パキスタンでSIMカードを取得しようとしたら悲惨なことになった

1週間と大の大人3人。パキスタンでSIMカードを取得するのにかかった労力である。

他の国であれば、3行ぐらいで終わる所業がなぜかここパキスタンでは、1週間単位の大型プロジェクトとなってしまった。

パキスタンのSIMカード取得は、ちょっと変わっている。

・外国人がSIMカードを取得する場合、フランチャイズもしくはカスタマーサービス店と呼ばれる店舗に行かなければならない

・日曜日は店は閉まっている

・ショッピングモールなどの大型店舗には、SIMカード販売所がなく、その辺の露店みたいな店で買う

・メガトン都市カラチとはいえ、外国人がSIMカードをゲットできる店は、関東圏におけるイケア店舗ぐらいの数しかない

・海外から持ち込んだスマホを使用する場合、デバイスを登録する必要がある←ここ重要

そう、とにかく生活必需品であるSIMカードをゲットするのも、一苦労なのである。

パキスタンに人生で一回しか行かない!という人であれば、ことはもっと容易である。パスポートとビザを見せれば、数時間後にはネットが使えるようになる。

しかし、ネックとなるデバイス登録でつまづくと大変なことになる。パキスタンでは、パキスタン以外で購入したスマホを持ち込む場合、PTAと呼ばれるパキスタン通信局にデバイスを登録しなければならない。手続きについては、こちらのブログに詳しい。あとで気づいたが、在パキスタン大使館もちゃんと喚起していた

SIMカード取得がこれだけ困難を極めたのは、私のスマホがPTAによってブロックされてしまったからなのである。

は?

通常であれば、この文章は意味不明である。スマホがブロックされる、PTAという見慣れない文字が出てくる上に、個人のスマホが国の通信局によって使用停止されるという、他の国では起こりえない現象だからである。

簡単にいうと、踏んではいけない地雷を踏んでしまったのである。

そんなことを知る由もなく、SIMカード屋に出向いた。2時間後に使えるようになるから、確認のためここに電話して、と言われる。しかし、SIMはうんともすんとも言わない上、カスタマーサービスにも電話がつながらない。

というわけで、ローカルの友人を引き連れ、再びSIM屋に出直す。

そこで初めて、「あ~たのスマホ、ブロックされているじゃない」と宣告された。

そうデバイス登録は、パキスタンに来て2ヶ月以内に行わないと、スマホがブロックされ使えなくなるという結末を迎える。前回の渡航で、この作業を怠り、私のスマホはブロックされていたのである。しかし、なぜ私のスマホが2ヶ月前にパキスタンにいたということを通信局が把握しているのだろう・・・

ブロックされたスマホを使いたいなら、持ち込み料である税金を払わなければならないと言われた。

請求された額はなんと、300ドル(約35,000円)。

あんた、バカ言ってんじゃないよ。スマホを使うために、なんで3万円も払わにゃいけんのじゃ。

「それが嫌なら、現地のスマホを買うしかないね。パキスタンで販売されているスマホなら既に登録済みだから、ブロックされることはないよ」

同行してくれた友人は「それなら、PTAに言って直接嘆願してやる!」とのたまう。事情を話せば、税金免除になると考えたようだ。

さらに友人は、「こういうシステムがあると、パキスタンに旅行者が来にくくなるだろ!」と、外国人旅行者当人でもないのに、怒りを代弁していた。

しかし、考えてみてほしい。たかがSIMカードを使うために、通信局と戦うとか、現地で新しいスマホを買うという選択しかないのか。

頭の整理が追いつかず、私は無の感情で空を仰いだ。

結局、モバイルルーターを買うということで、ネット問題は収束した。65ギガプランとルーター代で合計3,000円程度である。現金のみの受付ということで、手持ちの現金(現金を下ろすのもここでは一苦労なのである)がないため、友人にお金を借りるはめとなった。

しかし、ルーターならではの問題もあった。ルーターの充電が切れれば、ネットが使えない。パキスタン現地の電話番号がない、という問題である。ただWi-Fiをゲットできたという大きな目標達成したため、しょうがないかという妥協により他の諸問題は丸め込まれた。

それから1週間後。

「最初に買ったSIM使ってないんだったら、うちのスマホで使えるか試してみていい?」

そう。すでに1ヶ月プランのSIMを買っていたのだった。スマホがブロックされたいま、単なるゴミとなっていたのだが、友人が使ってくれるならせめてもの救いである。

「あ、やっぱりうちのスマホだと使えるねえ。ま、今はいらんから返しとくわ」

返してもらったところで、私のブロックされたスマホでは使えないんだけどね・・・

と思いながら、先のSIMを自分のスマホに戻した。

「あ、使えるようになってるじゃん・・・」

は?

は?

は?

説明しよう。パキスタンで登録済みのスマホにSIMを挿入。それによりSIMがアクティベートされる。アクティベートされたSIMを挿入すると、ブロックされたスマホでもSIMが使えるようになる、という仕組みだったのだ。

完全なる裏技である。

ポケモンの裏技を見つけたような嬉しさがこみ上げてきた。

せっかくなので、初電話をしてみようと、その辺にいたクラスメイトに電話をかけてみる。

が!

コロナワクチンを打ってくださいね〜とかいうCM音声が流れたのち、電話が繋がった。

は?

電話にCMを挟み込んでくるとは一体・・・

わけがわからん。

多くの人にとっては、不可解で意味不明な現象だろうけども、パキスタンを訪れた人間ならば、一度はこうした感情に遭遇するだろう。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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