ノリが軽すぎるマレーシアのローカル美容院

マレーシアで楽しい美容院を見つけて以来、珍しく通いつめている。美容院に楽しさを求める人間など皆無だと思うが、私にとっては重要なポイントである。

なにせ日本の美容院は緊張するから苦手だ。たいていどこの美容院でも「上様のおなーりー」と言わんばかりに、接客が丁寧すぎるのだ。シャンプーをしてもらっただけなのに、スタッフから次々と「お疲れ様でしたー」などと声がかかる。寝てただけなのに、お疲れ様と言われる珍妙さよ。

一方で、海外の美容院は、いい意味で客を雑に扱ってくれる。人間味のある接客なので、こっちは気が楽だ。

予約が入らない謎の美容院
さて、件の美容院だが、これまで行った海外の美容院の中でも、トップクラスにツッコミどころが多い美容院なのである。予約はWhatsapp(日本のLINEみたいなもん)でするのだが、そのやりとりが妙に軽すぎるのである。

「明日1時半からで予約できますか?」

「できるお」

みたいな感じなのである。

さらに、これまで何度か予約して行ったことがあるのだが、きちんと予約が入っていた試しはない。しかし、それでも追い払われることはなく、ちゃんと施術してくれる。予約の意味がわからないが、まあ柔軟に対応してくれているということにしよう。

リピーターを覚えてくれないスタイリスト
美容院のスタイリストは、常連客のことをよく覚えているもんだと思っていた。なにせ日本では、美容院によっては、顧客カルテなんかを作ったりして、病院みたく顧客を囲い込むシステムを採用しているところもある。

ところがどっこい。こちらの美容院では、1ヶ月後に行っても、「また来てくれたんですねー」といった、うやうやしいやり取りなどなく、また他人同士から始まるのである。同じようなヘアスタイルを注文しても、どうのこうのという同じやりとりが繰り返されるのである。スタイリストが記憶喪失気味なのか、私の影が薄いのか。

ゆるい美容院の雰囲気
美容院内は、たいていどこもオシャンティな雰囲気である。美しく振る舞わなければならない、という一種の緊張めいた雰囲気が漂っている。この空気感こそが、私を緊張させるのだが、この美容院はそうした空気は微塵もない。

美容院はモールの中にあるが、店とモール通路を仕切るドアはないので、モールの喧騒感が店になだれ込んでいる。

朝の時間帯はあまりお客さんがおらず、従業員たちも暇を持て余している。鏡台に、朝マックセットみたいなのがおいてあったので、お客さんが持ち込んだのかなと思いきや、スタッフがむしゃむしゃと朝マックしている。

またあるスタッフは、シャンプー台に座って、スマホをいじっている。なんか自由だ。ちなみに店員のスマホいじりは、マレーシアでは一般的な光景である。ちなみに韓国のコンビニに行った時、店員がパソコンで映画を見ていた時もあった。これにはビビったが、暇な接客業ほど、苦痛なものはない。故に各々工夫して時間をやり過ごしているのだろう。

冷水でシャンプー
マレーシアの美容院で特に驚いたのが、シャンプー時に冷水か温水かを選べること。美容院のシャンプーといえば、温水一択だと思っていた。しかし、マレーシアは年中常夏なので、冷水を選ぶ人も多いという。実際に試したところ、ひんやりして意外と気持ちいい。

ヘアカットとペディキュアの同時進行
訪れる度に面白いことが起こるので、施術メニューを増やしたらもっと面白いことが起こるのでは?と、初めてのペディキュアに挑戦。

予想通りハプニングは起きた。ペディキュアの色を決めろ、と言われたので、この色じゃ!と指名したのだが、どうやらその色が見つからないらしい。しめしめである。第2希望の色を指定して一件落着と思ったが、塗る直前になってもう液体がない!と言い始める。

しまいには、店員が「もうこれでいいんじゃない」と適当にアドバイスしてくる。爪の色なんてもうどうでもいいよ、と私も思い始めたので、妥協した色を爪に塗っていく。

ちなみにどうみてもオシャレに興味なさそうな、インド系のおっさんもペディキュアをしていた。ペディキュア界のことはよく存じ上げないのだが、男女構わずにするものらしい。ただ、実際に料金表を見ると、男女では値段が違う。

おっさんと一緒にペディキュアをするなんて不思議だな・・・

そうこうしているうちに、ヘアカットも始まった。ペディキュア用のイスから、ヘアカットの席に移るが、ペディキュアはそのまま続行。シャンプーはどうするんだ?と思ったが、なんら問題はない。席で座ったままシャンプーすれば良いのである。

というわけで、足元はペディキュア。頭上ではシャンプーが行われるという、ダブル施術が始まった。奇妙なスタイルに映るのか、時々モールを歩く客がこちらをみてギョッとしている。見世物パンダになった気分である。

私にとってペディキュアは初めてのことなので、ヘアカットをやりながらペディキュアをするというスタイルが、一般的なのかどうかはわからない。しかし、効率的であることは確かである。

実は凄腕スタイリスト?
ここまで読んだ人は、こんな変な美容院など行くものか!と思うだろう。しかし諸君、人は見た目で判断してはいけないのである。こんだけゆるいノリでありながら、実はこの美容院はクアラルンプールでも結構評判の良い店なのである。そう、評判のいい店を探してたどり着いたのが、この美容院なのだ。

私が初期から指名しているのが、中年女性のスタイリストである。生協で働いていそうなおばさんだったので、大丈夫かなあ・・・と思っていた。しかし、最後にはめちゃくちゃ高い完成度に持ってくるのである。ヘアカットは、スタイリストとの出会いこそが鍵だと言われるが、私にとってのそれは、この生協のおばちゃんなのである。

腕のいいおばちゃんに、行くたびに面白いことが起こる美容院。このエンタメ美容院に、今後も通い続けることになるだろう。おばちゃんに顔を覚えてもらうその日まで。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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