悪態をついてドバイ国際空港で入国拒否になる

アラブ警官に現行犯逮捕されそうになった事件により、ようやくこの出来事を書ける日がやってきた。半年以上前の出来事だが、あまりにも怒り狂いすぎて冷静に書けないと思い、機会が来るまでしたためておこうと思っていた。がどうやら今日がその日らしい。

まさかこんなことが自分の身におこるとは思ってなかった。こんなことなら、自分のイライラも押し殺してでもにこやかに普通に振舞うべきだったと思う。

ただでさえてへぺろなアラブが怒り出すとその怒りも全く不条理で、幼稚染みていた。そこでようやく思い出す。私が今話しているのは、話がわかるやつではなくて、別のシステムに生きている全く理解しがたい人間なのだと。

これは、その当時残していたメモからの抜粋である。当時の私は、いろいろあってドバイでニート中であり、ソマリアから無事帰還しヘトヘトになりながらこのドバイ国際空港第2ターミナルの入国審査の列にいた。

いつもの長い列。いっこうにハケの悪い列に、私のイライラは入国審査官に向けられていた。こんなに長い列があるのに、隣としゃべりながらたらたらと審査をする審査官たちに。

ようやく順番が来たかと思い、パスポートを審査台の上に出す。しかし、審査官はそれを受け取ろうともせずに、自分の手に置けといってくる。それにカチンときた私は、半ば投げるようにパスポートを手に向けて放った。

それが運の尽きであり、ガキの使いでいうところの「田中、タイキック」のお仕置きの始まり(知らない人は年末のガキの使いを見よう)だった。

デデーン!アウト!

ということで、「向こうのオフィスへ行け!」と審査官に手続きを拒否される。え?手続きしてくんないの?と若干焦りはあるものの、怒りの方がまさり審査の列を離れ、オフィスがありそうな場所へいく。まだブチキレしていた私は、オフィス内にいたUAE人に

”Where is the fucking office?”

といってしまったのだ。

ここでさらに第2の地雷を踏んだのである。

Fワードと呼ばれる、英語の罵倒用語(この場合は”Fucking”ですね)を使ったことによりUAE人の怒りを買うことになったのだ。

「あ?お前今なんつった?」

とそのキレ具合は、もはや空港の職員ではなくヤクザのような口調である。

なんで英語そんなにできないのに、Fワードだけは敏感に反応するんだよと思うと同時に、アメリカのドラマで普通に使っているからといって日常生活で使うとこんな落とし穴があるとは。もはや放送禁止用語にしてくれよ、というどーでもいいことが頭をよぎる。

それにより「警察を呼ぶ」と言われ、パスポートをむしり取られ、「お前UAEでそんなことするとどうなるかわかってんのか?ここで働けなくなるんだぞ」と脅されたのだ。もはや教養のある大人の発言ではない。

さすがにこれはやべえと気づき、謝ったもののすでに時遅し。パスポートをうばいとったまま、「これからお前の処遇について話し合う」といわれオフィスの外で待たされ、放置プレイが始まる。

1時間待てど何もない。

日本の大使館に助けを請うにしてもオフィスは閉まっている時間帯だ。

ただでさえ、ニートで精神不安定だし、ソマリアからせっかく帰ってきたのに、UAEの方がソマリアよりも怖い・・・・これから一体どうなるんだ。人生で初めての危機らしい危機だとその時は思った。

そんなことを考えていると、さらに今まで苦労してきた思い出がよみがえり一人泣けてくる。そんな泣きが効果があったのか、ようやくオフィスから出てきた役人が、「おまえ、もういっていいぞ」といわれ、あっさり釈放された。

この一件により、この国では絶対逆らってはいけない王者がいるのだということを。そして王者の怒りに触れたらどうなるのかということも。

それ以来、私が空港を利用する際には、必ず女性のレーンを選ぶようにしている(女性の方が温厚な感じがするため)。選べなかった場合には、能面に微笑みを少々振りかけた感じで頭をからっぽにして審査を受けている。すべては空港職員のトラウマとあの過ちを繰り返さないためだ。

あの時の私は、とにかく試練ばかりでいつも必死だった。だからといって言い訳はできないが、自分でも驚くぐらいにささいなことでもイライラし、怒りっぽくなっていたことのだと思う。箸が落ちてもおかしい年頃ならぬ、箸が落ちても怒る時期だったのである。

この一件で、怒りがどんな悲劇を起こしうるのかということも分かったし、イライラしていては悪いことしか起こらないのだということも。それ以降は、とりあえず日本にいる以上に「笑顔」は心がけているようにしている。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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