おいしい馬肉が食べたくて。中央アジアの馬肉料理「ベシュパルマック」

美味い料理って何だろう。

人によって美味さの定義は様々だろうが、ここ最近の私の「美味い」の定義は、食べた翌日やその後も美味しかったなあ。また食べたいなあという料理がそれにあたる。

病みつきになりそう・・・中央アジアの味を求めて

食べたその場で美味い料理は、たくさんある。ただ、翌日もそのまた翌日もまたあの店に行ってみたいなあと思うことは少ない。

そんな「美味いなあ」の体験を久しぶりにしたのが、ウズベキスタン料理屋である。以前に行ってから、また行きたいなあと思いつつ1週間後の再訪である。


刺繍をこらしたインテリアが特徴

中でも気になっていたのが、馬肉を使った料理。もともと遊牧民が多く暮らしており、牧畜が盛んなカザフスタンやウズベキスタンでは一般的な料理だという。

クジラ肉や馬刺し好きとしては、食べてみたいじゃないか。

店を訪れたのは週末の昼下がり。店に入るとあのファンシーな空間が出迎えてくれる。今日の目的は、馬肉と決めておいたのでとりあえず馬肉料理を探す。

メニューは、写真付きなのがありがたい。若干、オーセンティックさは失われるが、それでも外国人が多いドバイならではの配慮だろう。

ぬ?

結構バラエティがあるのだ。馬肉オンリーのものから、「ナリン」と呼ばれるもやしのような麺と細切れの馬肉を合わせたもの。大きめの馬肉と細切れの馬肉を合わせた料理もある。悩んだ結果、2種の馬肉が味わえそうな「ベシュパルマック」をチョイス。

ツンデレなロシア系店員たち

外が暑かったので、付け合せとして「冬のサラダ」を注文。完全に名前だけでチョイス。そもそもドバイには冬らしい冬なんてないし、冬の〜と来ればソナタぐらいである。だからどうした、という話だが。

しかし、先ほどからどうも店員たちにツンデレさを感じてならない。ドバイの飲食店といえば、だいたいフィリピン人がウェイターを担当しているのだが、ここは皆現地からやってきた男どもである。

ロシア圏の人々はあまり感情を表に出したり、愛想笑いをしないと聞いたことがある。下手にこびなんて売らない・・・ということか。英語はなんとか通じるものの、どうにもロシア語が出てしまうらしい。

フィリピン人たちの「ハ〜イ、マダム〜」という馴れ馴れしい接客と比べると、目の前の店員たちの塩対応ぶりが際立つ。フィリピン人の接客が太陽の接客だとすると、ロシア圏の人々の接客は北風である。

新しい組み合わせだけど、どこか懐かしい味

そんなことを考えていると、「冬のサラダ」が到着。

マヨネーズで和えたサラダらしい。普段はマヨネーズなど口にしないので、甘ったるい感じかなあ・・・と思いきや、裏切らない抜群の安定感。

何これ。

ピクルス、マッシュルーム、鶏肉、牛タンにマヨネーズを当えて、カリッカリの玉ねぎをそえたトッピングしたもの。全く身に覚えがない組み合わせだが、どこか懐かしい。

まるでカザフスタンの人々のよう。ロシア語やカザフ語を話す彼らと我々はまったく違う。けれども、どこか我々に近しい風貌を感じさせるのだ。

日本の定食屋に普通にまぎれいてもおかしくない。店主のオリジナルな一品ですよ〜なんて澄まし顔を決められる。ぜひ日本食への入団をすすめたいぐらいである。

どうやって食べるのコレ?食べ方がわからない馬肉料理

続いてメインの2種の馬肉を使った麺料理、「ベシュパルマック」。カザフスタンやキルギスタンといった中央アジアで食べられている料理である。

新種現る

といったタイトルでもつけられそうだ。写真を見る限り、パスタに近い料理なのかと思いきや、まるでUFOのごとく円形に盛り付けられた馬肉&麺料理である。

中央に鎮座するのは、馬肉と青ネギと玉ねぎ。このセットは絶対美味いに決まっているだろ、と脳が勝手に結論を弾き出す。たぶん、似たような日本料理を食べたことがあるからだろう。

見たこともない麺料理に面を食らいながら(ダジャレではない)、どうやって食べるのか・・・と思案する。なにせ麺なのだが、形が「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる一反もんめなのだ。そんな一反もんめが幾重にも重なり、スープに浸っている状態。

なぜ麺を一反もんめスタイルにしたのかが謎である。結構、食べにくいのに。

フォークを使ってみるものの、なんか食べづらい。日本人としては箸を使いたいところである。

のちに調べてみると、「ベシュパルマック」のベシュは5、パルマックは指を意味するそうで、5本の指で食べていたことが由来になったそうな。正解の食べ方は手づかみだったか。

気になる馬肉のお味。バゲットのようにそえられた馬肉からいってみよう。


丸い形をしたカズィ

腸詰して塩漬けにされたと見られる、この「カズィ」と呼ばれる馬肉。牛肉や鶏肉と違ってあっさりしている。塩気も効いていて、お供になりそうな赤ワインがぼやっとみえてくる。

一方の細切れになった馬肉。トロトロと溶けて柔らかい。しかも馬肉の味が一反もんめを浸すスープにしっかりとしみ込んでいる。

馬肉の新たなポテンシャル、見つけてしまったかもしれない。

気づけば額に汗がにじんていた。涼むつもりが、あったかい料理で体があったまってしまったらしい。会計を終えて店を出ようとする。

「スパシーバ」

頑なにロシア語で貫きたい店員の一言は、もはや北風ではなく日向ぼっこのような心地よさだった。