TOEICの点数は通用しない。海外で働くのに本当に必要な英語力とは?

日本人の永遠の宿敵、英語。けれども、海外で働くには必須というか、最低条件となる英語。海外で生活したり、働くにはどれぐらいの英語力が必要なのか?

ドバイで働くいろんな国の同僚たちや自身の経験を踏まえて、考えてみたい。

TOEICの点数で英語力を測るのは無意味

日本で英語力を測るとき、何かとTOEICの点数を持ち出す人がいる。けれども、残念ながらTOEICは、確固たる英語力の指針にはならない。TOEICの点数が高いことと、英語で仕事ができるかは別問題だ。

そもそも、TOEIC満点です!などとぬかしたところで、「なにそれ?」と言われるだけである。あくまで、英語力をTOEICでしか測れない一部の日本企業にだけ通用する手形のようなものである。

なにせ普段の会話では、テストのリスニングのように、きれいな英語でゆっくりとはっきりと話すなんてことはない。現実は、インド英語だのイギリス英語だのお国の訛りが入りつつ、みな好き放題に発言するからである。

TOEICのリスニングで流れるような仕事の会話は、実社会においてはほぼ存在しないと言えよう。幻想である。

TOEICの点数で英語力を測ろうとする企業も、TOEICの点数と英語力が比例していると妄信することも、的外れなのである。TOEICの勉強などしている暇があったら、海外YouTuberの動画を1本見た方がよい。

外国人がビビった私の英語勉強法

英語力ゼロでも海外で働ける?

時々、英語力不要で海外で働けるという求人も見かける。けれども、私が思うにそんな求人にロクなものはないんじゃないかと思う。

確かに勤務先は海外かもしれないが、それは日本語でのみの仕事を意味する。もしも、日本企業での就職を今後も考えているのであれば、それでもよい。

けれども、日本や日系企業を離れて仕事をするのであれば、英語は最低条件である。そうした環境を求めるのであれば、英語不要で働ける求人は、キャリアップにもならないだろう。

英語ができなくても海外で働ける?海外で働くリーマンが思うこと

日本の外資系で英語ができても・・・

日本の外資系で英語を使って働ければ、そこそこ英語ができることになるんじゃないか、と思うかもしれない。実際に、私もそう思っていた。

しかし、今にして思えば、日本における外資系の英語なんぞ、高校生レベルである。

私はそれをドバイに来て、痛いほど痛感した。日本の外資では、そこそこ英語ができる人みたいに思われており、英語力にも自信があったが、ドバイにやってきて、「おまえの英語なんとかなんないの?」みたいなクレームをつけられたときは、ショックであった。

外資で英語が出来ても海外では通用しないことを痛感

しかも、会社で当たり前のように使っていた英語の表現が、ドバイのような実践的社会ではほぼ使われていない、ということも衝撃的だった。

なにせ外資といっても、その多くは日本人。たまにいて、東南アジア系止まりである。同じような訛りで、同じように覚えた英語を話すので、だいたいわかった気になる。けれどもそれは単なる身内の馴れ合いにしか過ぎず、適当な英語でもなんとなく許されたという状況であった。

日本ではちょっと英語ができるだけで、過大評価されるように思う。けれども、それで満足していたら、海外に出たときに痛い目にあう。

いうなれば、日本の外資系でそこそこ英語ができるので、レベル1ぐらいだろう。仮に英語圏の出身者が多い外資系であれば、レベル2ぐらい。

ネイティブ英語と非ネイティブの英語が全然違う!

海外に出ても、英語ネイティブが多い環境か否かで、求められる英語力もずっと違う。一番驚愕したのは、あまりにも非ネイティブの英語とネイティブの英語が違いすぎることである。

ここでいう非ネイティブの英語とは、英語を母国語とせず、第2言語として話される英語のことをいう。

同じ英語なのにここまで違うとは。もはや詐欺じゃないか!と言いたくなる。

よく言われるのが、英語を第2言語として話す人の英語はわかりやすいというもの。実際に、同僚たちの話を聞いていると、彼らの使う英語はシンプルで、わかりやすい。小難しい表現や単語は、ほとんどでてこない。けれども、会話はちゃんと成立する。

インド人は訛りは強いし、インド英語と呼ばれる独自の表現を使うこともあるが、フィリピン人の英語と同じくして、シンプルでありわかりやすい。

この 中で仕事ができれば、まあレベル2である。そこそこ英語で仕事ができるかも?という自身がつくし、東南アジアなどの非英語圏であれば通用するだろう。

しかし、そこに英語ネイティブが投入されると、話がまた違う。

え?違う言語ですか?と聞きたくなるほど、聞いたこともない言い回しや表現が多発する。同じ表現であっても、ネイティブと第2言語として英語を使う人間のアウトプットが違うのである。だから、知らない表現や単語にびびって、わからん!という混乱に陥るのである。

大学受験で習ったような小難しい単語を入れ込んでくるので、これは新手のいじめなのか?とすら思ったこともある。

今働いている職場は、3分の1ぐらいがネイティブもしくは、それに該当する人である。英語ネイティブでなくとも、北欧の人や、インターナショナルスクールなどに通って、ネイティブ並みに英語が流暢な人もいる。

