ドバイで働いてみたいんです、という人がたまにいる。その理由の大半は、海外で働いてみたい、中東で働いてみたい、というものである。
もちろんそれ自体は悪いことではない。というか、私がそのパターンだった。
しかし、中にはあまりにもその思いが強いためか、無給のインターンや、インターンの名をかりた怪しげな就職先に勤めそうになったりする人もいる。
そんな人に向けて、伝えたいことがある。
甘い言葉の裏にあるリアル
実際に、ドバイでインターンをしている人に聞いてみると、「えっ」と思うような労働条件だったりすることもある。
冷静になって考えれば、給与も、労働時間も、日本のコンビニで働いていた方が断然マシな条件なのである。
彼らの多くは、「ドバイでグローバルに働こう」だとか「英語で働く経験を積める」といった謳い文句にぐっときたのだろう。
けれども、実際は職場と自宅を往復するだけの毎日で、英語を使うにしても、ビジネス英語というよりも、パターンが決まっている接客用語を繰り返し使う、ことだったりする。
インターン中にドバイで就職先を見つけたい、と意欲をみせた人もいたが、安月給のインターン中にそんな時間と余裕すらなく、帰国してしまった人もいる。
私が憤りを覚えるのは、こうした甘い文句でニンジンをぶらさげて、人の労働力や時間を安く買い叩く企業の姿勢である。
やる気がある人が、こうした甘い言葉で安い労働力として、都合よく使われるのが、我慢ならない。
ドバイで働くなら最初が肝心
ドバイで転職する場合、前職の給与を元に、給料が決まるケースが多い。前職の10~20%増といったところである。
よって、ドバイのスタート地点で、自分の労働力を安く叩き売ると、後々が大変である。
実際に私が働く会社では、経験年数も長く、仕事もそこそこできる同僚がいる。しかし、彼の出身 国はパキスタン。前職は、接客業であった。おそらく前職の給料は、15万円前後だろう。
会社としては、もっと給料を引き上げたいところだが、引き上げ率が大きすぎても会社としては不公平になる。よって、がんばって給料をあげても、20万円前後である。
同じ職種と経験年数であっても、自国の給与水準が高い人間と比べると、給料に2~3倍の差がでてしまうのだ。
ドバイで日本人がやるべきではない仕事
例えばホテルマンやショップ店員などの接客業。
日本人からすると、身近な仕事であり、「カリスマ店員」といった言葉もあるので、そこそこ地位がある職種である。
月収1,000万円以上を叩き出すホストやキャバクラ嬢も、一応は接客業である。
日本の接客業は多様で、夢もある。
しかし、ドバイにおいては接客業というのは、給料も地位も低い。だいたい月収が6万から15万円程度が相場である。
ドバイには109のショップ店員のようなカリスマ店員も、大金を稼ぎ出すホストもいない。
日本ならばギリ生活ができそうだが、物価が高いドバイでは、日本人が一般的に想像する生活を送ることはできない。
こうした仕事についているのは、フィリピン、インド、パキスタン、アラブ諸国でも国の経済力が低いエジプトといった国の人々である。
だからこそ、経済大国で生まれ育った日本人が、彼らと同じような給料で働く必要はあるのか、と思ってしまうのだ。
あえて、そうした生活をしたいというのであれば、いい。
けれども、就労機会に恵まれ、平均賃金も高い国の人間が、夢の実現のために、わざわざやる必要はないのではないか、と思うのだ。
実際、接客業につく人々の中の多くは、給料が低くとも、その仕事を必要としている人である。自分の生活だけではない。母国にいる家族の生活もかかっているのだ。
一方で、日本人がわざわざそうした仕事をすることは、そうした仕事にしかつけない人々のパイを奪うことにもなる。
日本人の最低月収ラインは30万円
ドバイで、生活をするにはお金がかかる。日本以上に生活費がかかることを留意しておきたい。
つまり、そこそこの生活を送るには、それなりの収入がなくてはならない。
収入がなければ、「こんなはずではなかった・・・!」という生活を強いられる。
ちなみに月給が10万円前後と言われた場合、以下のような暮らしを送ることになる。
住む場所は、都心から離れた「周り砂漠やんけ」みたいなわびしい場所か、アジアの街角のような混沌とした地区になるだろう。
家は大体ルームシェア。場合によっては、3~6人で一部屋をシェアし、マイスペースはベッドの上のみ、ということになる。一人部屋を持てる見込みはほぼない。
家賃が高くても、ドバイの住宅は欠陥が多かったり、ボロかったりするものが多い。壁が薄かったり、害虫が発生したり。それはそれはもう・・・
休日の娯楽も限られてくる。ドバイ市民の暇つぶしといえば、週末におしゃれなレストランでブランチをしたり、モールでショッピングするぐらいである。
楽しいことしたいなら、金払えよ、というのがドバイの基本ポリシーである。よって、タダで楽しめるアクティビティは、限られている。
よって、ドバイでまともに生活する最低賃金としては、30万円を推奨したい。あくまで、私の個人的な経験から、はじきだした計算である。
現在、ドバイの家賃は下落傾向にある。よって、比較的都心に近い便利な場所であれば、家賃15~20万円ほどで済むだろう。
ドバイにかかる生活費用などは、こちらを参照
日本人がドバイで就職!ドバイでの仕事、生活環境まとめ
何度もいうが、南京虫がいても、ゴキブリがいてもかまへん☆という、心の強い方は、もっと安くてもOKである。
あくまで30万円は、私が思う「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための、資金である。
インターンを選ぶ際の注意点
ドバイだけに限らないのだが、インターンによって何を得られるのか、を今一度考えてみた方がよい。
「海外でインターナショナルに働ける」とか「英語が使える」というのは、得られるものに入らない。それは、単に体験である。
会社で仕事を得るのに重要なのは、専門スキルである。体験ではない。
さらに重要なのが、給料である。もちろん、インターンなので給料は、少なめだろう。だからこそ給料が少ない分、スキルを得ることができるのか、を慎重に考えねばならない。
そもそも、物価が高いドバイにおいて、スズメの涙ほどのお金で生活するのは、無理ゲーに近い。
よって、真っ当な暮らしを望むのであれば、できればインターンではなく、正式な社員として就労することをおすすめしたい。
金がなければ、日本以上にそこそこの暮らしも保証されない。というのが、ドバイの現実でもある。
こういうとそもそもドバイでインターンをしない方がよいのでは?と思うかもしれない。
が、IBMやMicrosoft、ロレアル、Googleといった多くの外資系企業は、ドバイでインターンを募集している。
やるならば、こうした素性が分かり、人事もしっかりとしている会社でインターンをすることをおすすめする。会社によっては、インターンといっても、名ばかりで、単に安く労働力を買い叩く会社もあるからだ。
そして本当に英語を使って、インターナショナルに働くことを目指すのならば、あえて日系企業はさけて、外資に飛び込む選択をしたい。
海外で働きたい・働く人へのおすすめ本
開高健ノンフィクション賞受賞作家による本。パリの国連で働いていた著者が、現地で活躍する日本人のストーリーをまとめたエッセー。フランスやパリというワードに興味がない人でも、楽しめる。
日本で働く5人の日本人が海外就職するまでのエピソードを集めたもの。小説なのだが、妙にリアルがあって面白い。海外就職を考えている時に、出会えたらなとよかったと思う一冊。
海外で働くにはどんな仕事がある?どうすればいい?そんな人におすすめ。海外の仕事と言っても種類は色々。将来どうしたいかというキャリアパスを見据えた戦略的な海外就職本。とりあえず、海外で働いてみたいと思う人は読むべし。