これだけは知っておきたい!サウジ観光の心構えと気をつけるべきこと

サウジアラビアは特にイスラーム色が濃い。といっても、そのほとんどは、他のイスラーム諸国に見られるものではなく、”厳格路線”と言われるサウジ特有のスタイルである。

外国人観光客を受け入れ始めたサウジだが、国はまだ変化の過渡期。サウジスタイルは、そこかしこに残る。

サウジ観光においては、こうしたサウジスタイルをいかに攻略していくかがポイントとなるだろう。

そんなわけで、サウジ観光にあたって気をつけるべき点をご紹介。

礼拝時間には気をつけるべし

サウジ国内では、礼拝の時間になると飲食店も含め、ほとんどの店が閉まる。

イスラーム教の休日である金曜日に店が閉まることは、他のイスラーム教の国でもあることだが、礼拝の度に店を閉めなければいけないのは、サウジぐらいである。

24時間営業が当たり前な日本社会に生きる人間にとっては、結構過酷なことなのである。

なにせ、お腹がペコペコで「さあ、ご飯を今から食べるぞお」と意気込んで、レストランに行くと、ちょうど礼拝の時間にあたり、30分以上待たなければいけないこともあった。

サウジ観光中は、こうした悲劇に何度か見舞われた。

空腹時の”待て”は、相当な拷問である。かろうじて礼拝が始まる前に、店の中に入れたとしても、「今から礼拝始まるから、注文はその後やで」と言われ、結局店内で待機しなければならなかったり。

あらかじめ、礼拝の時間がわかっていたとしても、ちょうど夕食時と礼拝の時間が重なりやすいので、こうした事故が多発するのである。

リヤドのモスク
リヤドにあるモスク

イスラーム教の礼拝は1日5回あり、正確なタイミングは太陽の位置で決まるので、地域や日によっても毎日少しずつずれる。

正確な時間を知りたければ”pray time in Jeddah”などググると、毎日の礼拝時間が出てくる。

大まかなタイミングとしては、こんな感じ。下記は、観光シーズンである冬のタイミングなので、夏になると少し異なる。

イスラーム教の礼拝タイム(11月から2月頃)

夜明け前の礼拝: 5時〜
正午の礼拝: 12時〜
午後の礼拝: 15時〜
日没の礼拝:18時〜
就寝前の礼拝: 20時〜

午後から礼拝ラッシュが始まるので、夕食のタイミングをうまく考えておきたいところである。

礼拝は、モスクから大音量で流れてくる呼びかけで始まる。

これは、アザーンと呼ばれ「みんなあ、礼拝だよお!集まれい!」と皆の衆に礼拝を促すのである。サイレンのごとく街中にこだまするので、聞き逃すことはない。

これが始まると、店のオーナーたちは、いっせいに店を閉め始める。

このアザーンが流れてから、5分〜20分ほどで礼拝が始まる。礼拝の時間は、10分程度。礼拝を終えた人々は、店に戻り再び営業を開始する。

礼拝のため店を閉める店主
礼拝の合図が始まり、店を閉め始める店主


昼間なのに、シャッター街になるスーク。この寂寥感といったら。こうした静寂に包まれる度に、サウジでは夕方以降に活動しなければ、と思うのである。

礼拝の度にいちいち店を閉めるのは、効率悪くね?と思うかもしれない。

しかし、ここはイスラーム教の国サウジである。効率よりも、イスラーム教の方が大事なのである。いや、サウジだけに限らずとも、仕事よりも信仰という価値観を持っているイスラーム教徒は多い。

仕事の効率か断食か。相容れない価値観【ラマダンメモ】

昨今まで、このように厳格路線を行くサウジであったが、「やっべえ。原油価格落ちてんじゃん。どうしよ」ということで、一部の店に限っては、24時間営業がOKとなった

けれども、いまだに多くの店では、礼拝の時間は店を閉めているのが現状である。

金曜日はガチの休日

金曜日はイスラーム教の休日で、イスラーム圏では、金曜、土曜が週末となる。

サウジでは、金曜日の朝から日没まで、多くの店が閉まっている。観光スポットもまるでゴーストタウンのように人気がなくなる。


モールのフードコート。昼時だが、ほとんどの店は閉まっているため、客が少ない。礼拝時間や金曜以外にも、12時から夕方までは休憩タイムといったイスラーム・タイムが適用される場所も結構ある。営業時間は変則なので、注意したい。

一方でイスラーム教徒たちは、正午の礼拝のためモスクに集まる。礼拝が済むと各々まったり食事をとり、正午あたりからポツポツと店が開き始める。完全に町に活気が戻るのは、日没以降だ。

とはいえ、ちょっとぐらいは開いてる店もあるっしょ、と思っていた。

が!

