ドバイに出没する物乞いの特徴と遭遇した時の対処法

道を歩いていると、たまに物乞いに遭遇する。

決して、私がたかられやすい気質や見た目を持っているわけではない。

周りに聞いても、国籍にかかわらずたいていの人は、物乞い遭遇エピソードを1つや2つは持っている。ドバイでは、あるあるなのだ。

そんなわけで、ドバイに出没する物乞いの特徴と、物乞いに金をせびられた時の対処法を考えてみたい。

物乞いには2パターンある

大まかにわけて、物乞いには2つのパターンがいることを知らねばならない。

1つは、ビジネス目的で物乞いをする人。そして、困窮状態に追いやられて、お金を恵んで欲しい、という人である。

後者であれば、寛大な心を持って接すればいい。しかし、要注意なのが前者である。そして、ドバイによく出没するタイプも前者である。

カリスマホスト並みに稼ぐ物乞い

悲しいかな。人の善良を利用して、巧みに金を稼ぐ物乞いもいるのだ。彼らは、物乞いというよりも、道端の人にお金をせびることを生業とするビジネスライクな人々である。

イスラーム教では、貧しい人への施しが義務づけられている。しかも、UAEやクウェート、カタールといった、お金持ちが多い地域は、物乞いにとっては格好のターゲットである。

こうしたイスラーム教徒の良心を逆手にとって、一儲けしてやろう、という物乞いが後をたたないのである。

かつては、カリスマホスト並みの月収を稼ぐプロ物乞いなんかも存在したが、最近では取り締まりが厳しくなっている。

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悪意ある物乞いのアプローチ法

ドバイにおける物乞いの典型的アプローチは以下のようなものである。以下は、再現VTRだと思って読み進めていただきたい。

物乞い注1「あのう、すんません」
注1)その多くは、インドやパキスタンなどの南アジア系で20~30代の男性が多い。2人組のケースもある。

通行人A「なんや?」

物乞い「助けて欲しいんです。母親が病気注2になってしまって」
注2)もしくは自分が怪我した、お腹が減ったがお金がない、といったパターンがある。

己のリアルな傷をみせてきたり、薬の値段が書かれた手書きの処方箋などをチラ見せして、演出にこだわる本格的な演技派も存在する。

中には、自分が所有する四駆自動車の前で「ガソリン買うお金がなくて、お金恵んでくれない?」という、トンチンカンもいる。

通行人A「それは、大変やな」

物乞い「薬を買うのにお金が必要なんです。どうかお金を恵んでくれませんか」

さて。

ここからが、あなたの本領が試されるところである。渡した場合と渡さない場合の2パターンをみて、検証していこう。

お金を物乞いに渡した場合

善良な人間を演じたいあなたは、同情心から少しお金を渡すかもしれない。

それによって、多少なりとも「自分はいいことをしたんだぞ」という、気分を味わうことができる。

もしくは、純粋にほんの少しのお金で、人助けになれば、という気持ちもあるだろう。

実際にお金をあげるとどうなるのか。

通行人A 「それは大変やな。これ注3でがんばりい」
注3)請求額は、物乞いの設定によってさまざま。腹減った金ない系の場合は、300円〜。親族もしくは自分の病気怪我の場合は、1,000円〜1万円が相場。

物乞い「すんません。すんません。どうもありがとうございます」

物乞い「・・・。でもこれだけじゃ足りなくて。もうちょっともらえませんかね」

ここで用いられているのは、マーケティングにおけるクロスセル手法である。

アマゾンでいえば、商品を購入カートに追加したあとの「この商品を購入した人へのおすすめ商品」である。

すでに商品を購入した消費者に対して、他のものを購入してもらうのは、たやすい。

それと同様に、お金をくれた通行人に対しては、もう一押しすれば、追加売り上げが発生しやすいのである。

通行人A 「しゃーないなあ。もうちょっとあげるさかい、これで堪忍な」

物乞い「おお!ありがとうございます。あなたは一体どこの国からきたんですか?日本注4!?日本いい国!最高!どうもー」
注4)クロージング・トークはテンプレなので、どの国でも当てはまる

物乞いであっても、商売人であることをわきまえているのが特徴。カモという名の客に謝辞を述べ、気持ち良くなってもらうのがポイントである。

ちなみに物乞いたちは、フリーランスで活動している物乞いもいれば、組織に所属し、毎月の目標額が課せられているリーマン型の物乞いもいる。

本当にお金が必要な人かどうかを見極める方法

単にお金が欲しいだけなのか、本当にお金が必要なのかを見極める方法は、至極シンプルである。

薬を買うのにお金が必要→「ほな、一緒に薬局に買いにいこか。そこでお金だしたるわ」

ご飯を買うお金がない→「ほな、一緒にレストランいこか。美味しいもんおごったるで」もしくはレストランに連れて行き、レストランに直接お金を支払って帰るという方法もある。

だいたい、これをやると悪どい物乞いがあぶり出される。「え?それはちょっと・・・」といって、退散するからだ。

それ以外であれば、政府やNGO団体が主催するチャリティーを紹介したり、ドバイにおいては物乞い行為は違法なので「警察に通報したる」という好戦的な方法もある。

お金を渡しても渡さなくても、モヤっとする

本当にその人がお金を必要としているのか、悪意ある乞食なのか、を見極めることは難しい。

クロだと思っていても、目の前に生々しい傷口を見せつけられたり、目が純朴だったりすると、判断に困ることもある。

お金をあげてもあげなくとも、「あれは本当の物乞いだったのだろうか」と考え込んでしまう。

「帰りの電車賃がなくて。300円でもいいからもらえないだろうか」という、ベビーシッター面接に来たというフィリピン人女性や、手書きの履歴書を持ち歩いて、仕事を探しているナイジェリア人など。

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このように、中にはリアルそうな人々もいる。”リアルそう”というのは、結局、真実は闇の中だからだ。

ドバイよりもさらに物乞いに遭遇する機会が多いという、インドやパキスタンで修羅場をくぐってきたエキスパートたちは口をそろえてこういう。

「物乞いには直接お金をあげない。仮にお金をあげたとしても、それでお金がもらえるんだと思って、味をしめるだろ。そしたら、彼らはずっと物乞いを続けていく運命なんだ」

そして、中でも印象に残ったこの一言で、締めくくろう。

「本当にお金が必要な人は、道で堂々と物乞いなんかしないもんだ」

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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