マレーシアKLのドラァグクイーンショーに行ってみた

パリピなスウェーデン人が居候していた時のこと。我々は、とある事件により、LGBTQへの意識を一層高め、自らもそのコミュニティに属さねばならないのではないか、という課題に直面していた。その自己啓発の一環として、ドラァグクイーンショーにいくことにした。

自宅からショーをやっているクラブまで、Grab(Uberみたいな配車タクシー)で行くことにしたのだが、Grabの運転手が視聴覚障がい者であることが発覚。初めてのことで、なんの意味もなく我々は慌てふためき、速攻でググって手話の簡単な挨拶をインストールするのであった。

車へ乗り込むと、助手席の後ろには「私は耳が聞こえません」という宣言と共に、簡単な手話のイラストが入ったボードがかけられていた。

ショーが行われるのは、KLの随一の繁華街であるブギッ・ビンタン。雰囲気的には健全な歌舞伎町である。すでに深夜だというのに、人でごった返している。

めっちゃ人がおるがな!と言いながら、身を乗り出すと、運転手も手話で合いの手を入れてくれた。会話が成立したようなで、ほっこりである。

さて、気分はほっこりからドキドキである。薄暗いクラブ内には、DJ音楽がガンガン流れており、客を高揚気分へと誘う。

が!

平日であるためか、客の数はまばらで、我々の他には、観光客と見られる欧米系のグループと、男性カップルが数組だけであった。

店内を見やると、カラオケ屋としても稼働しているのか、テレビ画面からは中国語の歌詞字幕と、ファミリーや青年たちが笑顔で微笑むほっこり映像がひたすら流れていた。

なんだこのズレた世界観・・・

そう。マレーシアではこの手のよくわからない世界観によく出くわす。観光客で賑わうイケイケなバーに行った時も、店内の天井から垂れ下がっているテレビ画面を見やると、シンクロの世界大会の映像が流れていた。

一体この世に、シンクロの映像を垂れ流すバーがどこにあるというのか。

健全で美しいアスリートの肉体が競う様子を見ながら、ダラダラと飲み食いし、ライブミュージックを楽しむ、というシュールな世界がそこにはある。

パフォーマンス前だというのに、演者たちがその辺をうろうろしながら、身内たちと話している。ここ大丈夫なんかな・・・?

という不安は、パフォーマンスが始まるとすぐに消え去った。本日はゴシックデーということで、演者たちは、ゴシックスタイルに身を包み、聞き慣れた西洋ポップに合わせて、パフォーマンスを披露。


派手な衣装が非日常へと誘う。マレーシアでは、ラフな服装をしている人が多いので、こうした衣装を見るのも楽しい。


背景は場末のバーのようだが、それすら気にならない圧巻のパフォーマンス。中央に君臨するのが、チームのボス。衣装も覇気も違う。


ダンスだけでなく寸劇も披露。ガチで演じている。


ショーが終わると演者と聴衆で楽しいダンスタイム。

なんだこれ・・・めっちゃ楽しい・・・!

こんな美しい世界がこの世にあったのか・・・!

美しく着飾るお姉様方に圧倒され、私は阿呆みたいに口をぽかーんと開けていた。

ショーは2部制になっており、1部が終わるとトークタイムが始まった。トークといっても、ボスみたいなお姉が、客に次々と絡んでいくという恐怖の時間である。

安心してショーを楽しんでいた我々は、次々とお姉の標的となり、名前と出身地を晒す羽目になった。ついでに、カップルなのかどうかも逐一確認され、シングル男子であれば、歓声が沸くという謎の空間に迷い込んでしまった。

それにしても、ボスのトーク回しのうまさよ。初対面の客をいじりまくり、時には差別用語ギリギリまで攻め、さらには18禁用語も投入してくるのだが、ポップな口調だからなんだか笑えてしまうという始末である。お姉のコミュ力の高さは、どうやら世界共通のようである。

ショーが終わると、ヨーロッパ人観光客グループが声をかけてきた。

「ねえ、君ってレズビアンなのう?ゲイの僕にとってレズビアンはベストフレンドなんだよお」

あっそ

「旅から戻ったら、恋人とのアニバーサリーでアウシュビッツ収容所にいくんだあ♪」

聞き間違えかと思ったが、本人は至って真面目であった。まるで世界観が分からない。

けれども、不可解な世界観こそが非日常であり、それがちょっと心地良かったりする。KLのドラァグクイーンショーもまたそんな場所であった。

 

KLでドラァグクイーンショーを楽しめるBlue Boy Pub & Restaurant
入場料:45リンギット。ワンドリンク付き。
場所https://maps.app.goo.gl/wbpWGwbWPUSbXDKg7
開催日時:ショーの開催曜日は、インスタで最新情報をチェック。ラマダン中も開催。賑わうのは週末。ショーは大体深夜1時前に始まる。パフォーマンステーマは、日によって変わるので、何度か訪れるのもアリ。ノンケでも楽しめる。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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