非ネイティブであっても、ネイティブ英語がちゃんと聞き取れる人であれば、アウトプットの英語が拙くとも仕事ができる。会話がちゃんと成立するからだ。

聞き取れる英語と、アウトプットの英語は必ずしも比例するとは限らない。なので、聞き取りができて、自分なりのアウトプットができればレベル3。十分にどこでもやっていける。

ネイティブ英語にこだわる必要はある?ネイティブ神話を信じた結果起きた悲劇

心を折られたイギリス英語

さらに、私の心を折ったのはイギリス英語である。イギリス人に会うたびに、狐につままれたような気分になる。アイルランドの人も同様である。

というか、ドバイでイギリス人と働くなんて思いも寄らなかったので、意外すぎるダークホースの出現にたじろいでいる。はっきりって、そんなに高い英語力を要求されるとは、思ってもみなかったである。

次々と微妙に違うイギリスなまりの英語を吹きかけられる度に、「えっ?」と思ってしまう。同じイギリス人でも、聞き取りやすい英語を話す人もいるし、もう完全に意味不明な言語を話す人もいる。

こちらとしては、完全に意味不明だが、状況的に英語ネイティブが正しい英国風の英語を話しているだけである。絶対的に正しいの向こうであって、わからないこちらがアホなんじゃないか、という動揺が一気に体をめぐる。

このとき私は思った。あ〜、アメリカ英語で勉強するんじゃなかった。日本の英語教育は、GHQのおかげでアメリカ英語である。よって、イギリス英語にまったく免疫がない体になるため、独特なイギリス英語に遭遇すると、体が硬直してしまう。

ちなみにこれは私のリスニング力のなさゆえかと思ったが、そうでもないらしい。

比較的、英語ができるエジプト人の同僚もイギリス人同僚に対して、「えっ?何ていったんですか?」とよく聞き返している。イギリス人の中でも特に訛りの強い人がいて、「あいつの英語だけはなまりが強くてわからんな」と多くの同僚に名指しされる人もいる。

さらにはアメリカで6年、ドバイで2年住んでいたというYouTuberも同様のことをいっていた。

とこのように、もはや太刀打ちできない英語に関しては、逃げを決め込んでしまうこともある。

英語+専門スキルのバランス

同僚たちをみると、英語のスキルも結構バラバラである。中には、そんなに明らかに英語が流暢出はない人も紛れていたりする。けれども、そうした人々はプログラマーだったり技術で会社に貢献する人々である。そこまで完璧な英語でのコミュニケーションは求められないらしい。

私も、なんとか専門技術で英語力のなさを補いつつ、仕事をしているというレベルである。

けれども、マネージャーなどの管理職以上は、それが通用しない。積極的に人に絡んでいかなければならないし、上下との意思疎通も重要になる。

この辺は英語力というよりも、コミュニケーション能力とも言えそうだ。言葉を頻繁に使うことになるので、自分の言いたいことだけではなく、周りを巻き込んだりする声がけや、気の利いたジョークの1つでも言えるようになることが望ましい。

単に英語を話すことだけではなく、英語の文化を理解して話すこと、が求められる。それが、仕事に入る前の雑談だったり、ジョークでその場を和ませるといったものである。特に会社で高い役職につく人は、それが顕著である。この辺になると、もうレベル4である。

さらに、知っている単語をいうのだけではなく、場面や伝えたいニュアンスによって、的確な表現を選ぶことも大事である。

変な表現をしたとしても、英語ネイティブじゃないし・・・ということで許されることもあるが、言葉の選び方1つで、伝えている内容もずいぶん異なるという点も気をつけたい。ここまで考えて話せればレベル5である。

英語よりも上達させるべきもの

私自身の英語はまだ未熟だと思っている。英語で働くのが当たり前という世界の同僚に比べると、しょぼいなあと思う。これは謙遜ではない。

それに、毎日英語で仕事をしていても、そんなに英語力は飛躍しない。むしろ、一番英語力が飛躍したのは、一人でゴリゴリYouTubeを聞きながら、知らない表現を書き取り、自分でそれを使えるように訓練していた5年以上前のことである。

自分の英語が未熟だとわかっていても、もはや英語を向上させようという意欲はない。英語を向上させる暇があったら、専門スキルや知識を増やした方が、断然仕事では有利だからである。

英語がかなりうまくても、専門スキルがそこそこの人。英語がそこそこでも、専門スキルが高い人。企業が取りたいのは、圧倒的に後者だからである。むしろ、両方が高いに越したことはないが。

それに、英語は誰もが使えるツールである。英語ができて、同じような専門スキルを持っている人間なんて、世界にはごまんといる。日本であれば、まだ価値はあるかもしれないが、海外で生きていく上では、ほぼ最低条件である。それに加え、別の言語ができた方が、まだ差別化できる。

なので、本当に身につけるべきは高い英語力よりも、高い専門スキルであり、ほかの人と差別化できる第3の言語(プログラミング言語も含め)だと思う。

英語だけじゃだめ!海外で生きるためのもう1つの大事なこと

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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