旅行者は注意!パキスタンで詐欺にあう

この記事を読んでいる人の中には、自分は絶対詐欺になんか合わない、と思っている人もいるだろう。かく言う私も、数ヶ月前まではその1人であった。

有名観光スポットで発生した詐欺の実態

事の発端は、ガンダーラの最大都市遺跡としても知られるタキシラに行った時のことである。首都イスラマバードからは車で1時間。熱心な仏教徒を含め、国外からも多くの観光客が多く訪れる。

パキスタンの観光スポットでは、各所に専任のガイドがいて、あれこれと説明してくれる。タキシラに行った時もそうだった。ガイドは、丁寧に遺跡について説明してくれる。なるほどなー、すごいなーなどと感心しているのも束の間、別の話題へと入った時だった。

「あそこに大きな空き地が見えるだろ。あそこではまだ遺跡の発掘が行われているんだ。時々、俺みたいなジモティーもあそこへいくんだが、古いコインが見つかるんだぜ」

といって、ガイドはいくつかの古びたコインを見せてきた。

「これは古代ギリシャのコイン、アレクサンドロス大王の時代のコイン、古代ヒンドゥー教のコイン・・・どれも本物だから価値があるものなんだ」

おお!さっき博物館で見たようなコインじゃないか!本物だったらすごい!

ロマンある歴史ワードに、私はすっかりと信じ込んでいた。

「特別に売ってあげるよ」

それから値段交渉が始まった。とはいえ、それらが本物だと信じているわけではなかった。けれども、本物だったらいいなあ、と言う思いはあった。

結果的に、15,000ルピー(約3,500円)から始まった交渉は、コイン5枚で20,000ルピー(14,000円)に終わった。

タキシラコイン
ガイドから渡されたコイン

今にして思えば、自分もバカだよなあと思う。

なにせ、「このことは絶対誰にも言うなよ。内緒だかんな」なんて言う、怪しい発言をしていたのだから。こんなわかりやすいヒントがあったのに、気づかなかった自分を殴ってやりたい。

とはいえ、フライトの時間も迫っていたので、少々焦っていた。本物じゃないよなーとも思いつつ、帰りの車で調べたら案の定であった。

地元メディアの記事には、「遺跡近辺では無知な観光客を狙って、偽物のコインを本物として売りつける行為が横行している」などと書かれていた。

くそう。やっぱりやられた。

無知な観光客!

模造品と言ってくれれば、気持ちよくお土産として買えたのだが、本物だと偽って高額のせしめるのは、詐欺である。

かつてエジプトでも、ヨーロッパ人観光客がミイラをお土産に購入していくので、偽ミイラが横行したという話を思い出した。

インドの詐欺に比べれば、赤子みたいにかわいいもんである。それに、大した金額ではない(しかしパキスタンでは大金)ので寄付だと思えばいい。しかし、騙された自分が許せない上に、今後もあいつはこうした詐欺を続けていくのか、と思うと怒り爆発である。

インド詐欺に調べてみると、やり手の詐欺の特徴として「真実と嘘を混ぜて話す」とあった。

そうだよなあ、普通は観光ガイドが詐欺をするなんて思わないもんなあ。それまで真っ当に観光ガイドをしてくれた人間が、詐欺をするなんて思いもしない。そうした心理や状況を巧みに利用したのだろう。

ちなみにドバイにいた時も同じような被害にあっていた。

だまされた!日本の自転車を売りつける狡猾な手口を参照。

しかし、2つの件に関して言えるのは、あれは詐欺だったのかも?というもやっとした点である。大金をふんだくられるという、イメージ通りの詐欺ではない。

嘘と真実を混ぜることで相手を納得させ、被害者が納得して、自らお金を支払うように仕向けているのである。これにより、だまし取ったというよりも、被害者が納得してお金を払ったという構図が生まれるのである。

見せしめに逮捕された青年

調べてみるとYouTube上には、パキスタン旅行者による動画が結構上がっている。その中には、パキスタンではこいつを信じるな!だとかパキスタン旅行中はこいつに注意などと題し、旅行中のトラブルを撮影したものもある。

そのうちの1つの動画がバズりまくっていた。オーストラリア人旅行者によるVlogで、再生回数は400万回以上。カラチのビーチで馬に乗ったが、初めは200ルピーと言われたのに、3,000ルピーを請求されたというものだった。旅行者は憤慨しながらも500ルピーを渡す。しかし、馬を引く青年は3,000ルピーじゃないと受け取らないという。

困った挙句、旅行者はその辺にいたジモティーに助けを求める。旅行者は、「請求された額を払うと、同じよう被害にあう旅行者が今後出るかもしれない」ということで、頑なに3,000ルピーを払うことを拒んだ。結果的に、ジモティーが青年に1,000ルピーを支払うことで、事態は収まったかのように思えた。

しかし、1ヶ月もしないうちに、馬を引く青年が逮捕された。ニュース映像には、拘置所のような場所でむせび泣く青年の姿が映し出されていた。

まじかYo

動画コメントには、真っ当な判断だ、パキスタン警察よくやった!という意見が多数。同時期に詐欺被害にあった人間としては、なんだか胸がすくような思いもしたが、それも一瞬。

やりすぎじゃね?

悪さをしたとは言え、旅行者の何気ない動画1つで、他人の人生を大きく変えてしまったのだ。しかも悪い方向に。むしろそっちの方が恐ろしい。

ニュースを知ってか知らずか、彼はそのことについて言及した動画はあげておらず、別の国での旅動画をアップし続けている。

というわけで、詐欺に注意というよりも、自分は詐欺にあわないという慢心に注意されたし。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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