アラブ人は本当に怠惰で信用できない人々なのか?アラブ人と働き考えた

仕事に関してアラブ人の評判はよくない。

アラブ諸国で働いた人ならば、一度は耳にしたり、実際に思うことがあるだろう。特に日本人からすれば、責任感もないし、言い訳ばかりして・・・という声が聞こえてきそうである。

これは、過去に湾岸諸国で暮らした日本人ビジネスマンの手記にも見いだすことができる。

アラブ人は責任感が薄いように思う。人との約束を守ったり、自分の仕事を最後まで責任を持ってやり遂げる思考・姿勢に乏しい。そのため、頼んだ仕事が放置されたり、途中で仕事が消えてしまったりすることがある。

何か不都合なことが起こると、他人のせいにしたり、言い訳で逃れようとすることが多い。「自分が約束をした」、「自分の仕事だ」、「自分の責任だ」という観念が薄い。
遠藤晴夫著「アラビア半島とどう付き合うか」より引用

といったようにとにかく仕事に関しては、アラブ人はボロクソに言われている。アラブ人の仕事に関してマイナスイメージをもつのは、日本人だけではないようだ。

「パレスチナとかヨルダン出身のアラブ人はとにかく面接で、自分のスキルや経験を盛りまくる。だから、実際に実技面接みたいなのをやらんと実力がわかんないんだよね」

イギリス人の上司の言葉である。ドバイで数年働き、「もうアラブ人と働くのはこりごりだぜ。やつらは信用しねえ」とアンチ・アラブな姿勢を見せる。

複雑である。

人として接するには、アラブ人は気前の良いいい奴らである。しかし、仕事になればやはりそのアラブっぽさが出てくる。とりわけ真面目気質の私からすれば、水と油のごとく相容れないのである。

アラブ人の部下に何度注意しても、「自分は知らなかった」、「あのチームが仕事をやっていないからだ」と日本人流にいうならば「言い訳」のオンパレードである。自分の非を認めるという意識は、パンくずほどにもないらしい。

うわあ・・・こんだけ言い訳を並べる人間を初めて目の当たりにして、逆に驚嘆してしまう。普段は素直なやつなのに・・・。

注意をもとに仕事のやり方を改善する、仕事の効率をあげるといったことが、どうやらめっぽう弱いように見受けられる。いや、そもそもそうした「効率化」の思考がないのだ。「自分は悪くない」と言い訳ばかりするので、仕事のクオリティはまったく上がらないのが、玉に瑕である。

この経験だけで言えば、アラブ人は一緒に仕事したくない人ランキングでダントツの1位をとるだろう。けれども、それだけで仕事ができないと決めつけるのは早急である。

中には、かなり高度な専門スキルを持ち合わせており、高い信頼を獲得している人も中にはいる。ただ、あくまで少数なのだが。特にアラブ人以外と働いている経歴が長い人ほど、この傾向が見られる。

逆に最近ヨルダンから来ました!シリアから来ました!みたいな新卒アラブ人だと、先ほどのアラブっぽさが一層加速しているのでやっかいである。もうやりたい放題、言いたい放題で、クレヨンしんちゃん並みである。

かくしてアラブ人とそうではない人間が一緒に働くことは、ある意味で不幸なことなのかもしれない。お互いに。なにせ環境も思考もずいぶん我々とは違うのだ。

自省も含めて言えば、アラブという文化だから・・・というのは簡単である。けれども文化的な面より、経済的な面が大きく関係しているのではないかと思う。

経済が高度に発達した社会では、生産能力を最大化するために個々の効率化が求められる。その効率化のために、人々はあれこれビジネス書なりビジネス論などを叩き出して、己の仕事スキルと効率性をあげる。

言い訳ばかりしていては、効率も数値も上がらない。だから、効率化を追い求める過程で、言い訳は悪の習慣として切り捨てられる。

日本やイギリス社会で生活する人々には、こうした思考や習慣が自然と身についている。けれども、アラブ諸国のほとんどはその効率化とは程遠い。湾岸諸国に限って言えば、最近になってようやく日本でいう高度成長期に入った感じで、とにかく働けばOKということで、効率化の追求なんて概念はまだ新しすぎるのだ。

けれどもアラブ諸国で仕事をする限り、我々はアラブ人と手を組まなければいけない。アラブ人にしても、何を効率化だの改善だの言ってるんだ?と思うのだろう。けれども、彼らだって非アラブ人と働く環境においては、仕事への考えを改めなければいけないのである。

だから、聞き分けの悪さに辟易しながらも、クレヨンしんちゃんみたいなアラブ人部下に、理解してもらえるまで説く。おそらくそんな日は来そうにもないのだが、それでも「あんたクビ」カードは使いたくない。

国の経済力が異なれば、労働観も必然的に異なる。幸か不幸か我々は、グローバル化以前(この場合では石油といった方がいいのかもしれない)であれば出会うことのなかった人々と働くことになっている。グローバル化に感謝すべきなのか。それとも恨むべきなのか。それは、個人の器量次第だろう。

海外で働きたい・働く人へのおすすめ本

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海外で働いていて、最も救われた本と言っても過言ではない。言葉ができないから、文化が違うから、と言って片付けてしまいがちなことでも、ちゃんと理由があるということを教えてくれる。海外で働く人のバイブル。

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20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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