み20ディラハム(約600円)で200ディラハム(約6,000円)。もうちょっと交渉すればよかった・・・

そんなわけで完成したのがこちら。

しかし普段使いできるが、これじゃあモスクで着れないということにハタと気づく。しばらくは乞食姿が続きそうだ。

マムザー・アバヤ・センター(Mamzar Abaya Center)
行き方:
メトログリーンライン、アル・キヤダ駅から徒歩10分
営業時間:
10時〜23時(日曜〜木曜)
15時〜22時(金曜)
地図:

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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