カタールで入国拒否。ワクチン接種をしても海外移動のハードルは高かった

ワクチン接種をすれば行動が緩和されるし、海外旅行にもっと簡単に行けるはず。そう考えていた。いや、それは全人類の望みでもあったはずだ。

しかし、現実は甘くなった。ワクチン接種で海外移動がラクになるどころか、むしろ難易度が増しているのである。

この度、ライフサイクルの変更のため、再び日本を出てカタール経由でジョージアに行ったのだが、その時の顛末をお話ししたい。

海外移動はギャンブル

とにかく日本出発するまでが大変である。渡航先の入国要件を確認しなければいけないし、それに加え利用する航空会社の搭乗条件も確認しなければいけない。

航空会社によっては、搭乗に陰性証明書が必要だったり、ワクチン接種証明書があれば陰性証明書が不要だったり、はたまた渡航先の入国要件に合わせます!というものもある。要件が一定であれば、まだ助かるのだが、これまた山の天候みたいにころころと要件が変わるのである。

私が選んだのはカタール航空だったのだが、選んだ理由は入国先で陰性証明書が不要であれば、搭乗するのにも要らないという条件だったからだ。日本で陰性証明書をゲットするとなると、2万~4万円もかかる。PCR検査費用は世界で一定ではなく、国によっても違う。

エジプトやトルコで受けた時は、3~5千円程度だったので、いかに日本のPCR検査が高いかがわかる。それでおいて陰性証明書は、あまりありがたみがない紙切れ一枚である。紙切れ一枚に2万円以上と考えるとぼったくり感が否めないが、海外渡航者はほぼ必須なので、これに従うしかない。

このようにPCR検査代の負担が大きいため、渡航者であれば航空券が安いだけでなく、陰性証明がいるかも加味した上で、航空会社を選ぶことになる。というわけで、陰性証明不要のカタール航空を選んだのだが、渡航2日前になって突然要件が変更になった。

トランジットの場合でも、陰性証明書が必要となったのである。結局、ワクチンを接種したといえども、万が一のため結局は陰性証明書を持っていた方が身のためなのである。なにせ、証明書がなくて飛行機に乗れなかったら元も子もない。

さらに海外渡航者を待ち受けるのが、PCR検査による審判である。渡航数日前に受けるのだが、これで陽性であればすべてがパアである。よって、いかに感染しないよう徹底して善良な生活を送っていたとしても、PCR検査の結果が出るまでは、最後の審判のような気持ちになる。死後に、生前の行いにより地獄行きか天国行きかの判断を下される、ドキドキのあの瞬間だ。

さて、陰性証明ゲットという第1ステージをクリアしたら、次は飛行機に乗るという第2ステージが待っている。ワクチン接種率が高くなっているせいか、1年前と比べると空港にはかなり人がいた。それでも、免税店はほぼしまっており、空港はゴーストタウンと化しているし、全体的に見れば人はまばらであった。

搭乗手続きに1時間以上

搭乗手続きを終えるのに1時間ほどかかった。空港職員の方々も大変である。なにせバラバラの渡航先要件を参照して、搭乗者を乗せていいもんかを逐一判断しなければいけない。カタール航空のように乗り継ぎをメインとして乗り込む乗客が大半の場合、さらに大変である。最終目的地の国の数だけ、要件を頭に入れておかなければならない。

カタール航空は直前の変更により、陰性証明が必要となっていたが、空港のカウンターでは、ワクチン証明書だけでOKだった。それに、ワクチン証明があればジョージアへの事前の入国登録は不要なのだが、なぜか空港職員には登録証明書を見せてくれと言われた。どうやら公式の要件と現場は、必ずしも連動しているわけではないようだ。これも、海外移動を困難にさせる要因である。書いていることと現実にズレが生じているため、不要な手続きや書類であっても、万全を期してすべてをそろえなければいけないのである。

コロナ前は必ず目的地にいけた。しかしコロナ以降の海外移動には、もしかしたらいけないかも、という不確定要素が常につきまとう。これが、渡航者の大きな不安材料となり、ストレスともなる。

カタールで入国拒否

この度、ドーハでのトランジット時間が12時間もあったので、ドーハに舞い降りてストップオーバーしちゃお♪などと考えていた。ところが、カタールに入国するには、入国許可証が必要である。許可証をゲットするには、PCR検査の陰性証明書、ワクチン証明書、パスポートコピーなどを事前に専用ポータルにアップしなければならない。

PCR検査は渡航の72時間前に実施しなければならないので、申請もギリギリである。つまり直前にならないとカタールに入国できるかがわからない。果たして、そんな短時間で書類をチェックできるのか・・・という疑問を抱きつつ、すべての書類をそろえて申請。返信が返ってきたのは、すでにドーハ空港に着いた時だった。

結果は、書類不備のため入国許可証が下りず、であった。

必要な書類は全部そろえたのに!???というわけで、現地で交渉することにした。

が!

