スケールが違いすぎ!アラブ王族がクレームに直接対応した結果

何気なく置かれていた新聞記事を眺めていた時のこと。こんなタイトルが目に飛び込んできた。

その見出しはこんな感じ。「ドバイのサービスの質はこんなもんじゃねえ!某郵便局の対応にドバイ首長お怒りになる」というニュースである。しかも一面の上の方に掲載。

幼稚じみたニュースだが、これは子ども新聞ではない。UAE有力紙の1つ「ハリージ・タイムス」、大人向けの新聞である。

アラブの王族が怒ったワケは・・・?

一応、新聞という体ではあるが我々が一般にイメージする新聞とは、ややかけ離れている。どちらかというと、聖教新聞に近く「池田大作先生」ならぬドバイ首長やドバイがいかにすばらしいかを喧伝する媒体である。

UAEは民主主義ではなく王様が偉いんだぞお、という君主制の国である。だから、ドバイのトップに君臨するムハンマド首長の動静の方が、国内の経済や事件、国際情勢よりも重要視されるのである。

そんなわけで「ハリージ・タイムス」の一面には、たいていドバイのムハンマド首長の言動や動静が掲載されるのである。首相動静を2面に小さく載せる日本の新聞とは、扱いが違う。

冒頭のニュースだが、筋書きはこんな感じだ。

ドバイにある中央郵便局に訪れた客が、あまりにも待ち時間が長すぎて、その不満をソーシャルメディア上に投稿。すると、ムハンマド首長がそれを発見し、自らのツイッターアカウントで「これはドバイのサービスの質じゃねえ!」とお怒りをあらわにしたのである。

せいぜい社会紙面に小さく掲載されそうな記事だが、それが1面にでかでかと掲載するところが、ドバイ通信もとい「ハリージ・タイムス」である。見ていてほほえましい。


ムハンマド首長のお怒りのツイート

ドバイ通信には、「見てみて!エミレーツ航空がベストエアライン賞に選ばれたんだよお!」だとか「内戦で可哀そうなイエメンにこんなに援助するんだよお。ドバイって優しいでしょお!」などという記事が躍る。

このように満面のドヤ顔で、ドバイはすごいんだぞおアピールをするドバイ通信を私は愛してやまない。

なお、ドバイ通信は、エミレーツ航空が過大に評価されていることや、UAEの援助は単なる目くらませに過ぎないといった事実を知った上で読むと、ひときわ面白いということを付け加えておこう。

質の低いサービスが超速で駆逐されていくドバイ

一個人のクレームに自ら対応するだけでなく、ムハンマド首長は「今後こんなサービスを続ける政府の部署や人員には徹底的にメスを入れる!」などと付け足した。リーダーシップがあるというのは、こういうことをいうのだろう。

普通ならば、口だけの公約で人々は、それほどそれが実行されることなど期待はしない。けれども、ドバイは違う。口に出したことは、たいてい本気で実行するのである。しかも、超速で。

その数日後。「タスヒール」と呼ばれる政府管轄の労働局センターが、一時閉鎖に追い込まれるというニュースが流れた。その理由は、サービスの質が低く、クレームが多発していたということである。クレームの内容のほとんどは、待ち時間が長いというものだったという。

ちなみに私もこの「タスヒール」を利用したことがある。詳細はこちら。

給料の差し止めは許せん!ドバイで会社を訴える!

あの時は、従業員の対応などに激おこぷんぷんしていたが、まさか制裁が下る日がやってくるとは。嬉しいやら悲しいやら複雑な心境である。

待ち時間が長いというクレームのせいで営業停止に追い込まれるのであれば、日本の病院や市役所なんぞはもはや全滅しているだろう。

ドバイはとにかく実行するまでのスピードが速い。とにかく悪いものは、どんどん改善し、社会をよくしていく。ムハンマド首長の鶴の一声で、物事は変化していくのである。

民主主義であれば、議会で話をして、決議をとって~などで時間がかかるが、賢明なリーダーシップのもとでは、こうしたトップダウン式の統治も悪くないよな、とも思う。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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