競合相手は世界中にいる。グローバル化の前線で働いて見えた景色

ドバイといえば、ゴージャスなイメージも手伝ってか楽に高い給与にありつける、と思っている人は多い。

かつインフラも先進国並なので、アジア圏で海外生活をする人からは次はドバイに行きたいんです!という声や、実際にシンガポールからドバイに移り住んだという人もいる。

一方で、現状は少し変わってきている。

ドバイでは以前よりも稼ぐのが難しくなった?

ドバイでは、とりわけ欧米人たちを中心に最近ドバイ離れが進んでいると聞く。イギリスのBBCは、原油価格の下落による不景気に加え、ドバイの労働市場の激化も1つの原因としてあげている。

かつては、ヨーロッパ人というだけで、高給取りになれた。しかし、ヨーロッパ人と遜色ない経験やスキルをもち、しかも安い給料で働くアジア人が増えている。

ドバイの給料体系でいえば、アジア人の平均給料はむしろ低い方だが、それでも彼らの母国と比べれば、断然高い給料になる、というのがカラクリである。

実際に私の職場でもそんな光景を目にした。

今まではヨーロッパやインド人が中心となっていたチームなのだが、そこに新たに加わったのはフィリピン人であった。そのチームは、データサイエンスやビジネスインテリジェンスなどを扱うITの専門分野である。

もちろんフィリピン人でも社長をやっていたり、高額な給与をもらっている人はいる。しかし、それはほんのわずか。一般的にドバイにおいては、事務や受付などの日本でいう一般職のような仕事を担当しているのがフィリピン人たちである。

だからこそ、ヨーロッパ人がたむろする専門業務にフィリピン人女性がやってきた時は、驚いたものである。

世界中が競争相手か。

ドバイにいると、そのことをひしひしと感じる。同時に己の存在感の薄さも。語学だけでいえば、決して私は必要とされない人材である。

日経の会社で働いているならいざ知らず、外資系なのに英語もそこそこで、アラビア語に関してはまったくダメ。唯一の武器は「専門スキル」しかない。

自分の代替がいくらでもいる世界

アラビア語も英語もバリバリにできる連中がそんな専門スキルを身につければ、私なんぞは無と化すのだ。それほど、脆い存在だということをドバイではいつも感じる。

一方で、個人的には脅威かもしれないが世界的には公平だといえよう。専門スキルが必要な分野に関しては、とりあえず世界中のどこからでも人材を引っ張ってくるドバイである。

メキシコだろうがアラスカだろうが、必要な経験とスキルさえあれば誰でも市場に参入することができ、高い報酬を手にすることができる。

これもグローバル化の恩恵の一つである。いや、逆にいえば自分もその恩恵を受けた一人である。

だからこそ、その恩恵を受け続けるには、現状維持ではなく市場で勝ち続けるための何かを身につけていかなければいけないのだ。

海外で働きたい・働く人へのおすすめ本

開高健ノンフィクション賞受賞作家による本。パリの国連で働いていた著者が、現地で活躍する日本人のストーリーをまとめたエッセー。フランスやパリというワードに興味がない人でも、楽しめる。

海外で働いていて、最も救われた本と言っても過言ではない。言葉ができないから、文化が違うから、と言って片付けてしまいがちなことでも、ちゃんと理由があるということを教えてくれる。海外で働く人のバイブル。

湾岸やイラン、トルコなどイスラーム圏で働く日本人の話をまとめたもの。海外で働く系はよくあるが、イスラーム圏に特化したものは珍しい。イスラーム圏ならではの文化の違いや、苦労話を知ることができる一冊。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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