イミグレ手前で、空港職員に事情を説明したのだが、返ってきたのは意外な答えだった。

「入国許可証が下りてないんだったら、この先(イミグレ)は行かない方がいいわよ」

「いやーでも、ちゃんとワクチン証明書があるんですよ?」

「ワクチン証明書でもQRコードが付いてないと、ダメなんだよね〜。この国では受け付けられないの。前にも同じように言っている人がいたんだけど、イミグレでもめて強制送還になったよ。それでもいく?」

「強制送還にならないコツは・・・そうね。イミグレでダメと言われたら、すぐにこちらに引き返すこと。粘って押し問答になったら、強制送還の確率は高いわね」

強制送還!!???

入国拒否だけでなくて!!???

そう。カタールに入国するには、QRコード付きの陰性証明でなければダメなのだ。日本の証明書には残念ながらQRコードが付いていない。すなわち、それはワクチン証明書としての効力がない、単なる紙切れだということを意味した。少なくともカタールにおいては、だが。

ひえっ???

ワクチン証明書は水戸黄門の印籠じゃなかったのか?

これさえあればどこでも行けると思ったのに・・・

こうして交渉の余地は絶たれた。イミグレでカタール人と対峙するなどごめんだ。かつてドバイ空港で反逆的な態度をとり、「お前なんか入れてやんねえよ」と言わんばかりにもて遊ばれた経験を忘れるわけがない。(詳しくはこちらを参照:悪態をついてドバイ国際空港で入国拒否になる)。

そう、オイルマネーで回る湾岸諸国において、絶対にローカルのアラブ人にたてついてはならないのである。これは家訓にしておきたい。

「どう、あなた次第だけど?行くの・・・?」

この先には、災厄しかない。噛みつかないとわかっていても、誰がライオンに近づくものか。そんな気持ちだった。

「いや、やめときます・・・」

「そう。賢明な判断ね」

コロナ以前であれば、ドーハでのストップオーバーは気軽にできた。赤子の手をひねるぐらいに簡単な所作のはずであった。あの時は、いつでもいけるから♪などと考えていた。12時間もあれば、カタール航空によるストップオーバーツアーなども利用できた。

しかし、今やこのざまである。あれだけ観光客を受け入れていた国だが、今や入れるのは選ばれし人のみなのである。もはやパスポートの発行国など関係ないのだ。告れば絶対OKをもらえると思っていた相手に、拒絶されたような気分である。

えっ?今まではあんなに好意を寄せてるようなサイン見せてたじゃん・・・・

ジョージア入国はあっけなく終了

こうしてドーハ空港で12時間を過ごし(もはや空港に住んでいるような気分になってくる)、ジョージアの首都トビリシに到着。ワクチン証明をさっと見せて、パスポートにスタンプが押された。証明書にいたっては、もはやほぼノールックである。

ジョージア、入国完了

なにこのアメとムチ。

コロナ以前であれば、「日本出発してドーハでストップオーバーして、ジョージアに着きました」の1行ですむところが、もはやSASUKEのごとくあらゆるステージを突破した先にあるのが、入国完了というゴールである。これは日本への入国もしかりである。

ワクチンが流布する1年前は、コロナが流行していたとはいえ、今にして思えばもっと移動が楽だった。ワクチンさえ打てば、もっと自由に移動できる。その楽観的な展望は打ち砕かれ、もともとあったビザ要件に加え、PCR検査、搭乗要件、入国要件、書類フォーマットなど、海外移動は信じられないほどの労力を要するようになったのが現実である。

加えて、情報収集力も問われる。最新の情報にたどり着くソースを探し当て、渡航前日まで常に監視。ソースによって、情報が違うので、情報の判別力も必要となる。日本の外務省のサイトでも、情報が最新でないことがよくある。

私がメインで見ていたのは、入国先国の政府サイト、ツイッター(主に日本出国に関する情報収集のため。海外ではツイッターはほとんど使われていない)、トリップアドバイザー(海外旅行者のポータルがあり、かなり最新の情報が書かれているので役立った)。

もはややっていることが諜報員である。いや、諜報員にならなければ、入国完了というゴールは達成できないのである。

まさかこんな形で、海外移動がより困難になる世界がやってくるとは思ってもいなかった。もしかしたら、まだこの先に2番底があるのかもしれない。そんなことを予感させる今回の移動だった。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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