食べ物がない!?パキスタンのラマダンが辛い

ラマダンと一口に言っても国によってその光景はさまざま。パキスタンではそんなことを思い知らされた。

ラマダンについては下記の記事を参照。
3分でわかるラマダン!断食するのに太る?水は飲める?知られざるラマダンのルールとは
ラマダンで垣間見えたドバイの別の顔
ラマダン24時。断食中の人々の1日の過ごし方
イフタールとは?断食するラマダンで太る理由は豪華な食事にあった!?

半強制的に断食

ラマダン中多くの飲食店は、日没まで閉まっている。しかし、非ムスリムも暮らすドバイでは、断食をしない人にも考慮して、日中でも営業をするカフェなどがちらほらあった。年々、ラマダンに関する規制も緩くなり、日中でも営業をする店も増えていった。

しかし、パキスタンでは外国人はほぼいない上、国民の97%がムスリムという国である。非ムスリムへの恩赦などはない。もはや2億総断食である。従来の規定通り、ほぼ全ての飲食店が閉まっている。頼みの綱であった中華料理屋もやっていない。

フードパンダ(ウーバーイーツみたいなもん)で食事を頼もうにも、オーダー可能な店は5件ぐらいしかなく、そのほとんどがケーキやパンといった軽食である。人口1,700万人の都市だというのに・・・多くの店が開くのは、日没前の17時から18時半にかけてである。

周りも全員ムスリムのため、人前や公共の場で、飲み食いすることははばかれる。よって、半強制的に断食をすることになる。夕方まで我慢すればいいだけの話なのだが、これが結構辛い。

「今日朝から何も食べてなかったわー」という日もあるが、あえて食べないのと、食べたい時にご飯がない、という悲しさは別物である。

ラマダンで嬉しいこと

一方で、カラチで過ごすラマダンならではの嬉しさもある。ラマダン中は、飲食店も含め多くの店が閉まっている。よって、車や人通りもグンと減る。

そのせいか、町はいつもより静かで、空気が綺麗になっているようにさえ感じた。大気汚染と騒音に悩まされる身としては、嬉しい限りである。

本来であれば、ラマダン限定スイーツやイフタールが、ラマダンの楽しいことランキングに入るのだが、カラチでは別である。綺麗な空気に勝るものはない。

断食をしない人

異教徒からすれば、ラマダン=ムスリム全員が1ヶ月断食生活をしている、と思うかもしれない。しかし、断食をしなくてもいい例外はいくつかある。

例えば、妊娠中の女性や子どもは対象外。また、生理期間中や風邪を引いている場合も免除。また力仕事をしている人や、やむなく体力を使う必要がある場合も、断食をスキップすることができる。健康かつ断食に適した条件になって、初めて断食ができるのである。

上記のような理由で、一時的に断食をしていない現地の友人たちには助けられた。ラマダン中、ムスリムは体力を消費しないように、日中は省エネ生活を送る。また、飲み食いしていないので、意識もぼーっとしている。どこかへ一緒に出かけるにしても、彼らが食事をとりエネルギーチャージを終える、夜まで待たなければいけないのである。

断食をしていないとなると、日中でも一緒に外に出かけられる。それぐらい1人でいったらどうよ?と思われるかもしれない。というか、私だって行けるもんなら1人で動きたい。

しかし、カラチでは安全のため常にジモティーと一緒に行け!と口すっぱく言われる。そのため、彼らのスケジュールに合わせて、行動しなければならないことがよくあるのだ。

また、食事に困った時に助けられたのが、エアビーホストのアルシャドである。彼は私が住んでいる隣の部屋に、93歳の母親と一緒に住んでいる。彼自身も高齢で糖尿病を患っているということもあり、断食をしていない。

ラマダン中にも関わらず、「魚、今日も作ったから食べんさい」と、ご飯をくれた時は、ただ感謝しかなかった。

断食を免除されている身とはいえ、野放しに喜ぶことはできない。なにせ周りはほとんど断食をしているからである。彼らにとっても、日中の飲食はどこか気まずいものがあるという。

カラチのラマダン風景

ゴーストタウンと化していた町は、日没が近くなると活気づいていく。イフタール(断食明けの食事)の時間に間に合わせようと、無理な運転をする車も多くなる。そりゃそうだ。やっと飲み食いできるんだもの。

日没時に車に乗っていると、路上を歩く男性の姿があった。物乞いにしては、身なりが良すぎる、と思っていたら、彼が配っていたのはデーツだった。それを1粒ずつ運転手たちに渡している。また他のところでは、別の男性がペットボトルの水を配っている。

どこかの企業や団体の差し金ではなさそうである。となれば、個人でやっているのだろう。

パキスタンのラマダン
深夜近くのカラチ。ラマダン中は夜遅くまで飲食店や屋台に明かりがついている。人通りが少ない道路では、深夜3時にも関わらずクリケットをする人々の姿も。

ドバイでもイフタールセットと称して、軽食やジュースをセットにしてを配ることがあるが、いずれにしても企業や政府の慈善活動だったりする。

またドバイのラマダンでは風物詩になっているイフタールディナー。ラマダン限定のブッフェ形式メニューである。

ラマダンで日中の売り上げが落ちるためか、高級ホテルのレストランも含め、多くのレストランがこのイフタールディナーを実施している。以前に勤務していた会社では、ブルガリホテルでイフタールディナーを食べよう☆というイベントが実施されていた。といっても私はブルガリの名前にビビり、参加しなかったのだが。

というわけでイフタール=豪華な食事、みんなとワイワイするもの、と思い込んでいた。しかし、友人のイフタールにお呼ばれすると、その落差にビビった。薄暗い部屋で静かにポソポソといただく食事は、まるで最後の晩餐である。

彼女いわく、イフタールとディナーは別物だという。イフタールは断食明け直後の食事で簡単に食べるもの。そしてディナーはその後ガッツリ食べるもの、というのが彼女の認識だった。


会員制クラブの敷地内でのイフタールディナー。席について日没の時間帯まで待っている。お金がある中間層はこうした場所で食べたりする。

もちろんカラチでも、一部レストランや公共クラブでは、ブッフェ形式のイフタールが振舞われる場所もある。一方で路上のあちこちでは、路上にシートをひいて30人ほどがそこに座り、簡単な食事をとっている光景もよく見かけた。

カラチのラマダン風景をみて思うのは、ドバイのラマダン風景はかなり商業化されたものだったんだなあということだった。

素朴でつつましやかなラマダンの光景が、カラチにはあった。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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