そんな理由アリ!?前代未聞の理由で会社を辞めた驚くべき人々

ドバイでは、転職が当たり前で大体1〜3年ほどで会社を辞めていくケースが多い。

なぜ転職をするのか。その大半の理由が、もっと給料がいい仕事に就きたいというもの。ドバイで働く人々は、日本で働く人々よりもお金に関して率直だ。むしろスキルアップのため、キャリアのために転職するという理由はほとんど聞かない。

そもそもドバイにいる人々の大半が出稼ぎ目的である。自国よりも高い給料を得たいとか、母国の家族に送金するためだとか。そうしたことも関係しているのだろう。

一方で、聞いたこともないような理由で会社を去っていく人もいた。

ドバイにやってきて2ヶ月で帰国。すべては市民権のために

上海出身のダニエルは、約2ヶ月というスーパー短期で職場を去った。

ダニエルは、非常に愛嬌があり誰からも好かれる性格だった。上海で数年働いたのち、ドイツで1年、オーストラリアで5年ほど働いてドバイにやってきた。

はじめての出社日には、大量のコアラマグネットを持ち込み同僚たちに配るという、プロモーションを実施。常人の目には、職場に馴染もうとする努力ないしは、単なるお土産配りにしか見えなかっただろう。

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しかし、マーケティング業務に携わる人間にはピンとくるものがあった。職場に大量のコアラが出現するとともに、同僚たちがコアラを見る度にダニエルを思い出す。コアラマグネットは食べ物と違い、捨てない限り消費されることがない。常にそこに居続けるのである。

しかもコアラを嫌いな人はいない。動物の中でも比較的好まれる動物だ。そんな人気度の高いコアラを据えて、好感度をあげようとは・・・・なんとよくできたブランド戦略なのだろう。よく見れば、ダニエルにどことなくコアラの面影を見出せないこともない。

ダニエルはそのマスコットキャラクター的な愛くるしい外見によらず、なかなかのやつだった。見ず知らずのドバイにやってきて数週間後。「アブダビの砂漠に行ってきたんだよ〜」といって、アブダビの高級砂漠ホテルにて、「友人」と称する美女と戯れる写真を見せつけられた。

ん?

コアラなのに・・・?やや違和感を覚えたが、それもダニエルのコアラのような愛嬌と人の良さですぐにかき消された。

そんなダニエルが会社を辞めて退職をするという。まだドバイにやってきて2ヶ月もたっていない。

聞くと、ダニエルはオーストラリアで市民権を申請していたとのこと。その申請中に、海外で長期滞在することは禁じられているらしい。即刻オーストラリアに帰らなければ、申請が取り消しになる。こうしてダニエルは、オーストラリアに戻ることを決意した。

皆がダニエルとの別れを惜しんだ。こうしてダニエル旋風はあっという間に去ってしまったのである。ダニエルが去った今も、あのコアラたちは職場の各所に居続けている。

宗教上この仕事を続けられません。退職の決断は宗教指導者の助言!?

宗教と書くと、日本では一様に新興宗教を思い浮かべる人もいるかもしれないが、ここにおいての宗教とは3大宗教の1つ、イスラーム教のことである。イスラーム教徒の人口は現在世界で18億人。れっきとしたメジャー宗教である。

中南米の国で生まれ、フランスのパリへ移住。その後、パリで結婚したという妻を残し単身でドバイに乗り込んできたのがハムザだ。もともとはクリスチャンだったというが、イスラーム教徒であった妻と結婚するため、イスラームに改宗したのだという。なかなかアツい男である。

単に結婚の便宜上、改宗したのかと思いきやハムザの信仰度はかなり高かった。信仰深いイスラム教徒の男性がよくやるように、あごひげをたんまりと伸ばしていた。来月にはパリにいる妻をドバイに呼び寄せるんだ、と話してくれた。

「パリはな、イスラム教徒にとっては風当たりが強い場所なんだ。女性がスカーフを街中でかぶろうものならひっぱがされるんだ。怖いぜ〜」など冗談めかしていたこともあった。けれども、私はその冗談を真に受けて「パリは怖い」という情報だけをインプットした。勝手な情報操作もいいところである。

そんなハムザだが、このところ会社で姿を見ていない。彼と親しかった同僚に尋ねると会社を辞めたのだという。まだ3ヶ月の試用期間も終わっていないのに?

意外な理由だった。ハムザが担当していたのは、住宅ローンを扱う事業。生真面目なハムザは、住宅ローンがイスラームの教えで禁じられている「利子」を含んでいるのではないかと考えたらしい。

イスラームの教えに反しているのでは?やべえ!と焦った真面目ハムザは、イマームと呼ばれるイスラーム教の指導者に相談。簡単にいうとイマームは、時には礼拝を先導したり、迷えるイスラム教徒の日常の疑問や相談に答えてくれる人である。

ハムザが、かかりつけのイマームに相談した結果、彼はイスラームの教えに反するものに従事してまで仕事を続けられないと判断し、会社を辞めていった。

ドバイにやってきてまだ数ヶ月。しかも来月には妻をパリから呼び寄せる予定だったのに。

しかしハムザが選んだのは、仕事よりも信仰心だった。その信仰の高さにたまげてしまった。

ちなみにイスラーム教徒がみな、このような判断をするわけではない。中には私を含めて、「利子」がつく業務であってもそのまま仕事をしている人もいる。人それぞれなのだ。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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