パキスタン初の地下鉄「オレンジライン」に乗ってみた

人口2億人が暮らすと言う国だと言うのに、パキスタンには、”公式”な公共交通機関というものがない。

あるのは、車、バイク、リキシャ、どこへ行くのかよくわからないバス等である。

しかし、ラホールには中国が作ったパキスタン初の地下鉄があるという。なぜ最大都市カラチではなくて、ラホールにあるのかは謎である。日本で言えば、東京ではなく京都に地下鉄を設置するようなもんだからだ。

地下鉄に乗ろうとしたはいいものの、地下鉄の駅にたどり着くまでが地獄だった。

グーグルマップで検索すると、メトロの”M”マークが出てくる。常識的に考えれば、M=地下鉄の駅であるはずだ。ところがあったのは、バス専用の高速道路だった。駅っぽい建物はどこにもない。

は?

どう言うわけか、パキスタンではM=バスの専用の降車場となっているらしい。肝心のメトロはどこなのか、と係員に尋ねるとすぐ近くにあるという。

バス乗り場から歩くこと、10分。係員に言われた通りの場所に、確かに駅はあった。

が!

駅にたどり着くまでに、4車線ぐらいの道路を2回横断しなければならないのである。通常の道路横断というのは慣れれば簡単なのだが、パキスタンの道路横断は厄介である。なぜならちょこまかと動くバイクが多いからである。


遠くに見える白い建物がメトロ。車の往来が激しい道路を歩いてメトロへ向かう

そう、ここではバイクにひかれる覚悟でメトロにたどりつかねばならない。パキスタンではやることいちいちに、度胸が試されるクエストが発生する。


あともう一息でメトロ!

ひかれそうになりながら、なんとか駅へたどりつく。

そこに広がっていたのは、近未来の世界だった。

チケットブースで片道分の40ルピーを支払う。切符の代わりとなるトークンを受け取り、改札機にかざせば、あら不思議。駅構内へ入れてしまうのである。


チケット売り場


カードではなくトークンをタッチ

プラットフォームに着くと、電車が自動でやってくる。乗客は電車に乗り、目的の駅で降りればいい。乗り心地はゆりかもめ線とほとんど遜色がない。


プラットフォームへの階段。ゴミがない。綺麗


日本が手がけたドバイメトロとほとんど遜色ない。というかクリソツである。


女性専用車両だが男性ものっている


電車からの光景。享受してるシステムと世界観が違いすぎる


メトロ駅マップ。行き先不明のバスやリキシャが跋扈している世界からすると、なんともありがたい


駅のプラットフォーム。下手したら日本の田舎よりも発展している


やはり近代的なメトロは、パキスタンの街では浮いている

駅に降り立った瞬間、私は感極まり泣き崩れそうになった。

未来!システマチック!

何も考えずただ乗るだけで、目的地に着くメトロってなんと素晴らしい乗り物なのだろう、と。

たった10分前まで私がいた世界は、魑魅魍魎が跋扈する混沌の世界だった。

行きたい場所があれば、その辺のリキシャをつかまえて、大声で目的地を叫ぶ。騒音だらけなので、小さな声では伝わらない。そして値段交渉。

リキシャに乗れば安心というわけでもない。運ちゃんが場所をよくわかっていないケースもあるので、Google Mapにアクセスできる私がナビゲーターをつとめる。

途中、エンジンが切れたとか、なんだとか行って停車したり、知らん奴が乗り込んできたりする。リキシャは基本オープンドアなので、熱気と排気ガスとホコリまみれになる。

値段表なるものは存在しないので、外国人は基本的に現地人より高めの金額を請求される。この所作をぼったくりと呼ぶ人もいる。よって時々、「私ってぼったくられているのかしらん」という疑念にかられる。

こうして一連のプロセスと切ない感情を経て、目的地にたどり着くのである。

世界観違いすぎるダロ!

パキスタンにメトロ。言うなれば日本の戦後の世界に、ゆりかもめ線があるようなもんである。

混沌の世界に整然をもたらす中国のシステム。パキスタンで中国人気が高い理由もうなずける。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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