外国人労働者と移民のあいだ。エクスパットという存在

外国人が今後押し寄せてくるぞう、ということで、あちこちで「外国人労働者」とか「移民」とかいう言葉を耳にする。

けれども、その言葉の定義や使われ方が、あいまいな気がする。

私自身、どちらにも当てはまりそうなのだが、どちらもしっくりこない。

日本人が外国人労働者として、海外で働いて思ったこと、という記事ではあえて「外国人労働者」として書いた。

けれども、「外国人労働者」を名乗るということに違和感はある。

「外国人労働者」といえば、低賃金で働く、ブルーワーカー層というイメージがある。

一方で、「移民」というのは大げさな感じがする。一世一代で家族みな、その国に移住して、人生を送るのだ、という感じ。

私としては、日本で働く感覚と変わらない。ただ、働く国が違うだけで。「駐在員」や「現地採用」という言葉もあるが、そのどちらにもあてはまらない。

辞書をひいて意味を調べても、しっくりとこない。内藤正典の「外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?」という本では、こんな風にかかれている。

外国人労働者というのは、文字通り、海外から働きに来る外国人のことです。

「移民」とははっきり定義が違うわけではないのですが、ずっと住み続ける場合には「移民」、比較的短期で働きに来る人を「外国人労働者」と言うことが多いです。

「移民」は、家族と一緒に暮らしている場合が多くなります。

ふむ。これを見る限り、私は「移民」ではななく、「外国人労働者」に当てはまりそうだ。

ただ、日本で「外国人労働者」という時、それは主に介護、農業、建設や接客業といった日本人がもはや敬遠するような仕事を担う人々、という意味で使われているような気がする。

一方で、ドバイで”外国人”をさすときに使われるのが、「エクスパット(Expat)」という言葉だ。”Expatriate”という英単語の略で、”海外居住者”を意味する。イギリス人だったら、イギリス系エクスパットといった使い方をする。

これじゃん!

ようやくしっくりときた。あ〜、すっきりした。

しかし、「エクスパット」とは、日本語で言うとどういう言葉なのだろう。「移民」でも「外国人労働者」でもない。

Google翻訳でみると、「駐在員」である。まあ、間違ってもいないが、ここでの意味とは違う。

ウィキペディアで見てみると、驚愕の事実が発覚した。

英語のページから、日本語のページへ飛ぶと、だいたい翻訳が出てくる。しかし、Expatの場合、日本語ページが存在しないのだ。

英語版ウィキペディアのエクスパットに関するページ。対応する日本語ページがねい!

それだけなら驚かなかっただろう。

しかし、中国語や韓国語のページはちゃっかりとあるのだ。

もしかして、「移民」といった他の言葉とかぶっているのかも?とおもいきや、中国語には「移民」とは違う、エクスパットに対する言葉がちゃんと存在していたのである。

すなわち、中国語や韓国語にはエクスパットという概念はあるが、日本にはない、ということである。

中国や韓国では、エクスパットは大勢いるけども、日本ではエクスパットがそんなにいねえじゃん?ということのなのだろうか。

むしろ日本では、海外居住者を「非居住者」という方が一般的かもしれない。「非」と言われるのが、ややひっかかる。 まあいい。

でも、仮に日本人の海外居住者の多くが、駐在員だったり、その家族だったり、日本企業に勤める現地採用である場合。

彼らは自身を「海外居住者」というよりも、「駐在員」と認識している可能性がある。駐在員の妻であれば、「海外居住者」というよりも、「駐妻」と認識しているのかもしれない。

「海外居住者」という言葉が一般的に使われないのは、そうした理由なのかもしれない。

エクスパットに対応する正式な言葉が存在せず、「駐在員」「現地採用」「駐妻」なんていう内輪的な言葉が、いまだ一般的なのだとすれば、いかにも日本らしい。

同時にエクスパットというページすら存在しない日本は、中国や韓国と比べればずいぶん内向きなのかもしれない。

外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?
内藤 正典
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20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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