平均給与から働くメリットまで!ドバイの働き方ガイド

「海外就職」や「セカ就」などという言葉が出てきて、日本人が海外で働くということも駐在員だけにとどまらない様々な海外で働くという選択肢が増えてきた。

そうした「海外就職」で語られる中で、登場するのはタイやベトナム、中国を始めとするアジアや北米、オーストラリアといった場所がほとんどで、中東で現地や外資系企業に就職する「海外就職」は、まだ一般的に語られていない。

しかし、私が実際にドバイに海外就職してみて思うのは、ドバイは中東の一部としては見られるものの、日本人だけにとどまらず外国人として働くにはとても働きやすい場所なのではないか、と思う。そして稼ぎもいい。

外人率80%と世界でも脅威の数値を誇るドバイ。その都市には世界中の人が出稼ぎにやってくる。

ホワイトカラーでもブルーカラーであっても、みなが自国で働くよりも多くの稼ぎを得られるという点では、仕事のカラーや出身国は関係なく、みながこのドバイの恩恵を受けている出稼ぎだ。

実際にドバイに出稼ぎにやってきた経験ををもとに、ドバイでの海外就職がどんな感じなのかをお伝えしたい。

ちなみに国としてアラブ首長国連邦(UAE)と述べることもあるが、大半はドバイのことだと思っていただきたい。

というのも、ドバイが国であると勘違いする人が多いぐらい商業やビジネス、観光の中心がドバイになっているからであるし、ドバイの方が馴染みがあると思うため便宜上、ドバイということにする。

ドバイで働いている日本人はどのぐらい?

在留邦人数がここ数年で伸びてきており、外務省による国(地域)別在留邦人数上位50位中27位(2014)にドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)はランクインしている。

%e6%b5%b7%e5%a4%96%e5%9c%a8%e7%95%99%e9%82%a6%e4%ba%ba%e6%95%b0%e8%aa%bf%e6%9f%bb%e7%b5%b1%e8%a8%88%ef%bc%88%e5%b9%b3%e6%88%90%ef%bc%92%ef%bc%98%e5%b9%b4%e8%a6%81%e7%b4%84%e7%89%88%ef%bc%89外務省の海外在留邦人数調査統計(平成28年)より国(地域)別在留邦人数上位50位推移

UAEにおける在留邦人数では4000人弱程度だが、その人数は着実に伸びている。

現在その大半は、日本企業に務める駐在員とその家族、もしくはエミレーツ航空のクルーだったりする。日本企業以外の外資系、現地企業に務める人はまだ珍しいレベルである。

しかし、それは日本人だけに限った話で、世界各国からはみな単身で乗り込みドバイでバリバリ稼いでいる。

インド人上司になぜドバイに来たのか?と聞いても、そりゃ自国より何倍も稼げるからね、ということだ。インドでも世界的に有名な企業で働きつつ、ドバイでも着々とキャリアアップをしている人もいる。お金を稼ぐだけではなく、ちゃんとキャリアアップもできるのが、ここドバイである。

どんな職であれ世界の人はすでにドバイが、自国よりも稼げる就職先だということを知っているのだ。地理的に遠いから、あまり親近感がないからというだけで海外就職の選択肢からはずれてしまうのはあまりにももったにないことではないだろうか。

ドバイでの給料は?

以下はドバイに置ける業界別の平均給与を示したものだ。注意してみたいのは、UAEの平均年齢が30歳であるのに対し、日本は46歳という事実。

日本では年功序列の考え方が未だ残っているため、30代後半〜40代にかけてが給与のピークを迎えるのに対し、UAEでは平均年齢の30歳で以下のような給与であることをおさえておきたい。

特に注意したいのは、これがそのまんま手取りになるということである。ドバイには所得税やら地方税はないので、月収がそのまま手取りになる。

%e3%82%b9%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%88%e3%82%991
参照:Guide2Dubaiより。給与は現地通貨1AED=30円で換算したもの。

ちなみに公務員がずば抜けて給与が高いのだが、これは地元のUAE人が従事しているからである。UAE人の大半は政府機関に勤めており、我々のような出稼ぎ労働者はプライベートセクターであくせくと働いているのである。

よく世間の人が、UAE人の平均給与は2000万円超えだ!などとざわついているが、まさにそれを証明しているようでもある。

人種によって給料が異なるという現実

悲しいかな。いくら能力や役職が同じとはいえ、出身国によって給与が違うということもあるのがこの国。もちろんアラブ諸国であるため、アラブ人が優位になるということは、否めない。

下記は、UAEにおける管理職からCEOレベルまでの平均給与(月収)を示した数値(2016年)
アラブ人:11,936USD
欧米人:12,530 USD
アジア人:9,363 USD
Gulf Business(2016年3月号 Salary Survery 2016)より

