見捨てられた泥の街。ゴーストタウンと化したオマーンのアル・ハムラを訪ねて

最近やたらとゴーストタウンや廃墟に出くわす。UAEやオマーン、バーレーンあたりには、結構な廃墟スポットがあるのだ。

当たり前だが、都市の生活では絶対に触れられないような空気感がそこにある。そんな空気に触れたくて、気づいたら廃墟に足を向けているのかも知れない。

歴史に触れる廃墟巡礼

日本で廃墟といえば、心霊スポットなどといって恐怖と結びつけられる。

けれども、アラビア半島で見る廃墟たちというのは、石油で急成長する前の人々の生活や歴史に触れる貴重な場所であったりもする。

先進国並みのインフラが整った生活や消費に忙しい人々が、忘れ去った場所。そんな哀愁さえ漂う。

首都マスカットから車で約2時間ほど走らせた場所にあるのが、アル・ハムラだ。

昔ながらの素朴な光景に出会う

この町には、「ファラジュ」と呼ばれる感慨水路で昔ながらの農業が行われていることでも知られている。ファラジュは世界遺産にも登録されている。


アル・ハムラの村。砂漠や岩山のイメージが強いオマーンだが、ヤシの木が生い茂るスポットが点在している


「ファラジュ」と呼ばれる感慨水路
育てられている草は、家畜のエサにもなる


舗装された道路横に残る崩れかけた建物

ちなみにファラジュはオマーンだけでなく、オマーンに隣接するUAEのアルアインやUAE内にあるオマーンの飛び地、マドゥハーでも見かける。

パスポートなしで入国できる!?奇妙なオマーンの飛び地、マドゥハーに行ってみた【後編】

土と化していく町

アル・ハムラは、「オールド・アル・ハムラ」と「ニュー・アル・ハムラ」に分かれており、かつてここに住んでいた人はみなニュー・アル・ハムラへ移っていったのだという。


泥が崩れてきそうで怖いので慎重に進む


崩れて地面と化した土の上でまどろむ猫

けれども、完全にはゴーストタウンと化してしなくて、絶対こんなところに人なんか住んでいるわけねえ!というような家にちゃっかり住んでいる物好きもいた。

ほとんど崩れかけた家なのだが、換気扇の音だけがブーンとしたり、ドアに南京錠がかかっているのがその証拠である。

おそらく住んでいるのは地元のオマーン人ではなく、インドやパキスタンからの出稼ぎ労働者であろう。

UAEのアル・ジャジラ・アル・ハムラでも同じような光景に遭遇した。

知られざる中東のゴーストタウン、アル・ジャジラ・アル・ハムラ

興味深いのは、どうやらイエメンの影響を受けたような建物の造りである。


2~3階立てでしゅっと上に伸びた建物。イエメンのサヌアの街並みを思わせる


泥がメインなのに、なぜこんな高さを保てるのか


ドアにも凝った模様が施されている。シンプルな素材の割に、建物の構造や装飾には深みがある

オマーンの内陸部を走っていると、同じような廃村を何度か見かけた。いずれも廃村になった泥で作られた住宅街の近くには、コンクリートの真新しい住宅街があった。古くなった泥の家を捨て、すぐ隣に新しい家を作り移り住むというパターンらしい。

訪れる価値あり!ローカルな人々と触れる博物館

ほぼゴーストタウンの町であるが、一応観光スポット的な場所もある。それが「ベイト・アル・サファ」だ。

どうせゴーストタウン・クオリティだろうと思って、全く期待していなかったのだが、正直めちゃくちゃ楽しいスポットであった。

若干の「やらせ」感はあるものの、それでも民族衣装にふんした社員こと、地元のおばちゃんの手工芸品作りを見たり、オマーンのパン作り&試食などもできる。


左のばあさんは、サフランとローズ・ウォーターを混ぜた地元特製の”美容パック”を額にひたい塗っている


ジャベル・シャムスにある木から作ったアルガンオイルも販売。5リヤルとちょっとお高め?


従業員のおばさんが、オマーン式の薄いパンを焼いてくれる


調度品などについて熱心に説明してくれた館員たち

館員のオマーン人が、熱心に建物や小道具について説明してくれるのもありがたい。この博物館だけでも、アル・ハムラを訪れる価値はあるだろう。

オマーン旅行前に読んでおきたい本

旅行先としてはまだマイナーなのか、オマーンだけを特集した旅行本はないが、地球の歩き方には、まとまった情報が掲載されている。細々と紹介されているわりには、各地の情報がきちんと網羅されているので、役に立った。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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