UAEが建国したのは1971年の12月2日。歴史はそれほど長くない。
新興都市ドバイで暮らしていると、廃墟や心霊スポットなどに遭遇する機会は少ない。何せすべてのものが新しく、未だ現役で活動中だからだ。新品で歴史を感じさせない建物には、影がない。
だから、UAEにゴースト・タウンがあると言われれば、行かずにはいられないだろう。
ゴースト・タウンと呼ばれる場所は、ドバイから北に車で1時間ほど行ったラス・アル・ハイマ首長国にある。正式にはアル・ジャジラ・アル・ハムラ(Al Jazirah Al Hamra)と呼ばれ、中心地からは18kmほど離れている。
海岸沿いにあるその町の歴史は古い。14世紀にザアブ(Za’ab)と呼ばれる部族によって作られたのが始まりだ。
19世紀の前半までには、真珠採りや漁業に携わる人々が数千人近く住んでおり、交易の場所としても栄えていた。しかし、1930年代に日本が養殖真珠を作ることに成功すると、急速に真珠産業は衰退していく。さらに1950年代に現在のドバイ、アブダビで石油が見つかると生活は一変した。
人々はとりわけ石油が多く見つかったアブダビに仕事を求めて、なだれ込んだ。また、石油の恩恵を受け、人々はかつてのように真珠や漁業に勤しむ必要もなくなったのである。
こうしてかつては栄えたアル・ジャジラ・アル・ハムラはゴーストタウンと化した。中には、この街が「取り憑かれている」という人もおり、この街で一夜を過ごしたというレポもあったが、いまのところ怪奇現象らしきものは確認されていない。
モスクのミフラーブ。イスラム教はメッカの方向に向かって祈る。イスラム教の聖地メッカの方角を示す、ミフラーブはモスクには欠かせないものだ。
モスク内のトイレ
海岸部に近いこともあってか、サンゴや貝殻が外壁に使われていることが分かる。
現在では、石油発掘以前の生活を知る場として知られている。またその雰囲気が話題となり、アブダビ政府の支援を受けて、「Djinn」というスリラー映画も作られた。
さらにはあのブラッド・ピットもNetflixのオリジナル映画、「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」の撮影のため訪れたことがあるのだ。
UAEの歴史や伝統を伝える博物館はドバイにもいくつかあるが、これほど生々しく歴史を伝える廃墟群を超えるものはないだろう。