なおこれは、UAEだけに限ったことではなく、湾岸諸国(UAE、カタール、サウジアラビアなど)全体に共通している。給与レベルで最低レベルに位置するアジア人としては、こうした人種によって制度が違い、自分たちが下層に位置することを認識せざる負えない厳しさもある。

ドバイで海外就職をすることのメリット

何度も言うが、外人率が80%であるため出身国や肌の色によって自動的に組み込まれるヒエラルキーのせいで、不条理にあうことも少なくないドバイ。

どの国に外国人として働くにも痛いことはつきものであるが、ドバイで得られる特典に比べれれば可愛いもんである。ということで、ドバイを人気海外就職地にするために、声高にドバイで働くメリットを叫んでいこう。

1.ビザが取りやすい

まず日本人だけに限らず外国人として働くには、この就労ビザのとりやすさが海外就職のしやすさの目安の1つになるだろう。昨今は自国民の雇用機会を守るために、北米やヨーロッパ地域でのビザの取得が難しくなっていると聞く。シンガポールにおいても、一定のスキルを持っていなければビザがおりにくくなっているそうだ。

しかし、ドバイにおいて就労ビザが取りにくい、外国人だからビザがとれないといった話はあまり聞かない。なぜなら、ドバイは外国人の雇用があってはじめて成り立つ都市だからである。

ドバイは外国人が80%以上を占める国際的にもコスモポリタンな都市である。国際移民局によるレポートでは、ドバイは国外生まれの市民が多い最もコスモポリタンな都市だと伝えている。

foreign-born

IOM国際移住機関の調査より

多国籍国家として馴染み深い、シンガポールでさえも自国における外国籍の市民は38%、米国のニューヨークでは37%でドバイがいかにダントツで外国人が多いかがわかる。ちなみにドバイは200以上の国籍の人々が暮らしているとも言われている。

ドバイを世界のハブ、観光地にするという目標のもと多くの外国籍企業や観光客を誘致するための政策が行われているが、なにせ20数年前は砂漠だった都市がいきなり高層ビルが立ち並ぶ摩天楼都市へと変貌したのである。

多くの観光客や住民へ向けたサービスを展開するためには、とてもじゃないが自国民だけの労働力だけでは追いつかない、というところで始めたのが積極的な外国人労働者の受け入れである。

2.税金がない

あらゆる種類の税金が発生し、稼ぐほど税金の負担が重くなる日本とは違い、ドバイで働くことの大きな利点の1つが、税金がないということである。であるから、給料明細書を見ても手取り額が一行書かれているだけである。

私が島を出た理由も税金が大きい。なぜ同じ分量だけ働いているのに日本で働いているだけで、こんなに税金を納めなければいけないのか。また政府は大した告知もせずに、勝手に新たな税金制度を作りこっそりと市民の給料から拝借しているのである。

こうした日本政府のやり方に不信感を抱いた私は、働いて同じ給料をもらうなら税金がない方がお得だと思ったのである。

しかしドバイは新興都市ゆえ、制度がめまぐるしく変わる。私もいつまでも無税が続くとは思っていない。消費税にあたる付加価値税(VAT)はすでに2018年1月より導入されている。であれば、税金がない今のうちに無税暮らしをエンジョイしておいたほうがよい。

3.給料が自国よりも2倍もアップ?

税金がないということもあるが、ドバイは基本的な給料が高い。私の場合、日本と同じ業種、職種で働いていても1.5~2倍ほど給料があがった。これは、オーストラリアから移住してきたという同僚も同じようなことを言っている。

20代にして、日本でいう30代〜40代レベルの給料がもらえるとはドバイさまさまである。しかし、スキルに応じた給料アップではなく、見えざる給料のインフレに甘んじてしまうと、日本で仕事を探すときになかなか満足のいく年収の仕事が見つけにくくなるという不安要素も発生する。

もちろん平均給与が高い=物価が高いということは否定できない。その辺はシンガポールと同じカラクリである。給料が3倍になっても、家賃が3倍になってはとんとん・・・と思われるかもしれないが、必要経費で高いのは家賃だけであって、その他は選択により生活水準を日本と同じぐらいにすればその分お金は浮く。

私の場合は、日本でもらっていた手取りと同額ぐらいの貯金ができるレベルになっている。日本にいたときは、実家暮らしだったので、家賃が浮いてウハウハだと思っていたが、今にして思えば一人暮らしをしてもそれ以上にお金を貯めることができる選択肢もあるんだぜ、と自分の肩を叩いて開眼させてやりたい気持ちになる。

4.生活水準が高い

日本人にとって中東というと、紛争、砂漠といったとてもじゃないが日本人が快適に暮らせる場所なわけがないというイメージが先行する。が一般的な中東のイメージとドバイの実態は全く別物だと考えていただきたい。

