快適すぎる日本が怖い!日本恐怖症候群にかかる

ドバイから帰国後、1ヶ月ほど日本の実家で過ごした。好きなものが食べ放題かつ、自宅でワンコとまたーりする生活はパラダイスである。

イスラーム教徒は、死後に天国へ行くことを念頭に現生の生活に勤しむが、私にとってはすでにここが天国である。もはや、死後の天国などどうでもよくなってくる。

しかし、一方でなんだかむずがゆい。

ついに同じ言語を話し、同じ文化でもって「あ・うん」で通じる社会に舞い降りたというのに、どうも居心地が悪いのだ。

便利すぎるのだ。

自宅から5分も行かないうちに、素晴らしきコンビニというものがあるし、ピアノを弾きたいなあと思えば、楽器レンタル屋で、1時間単位のレンタル料を払い、ピアノの自主練にも励むことができる。

日本人からすれば当たり前やん?と思うが、こういう細かいニーズに対応するサービスや商品というのは、ドバイ(おそらく他の国でも)ではあまりない。

ピアノが弾きたければ、ドバイではとにかくピアノを買うというオプションしかない。品数も少ないので、良い中古品などはなく、高い新品を買う羽目になる。

ドバイは一応資本主義ぶっているが、それでも人口が日本に比べてかなり少ないことと、成熟した資本主義国家ではないので、消費のオプションは限定される。

いいものが欲しければ、とりあえず高級ブランドになる。日本やイギリスのように、ハンドメイドだとか、こだわりのなんちゃらといった無名ブランドで質が良いものは、ほとんど流通していないのである。

髪の毛を安く短時間で切りたいなあ、と思えば1,000円カットがある。

この度、人生で初めて利用したのだが、改善と効率を追求する日本らしい場所であった。ムダを一切排除し、短時間で髪を切るということに特化した場所である。

システマチックだが、私のニーズにはドンピシャであった。なんとお土産でクシまでくれるという、嬉しいサービス付きにはたまげた。

日本、すげえ・・・

どんなささいなニーズにも対応するサービスがある。これが成熟した資本主義国家の姿か。

一方で、むずがゆさの原因は、この快適さにあった。

海外生活初期では、とにかく「ないない病」に苦しんだ。

海外生活が辛いのは「ないない病」が原因かも?日本人が海外で陥りやすい罠

上のように快適する日本を飛び出したことにより、あれもないこれもない、これができない、というフラストレーションまみれの生活を送ることになったのである。

当時ドバイには、アマゾンはなかった。現地のアマゾン劣化版みたいなサービスはあったが、あまりにもショボいのでほとんど使うことはなかった。

この時代にして、アマゾンなしで生きていたわけである。

しかし、生活を送るにつれて、日本で手に入った多くのものが「まあ、なくてもいいっか」と思えるようになった。

日本製の消費財、電化製品、化粧品なども手放し、その辺のもので済ませるようになっていた。

また日本食を食べるコストも、中東のドバイでは非常に高くつく。

ドバイで数少ない日本レストランは、自宅から遠い。また日本食材も、当たり前だが日本で買うよりかは2~3倍の値段になる。

よって、中華、韓国、タイ、インド中華料理などで満足できる体質改造の訓練を行った。これらの料理だと、自宅近辺のスーパーの食材だけで安く済ませることができる。

どうしても寿司が食べたくなった時は、その辺のローカル寿司屋に飛び込むのである。

自由すぎ!常識をくつがえす海外の寿司。寿司バーガーから寿司タワーまで

私はもともと大体のものを美味しいと感じてしまう人間なので、それっぽいものでも満足できるのである。

いや、むしろどこであっても快適に生きていくには、こうした体質転換すらも迫られるのかもしれない。

こうして、1つずつ手放していくと、生活にも気持ちにも余裕が出てくる。

再び日本で暮らすことは、こうした恩恵を存分に受けることである。

けれども、私にとってはせっかく不便な生活に適応できたのに、また逆戻りかよ!という思いがある。

快適すぎて素敵すぎる日本に馴染むと、海外に出た時にまたしんどくなるのでは、という恐怖があるのだ。廃人寸前になる体験を乗り越えての適応は、今でも忘れない。

今後も長らく日本で暮らすのであれば、それはそれでいい。

けれども、たぶんもう日本では暮らさないだろうな、という人間にとっては、その快適さが時にはしんどいのだ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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