パキスタンでシェアNo.1の意外な日本車メーカーとは?

ラマダン中というのは、一般的に消費意欲が上がるため、企業が広告に力を入れる時期である。ラマダン期間中は、仕事や学校の時間が短縮され、人々は日没まで家で静かに過ごす。また、寄付などの慈善活動が活発になる。通常以上に、市民のお金が動きやすいのだ。

ラマダンというイスラーム教ならではのイベントということもあり、企業はムスリムに刺さるキャッチコピーやテーマをあれこれと考える。

ラマダン中のカラチで見かけたのは、KFCやマクドナルド、ドミノピザと言ったグローバルブランド。ラマダン以前は、現地企業の広告もちらほらあったが、広告にかける資金力のせいか軒並み追いやられている。

そう、ラマダンはある意味で企業の広告合戦の場でもあるのだ。


KFCのラマダン広告。イフタールを大事な人とシェアしましょう、というキャッチコピーがついている。

その一方でビビったのが、カラチの町にデカデカと現れたスズキの広告。新製品のSWIFTを紹介する広告となっている。

パキスタンスズキの広告
車の多さで見えにくいが、デカデカとしたスズキの広告。車社会のカラチでは、広告も車を運転していても見やすいように、特大サイズとなっている。

え、なんでスズキ?

正直いうと、日本車メーカーと言われてスズキはパッと思い浮かばない。

日本でもあんまり広告をやっているイメージはないし、ラマダン中のドバイといえば、日産やトヨタの広告を見かけることが多かった。

それもそのはず。公式サイトによれば、スズキはインド、パキスタン、ブータン、ネパールといった国で存在感を発揮しており、シェアNo.1を獲得している。

パキスタンにおける日本車のシェアはなんと95%。その中でもスズキのシェアは30%近くあり、日本車メーカーでは、トヨタを抑えてトップである。

価格はもちろんだが、スズキが人気の理由の1つに、自動車部品の手の入りやすさがあるという。

実際に現地の知人もスズキに乗っている。エンジンが壊れたからといって、度々修理に出したり、交換部品がなかなか見つからないといって嘆いていた。2ヶ月近く経ってようやく、車に合う部品が見つかった!というのでよく聞いてみると、イスラマバードにしかないという。

商業の町カラチになくて、政治の町イスラマバードにあるのはどういうことか。部品はアフガニスタンから輸入されたものだという。確かにアフガニスタン国境からだと、イスラマバードの方が近い。

1,400キロ離れたイスラマバードへ、車で2日かけて行くと彼は言った。その上、ルピーが下落しており、輸入エンジンの値段の高さを彼は嘆いていた。

新しい車を買った方が早いんじゃ・・・と思うが、そうした潤沢な資金を持つ国民は少ない。彼はパキスタンの中間層だが、このように壊れては部品を直してと、かれこれ10年以上同じ車に乗っている。つまりこの国では、多くの人が彼のようなプロセスをたどっていると思われる。

確かにカラチで見かける車は、先進国では見たことがない古いモデルな上、オンボロだったりする。私は車を持っていないので、カリームを利用しているが、ドアが壊れてたり、外は40度近いのにクーラーがない車もよくある。そのほとんどが軽自動車である。先進国にあるような綺麗な普通車に乗る機会は、ほとんどない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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