都市としても新しいためすべてのものが新しい。メトロにしても、清潔感がある。治安に関しては別の記事を参照願いたいが、夜中に一人で街歩きをしても問題はない。

5.海外旅行がしやすい

これは別にドバイに限ったことではないだろう。ヨーロッパ諸国であれば、新幹線よりも安く隣国に気軽に旅行ができたりする。それと同様にドバイは世界のハブとして、アフリカ、ヨーロッパ、アジアへとあらゆる地域へのアクセスがしやすいのが特徴だ。

日本からだと、13時間以上はかかるアフリカの国も、ドバイからだと5~6時間でかつ直行便でいける。個人的にはソマリアへ直行便が出ているという点では、非常にありがたい場所である。ソマリアやソマリランドへ直行便でいけるとなると、精神的にもソマリアは世界の果ての遠い場所ではなく、いつでもいける観光地の候補となるからだ。

細かい話にはなるが、だいたいドバイ市内に住んでいれば空港までタクシーで30分程度で行ける距離なので、毎日の東京での通勤時間を考えればいかに気楽なものかということかがわかる。

日本だと、島国という理由なのか精神的なハードルがあがるような気がする。私も海外に行く時は意気込んで「島の外に出るぞ!」という心の準備をしていたように思う。

しかし、ドバイからであれば熱海や沖縄に行くぐらい国外に出るときの精神的なハードルが下がる。実際にまわりの同僚を見ても、連休があるときにはみなヨーロッパやアフリカ、アジアを転々と旅をしている。

ドバイが日本人にとって人気海外就職先にならない理由

世界基準でみれば、こんなにビザが簡単に取れ、自国よりも高い給料で働ける都市なんていうのはめったにないだろう。であるから、世界的に見ればかなり魅力的な海外就職先であることは間違いない。

しかし、日本人の海外就職先となる要素はまだ欠けている。というのも、タイやシンガポールが日本人の海外就職先として人気なのは、多くの日本企業が進出しており、日本人であることを生かした仕事の需要があるからだ。

一方でドバイにおける進出企業というのはまだ少ないし、日本人向けサービスというのも充実していない。というかほとんどない。地理的にも遠い点は、精神的なハードルの高さにも無意識につながる。

さらに先に述べたような理由で、英語や現地語ができなくても仕事があるのも大きな違いだ。ドバイだと仕事においても生活においてもまず英語は必須になる。そこがドバイで働くための最低条件である。ちなみにアラビア語はどうなのか?思われるかもしれないが、一切必要ない。

アラビア語+専門スキルがあればそこそこ有利になる場合もあるし、選択肢も広がるが必ずしも必須条件ではない。むしろ非アラブ圏出身でアラビア語を話す人はほとんどいないといってもよいだろう。

こうした点が、今に至るまで日本人のドバイ海外就職を阻む要因となっているのだと思う。しかし、日本で評価される一定の専門スキルと英語がそこそこできれば、誰にだってチャンスはあるのだ。

すでに世界の人々はそのチャンスを掴んでいる。日本人向けのコミュニティが充実していない、日本人だからできる仕事がないという理由だけでドバイを海外就職先の選択肢からはずしてもらうのはもったいない。

ドバイで働くには?

ここが一番のネックとなるだろう。正直に言うと、誰もが簡単に応募してすぐに職を得るという楽な道ではないことは事実だ。

コネが強い土地柄、日本のように会社のサイトや転職サイトから応募してもあまりうまくいったためしがない。詳細は別記事を参考にしていただきたい。そもそもドバイで働きたい人間はゴマンといるので、ドバイにいもしない人間をわざわざ相手にする必要もないのだ。

であるから一番の近道は、知人や会社のつてで仕事先を紹介してもらう、というのが一番の方法である。

もしくは実際に現地をしてみて、とにかく人にあってみるとか。そんな確証のない方法しかないんかいと思うかもしれないが、だからこそやってみてうまくいけば大きな可能性を手にすることができるのである。

海外で働きたい・働く人へのおすすめ本

開高健ノンフィクション賞受賞作家による本。パリの国連で働いていた著者が、現地で活躍する日本人のストーリーをまとめたエッセー。フランスやパリというワードに興味がない人でも、楽しめる。

海外で働いていて、最も救われた本と言っても過言ではない。言葉ができないから、文化が違うから、と言って片付けてしまいがちなことでも、ちゃんと理由があるということを教えてくれる。海外で働く人のバイブル。

湾岸やイラン、トルコなどイスラーム圏で働く日本人の話をまとめたもの。海外で働く系はよくあるが、イスラーム圏に特化したものは珍しい。イスラーム圏ならではの文化の違いや、苦労話を知ることができる一冊。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

管理人をフォローする
デジタルノマド
シェアする
進め!中東探検隊