サウジは金曜日に関してはガチだった。本当に店が開いていないのである。その辺の店から、高級ブランド店が入っているショッピングモールまで、すべて閉店ガラガラなのである。

一方で、せっかくの休日であり、朝から動きたい人もいるわけである。けれども、お国がそれを許さない。というわけで、こんな光景も見られた。


スーパーの開店を待つ群衆


送金屋の開店を待つ行列。銀行が破綻寸前なのではない。

彼らのためにも、ぜひ金曜日の通常営業を検討いただきたいものである。

町に出かけるなら夕方以降

アラビア半島の夏は、地獄のように暑い。誇張ではない。これは、アラビア半島で地獄の暑さを体験した人間の感想である。

10月から2月は一応冬なのだが、それでも日中は日差しが強い。サングラスが必要なほどである。

よって、この地域の人々が町へ繰り出すのは、日没以降である。モールやスークは昼間でも一応営業しているが、ほとんど活気がない。

こうした場所でローカル感を感じるなら、サウジ観光中は夜型にシフトした方が楽しめる。

ちなみに、この地域の人々は、だいたい2~3時頃にランチを食べ、夜8~9時頃に夕食をとる傾向がある。

なんくるないさ精神で行くべし

観光ビザが発行されているがために、我々はついサウジで”観光”ができると思ってしまう。

いや、普通はそう思うだろう。

けれども、そこにサウジトラップがある。

観光ビザ発給を始めたばかりゆえか、”観光地”としてはおぼつかないところが結構あるのだ。

観光客のお目当てになりそうなスポットは、アクセスが激ムズだったり、クローズしていたり、世界遺産スポットなのに情報がまったくなかったり。

このように、あげればキリがないのだが、一般的に観光客が”観光地”に求めるものは、まだ整備されていないのが現状だと思う。

「観光ビザを発給してんのに、観光スポットが開いてないってどういうことやねん!?ほんなら、観光客呼ぶなや」

たまたま発見した、シンガポール人旅行者が残したグーグルのレビューである。

まあ、確かにこの惨状を見れば、激おこプンプンになるのも分からなくはない。

サウジ旅行はとにかく不確定要素が多いのである。

人によって言っていることや、対応が違ったり。ウェブサイトの情報と現実が違ったり。グーグルマップに記載されている営業時間が、現実と大幅に違うこともしばしばである。

とりわけ、サウジで思ったのは、ハコだけは立派に見えるのだが、中身はちゃんと機能していないということである。そして、人だけはいるのだが、みんなよく分かってない。

立派な観光サイトがあっても、肝心の情報が抜けてたり。現地についてみたら、サイトとまったく違う現状が繰り広げられていたり。

現地でも、何が何やらでみんなが混乱しているという地獄絵図である。

そう、サウジにおいては、何も信じてはならないのである。

ネットや人の言うことは、あまり当てにならない。予定通りにだとか、絶対こうなるはず・・・という概念は捨てた方がいいだろう。

この国が、急激な変化の中にいることを考えれば、分からなくもない。よって、スムーズに観光をしたければ、数年は待った方がよいだろう。

ちなみに、ドバイがある隣国のUAEへ旅行する感覚でくると、痛い目にあう。

サウジは、10年前のドバイである。同じオイルマネーの国であり、近しい国とはいえ、両国は違う次元にあることを肝に命じておきたい。

ドバイではフィリピンやインドといった外部の人間が、観光業にたずさわっている。彼らはそれなりに勤労意欲も高く、サービス業のレベルも高い。

というのも、UAE人口に占める自国民の割合は2割程度で、その大半は公務員職についており、観光客と直に接することは少ない。

一方で、サウジは自国民の数が圧倒的に多い。他の湾岸諸国であれば、外国人労働者がやるようなサービス業なんかにも、積極的に進出している。

オイルマネーによるバラマキゆえか、自国民の多くはそれほど勤労意欲が高くない、と言われている。実際に、現地でもサウジ人をディスる外国人労働者もいた。

彼らは、非常におもてなしの精神が高いのだが、仕事となると、う〜んと思うところがある。もちろん、中にはちゃんとしている人もいるのだが。

スムーズに観光するならツアーにすべし

先の不確定要素が多いということに加え、サウジはとにかく国土が広い。それに車社会である。

一人旅行だと、移動にかなりお金がかかる場所もあるし、手配に手間がかかることもある。レンタカーを借りたらどんなに楽か、と何度か思った。

私は頻繁にツアーを利用するわけではないが、今回ばかしはツアーの方がいいかも、と思った。

なにせツアーだと、イベント中にしかオープンしていなかった、リヤドの名物スポット「ディルイーヤ遺跡」に行けたり、世界遺産マダイン・サーレハをカバーしているものが多い。

マダイン・サーレハ近辺は、辺境の地にある上に、アクセスがほぼない。個人でまわることは、鬼ムズである。

マダイン・サーレハのエレファントロック
マダイン・サーレハにあるエレファントロック。公共の交通機関やタクシーがないので、アクセスが困難。

サウジは、急激な変化の中にある。

数年前までは、モールや博物館の入場時間も男女で分けられていたし、未婚の男女が一緒に歩いていたら、「何やっとんねん」と警察沙汰である。

飲食店では、男女が交わらないようにと、男と女で注文窓口が分かれていた。

しかし、今ではそうしたものは、消えつつある。

一方で、まだ残る習慣もある。礼拝の度に店を閉めたり、観光地も含めて地元民の生活スタイルに合わせた営業時間になっていたり。

サウジが本格的に観光地化すれば、もっと観光しやすくなるのだろう。

けれども、それはサウジらしさを失うことでもある。

ヤンキーのごとくとんがっていた頃のサウジが好きだった人間にとっては、少し寂しいものがあるので、複雑だ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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