ゲイじゃないとクールじゃない!ヨーロッパがいろんな意味で狂っていた

ヨーロッパといえば、ぼんやりと先進的な国々の集いと思っていたのだが、最近そのすさまじい先進ぶりに、震えている。

こ、こんな世界が存在するのか・・・

おしゃれで先進的なヨーロッパは、もういない。そこにあるのは、先進的すぎて理解し難い別の惑星である。ダンスでいえば、コンテンポラリーダンス。もはや、先を行きすぎて、凡人には意味不明な状態である。

3年後に俺はゲイになる!

そうのたまわったのは、スマトラの部族ツアーで出会ったベルリン出身のステファンである。なぜドイツでは、求人票にいちいちジェンダーを表記するのか?と聞いたところ、こんな話になった。

「いいか。ベルリンではな、もはやヘテロ(異性愛者)じゃダメなんだ!最低でも、バイセクシュアルにならなきゃダメなんだ」

「ただ、俺は今はゲイになれない。もう少し時間が必要なんだ。あと数年だけ。そうしたら、ゲイになるんだ!」

誰も聞いていない、とんちんかんな野望を大声で喧伝するのであった。

あまりにも突拍子もない発言に、ははあ、この人がどこか気が触れているに違いない、と思った。しかし、裏どりをするため、もう1人のツアー参加者であるスウェーデン人のエリクソンに聞いてみると、

「いや、まあそうだな」

まさかの同意である。そうか。この2人がきっとおかしいに違いない。といわけで、セカンドオピニオンとして、たまたまその辺にいたパリ出身のフランス人に、「こういうわけなんだけど、そんなことってある?」と聞くと、

「いや、まあそうだな」

である。

もちろんヨーロッパといえども広しなので、すべての国で発生している事案とはいえないだろう。実際に、ベルリン以外から来た別のドイツ人に聞いたところ、「ベルリンは、ドイツ全体を反映しているわけじゃない。あくまでもあそこはちょっと変わった場所だよ」というのであった。しかし、トレンドとして存在していることは事実でありそうだ。

多様性を尊重する社会では、誰もがその性を認められ快適に暮らせるものだと思っていた。しかし、彼らの言い分からすれば、ヘテロは好ましくないとされ、その性的嗜好を変更せざるを得ないほどのプレッシャーがあるらしい。

世界的にヘテロの人口は80%。しかし、ステファンの話によれば、多数派であるヘテロが疎外され、誰もがLGBTQを目指さなくてはならない、という摩訶不思議な世界観がベルリンにはあるようだ。

悩める男たち

ステファンとエリクソンは、ともにヘテロ男性であったが、”男”であるゆえの悩みもあった。

「俺は、男だという理由で昇進できなかったんだ。会社は、女性の管理職を増やすっていう方針だったからさ・・・」

「男である以上、たとえ不利な状況に置かれてもそれを女性のように声を上げることはできない。何せ、そもそも男が悪い、っていう風潮だからさ」

同じ悩みを抱える”女”として、彼らに同情である。

ヨーロッパは、日本よりもマシな男女平等社会が築かれているかと思いきや、女性の声や地位が大きくなりすぎたゆえか、転じて男性の方が肩身を狭い思いをしているようである。

男女格差がありすぎる日本からすれば、100年経ってもこんな天変地異は起きそうにないが、男女平等が実現しているように見える社会の有り様がこれだとは・・・

これじゃあ、面子がただ裏返しになっただけじゃないか。

自由な性のあり方とは

ベルリンでのステファンの暮らしぶりを伺うと、彼が置かれているプレッシャーも理解できなくはなかった。

彼の知り合いに子供が2人できたという。双子なのか?と聞いたら、そうではなく付き合っている2人の女性が同時に妊娠したのだという。

また、ある知人男性は、女性と結婚しているのだが、妻公認で別の女性とも付き合っているという。さらには、現在その2人の女性と一緒に暮らしているのだという。

狂ってる・・・

こ、これが自由な社会というやつなのか・・・?

流石にこの話は、スウェーデン人のエリクソンも引いていた。

確かに、こうしたことが許されるのであれば、日本の諸所の問題も問題にすらならなそうである。しかし、こんな自由すぎる社会はどこか脅威を感じるものがあった。私が、未だ男女関係のゴールの相場が、結婚だと思っている”遅れた”人間だからだろうか。

ゲイになるには?

自然発生的にゲイになるならまだしも、世間的なプレッシャーからゲイに転換するのは大変そうである。性的嗜好は、変えようと思って変えられるものではない。しかも、ヘテロ男性がゲイになるのは、ヘテロ女性がレズビアンになるよりもハードルが高いという。

ちなみにステファンは、バツ2で2人の娘がいる。子どもからしたら、父ちゃんがいきなりゲイになるってどうなのか?と聞いたところ、その辺は心配無用だという。

むしろ、自分がゲイにならなくても、子どもがレズビアンならそれだけで十分だという。

十分とは・・・?

「子どもがレズビアンだと、俺もレズビアンの父ちゃんだと、胸を張って言えるだろ。そうしたらベルリンでクールになれる」

そういう問題なのか・・・?

確かに、ベルリンで表面的にクールになるのならば、その戦法もありなのかもしれない。ちなみに彼いわく、ヘテロカップルよりも、ゲイカップルに子どもができた時の方が祝福される、と言う。

一体、どんな世界線で生きてるんだ・・・

雲を掴むような話である。一部の人間の狂言なのか。それとも、そうした社会は本当に実在するのか。先進的であることも、行き過ぎるとどこか制御不能になる。スタンリー・キューブリックが描いた『2001年宇宙の旅』のように。それとも、私が保守的で遅れている人間なのだろうか。実際にベルリンに行かなければ、この謎は解けそうにもない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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