なぜイスラム教徒たちは1ヶ月間断食をするのか?聞いてみた

ラマダンの最初の数日は辛い。

昼間は何も口にしないので、息も絶え絶え。日没後にようやく飲食ができて元気になったかと思えば、明日に備えて3~4時間後には寝なくてはならない。


すなわち、1日のうちで”生”を楽しむできる時間が、数時間しかないのである。

いくら就業時間が早くなろうとも、実際に活動できる時間は、断食者にとっては短縮される。泣く泣く、楽しい時間を削りいつも通りに寝て、健全な生活を送るか、夜更かしをして睡眠不足になり、グロッキーになりながら仕事をするか、という2択を迫られるのである。

一方で敬虔な人々は、断食明けの食事をとって、モスクに向かい深夜遅くまで祈りに励んでいる。これじゃあ、趣味の時間もへったくれもない。

そこで考えた。

なんで断食なんかやるんだろう、と。そりゃあ、イスラム教徒の義務かもしれないけど、こんなに辛いんだったら、棄権したい・・・というところまできている。

そこで、「なんで断食するんでしょうねえ」という質問を、断食のベテランであるパイセンに聞いた。

パイセンは、鼻息を荒くしてこう答えた。よくぞ聞いてくれた、と言わんばかりである。

パイセンいわく、

ラマダン中は自分がいかに多くの選択肢を持っているか、恵まれているかを確認できるのだという。

「考えてみろよ、世界には食えない人がたくさんいるんだぜ。断食しているとそうした人の気持ちになれるだろ。例えばソマリアの飢饉は有名だろ」

と、私と丸々と肥えたソマリア人同僚を前に、とうとうとパイセンは語る。

太ものの太さが、私の胴回りほどあるソマリ人のふとももを見やりながら、私は「ふんふん」とうなずく。

マツコデラックスの太もももこんな感じなんだろうか。

続けてパイセンは、韓国とアルメニアの文化比較論を引用しながら、経済的に豊かで生活に何不自由をしない生活であっても、そこには貧しさが存在するのだ、と語る。

「韓国とアルメニアを比較してみろ。アルメニアはヨーロッパでも貧しい国。一方で韓国は経済的に豊かな国だけど、自殺率が高いだろ。アルメニアはクリスチャンの国で、人々はそれなりに敬虔。貧しくても自殺はしないのだ」

ちなみに韓国は世界GDPランキングで第12位、アルメニアは134位。一方で自殺率世界ランキングでは、韓国は第4位で、アルメニアは104位である。

「それにな。ラマダン中は、より良い人間になるためのチャンスなんだ。欲望をいろいろと抑える。人の悪口を言わないとか。良いことをしようだとか。タバコだって、日中は禁止。ラマダン後には、一切喫煙しなくなる人もいるよ」

そういうので、愛煙家のソマリ人同僚に尋ねた。

「ラマダンでタバコやめた・・?」

「いや、別に・・・」

イスラーム界では、善行を積むたびに、功徳ポイントが貯まる仕組みになっている。なので、日々ムスリムたちは、「良いことをしてやるぞお」という気合いに満ち溢れている。この点では、他人から見ればそれほどでもない特典のために、せっせとメイド喫茶に通い、ポイントを貯める秋葉原の住人とよく似ている。

一通り話した後、パイセンは「(断食の意義について)話すことも、良いことの1つだかんな☆」と、したり顔でこちらを見やった。

こんなことを話しながら、ムスリムはラマダン中の時間をやり過ごすのである。

マンガでゆるく読むイスラーム

普通の日本人がムスリム女性と暮らしてみたらどうなる?「次にくるマンガ大賞」や「このマンガがすごい!」などでも取り上げられた話題のフィクション漫画「サトコとナダ」。

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