クールジャパンの失敗!?マレーシア伊勢丹、ららぽーとのヤバすぎる惨状

あれ、知らないうちにまた新しいコンビニができてる。そんな感覚と頻度で、マレーシアでは日夜、新しいショッピングモールがタケノコのように出現している。

ショッピングモールの作りすぎは、素人からしても明らかである。この1年間で分かったが、マレーシアにおいて人で賑わうショッピングモールは、数える程度しかない。

マレーシアのショッピングモール事情

アルジャジーラもこれを問題と捉えたのか、「マレーシアがアホみたいにモールを作っている!客は来てないけどね」という嫌味な記事をこしらえているほどだ。それによれば、マレーシア全土では、4,000ほどのモールがあるという。人口は日本の4分の1なのに、日本よりもその数は多い。

その結果どうなるのか。ショッピングモールのゴーストタウン化である。人のいないショッピングモールほど、消費意欲を萎えさせるものはない。よくいえば、常に貸切のような状態とも言えるが。

そんな誰もいなくなったモールには、日系のモールも含まれている。それが、伊勢丹、ららぽーとである。

心霊スポットと化したららぽーと

三井ショッピングパークでお馴染みのららぽーとだが、マレーシアでは、人が全くいない不人気モールとして知られる。立地もよく、週末だというのに、客は両手で数える程度しかいない。というか、一度も人手賑わっている姿を見たことがない。

はて。もはや閉店寸前なのかなと思いきや、このららぽーとができたのは、まだ2022年のことである。

この不人気理由を、立地のせいとする見方もある。ららぽーとがある土地は、かつて刑務所があった場所である。コレラによる受刑者の大量死や、旧日本軍による捕虜収容など、約100年に渡り使われたという、別格の刑務所。今もなお、ららぽーとの側には、刑務所の名残を残した門が残されている。

そんなわけで、ジモティーからは、心霊現象が起こる心霊スポットだとささやく人もいる。実際に、近くに誰もいないはずの扉が勝手に閉まる現象をとらえた動画も出回っている。ただしこちらは、イタズラ動画だということがのちに判明。心霊スポット呼ばわりをされるモールなど、たまったものではない。

異界の伊勢丹

伊勢丹に至っては、別の理由がありそうだ。何せ立地としては最高の場所にあるのだが、伊勢丹以外には人がこんもりといる状態なのである。まるで、満員電車のやばい奴みたく、その周辺にだけ人がいないという、不可思議な状況が発生している。

クールジャパンプロジェクトの一環として作られた、KL随一の繁華街、ブキッビンタンにある伊勢丹は、もはやこの世の終わりである。24時間365日ほぼ無人と言えるぐらい、客がいない。流行のファッションやオシャレアイテムなどを綺麗に並べ、伊勢丹イズムをちらつかせているが、それになびくジモティーはいない。もはや隙間風が吹く掘建小屋のような薄寒さを覚える。

しかし、伊勢丹を一歩でると、一気に人通りが多くなる。あれはなんだったのか・・・まるで幻を見たような、異界に紛れ込んだ気分になるのである。

それが一企業の取り組みならまだ良いが、クールジャパンのプロジェクトということで、10億円近くの国税が異界に注ぎ込まれたとなれば見過ごすことはできない。同じくここを訪ねた、作家の古谷経衡氏さえも、私はかつて、これほどまで無駄と傲慢と不採算に満ちた商業施設を見たことがない」などと言っている。

ブキッビンタンと並び、多くの観光客が集まり、常時混雑するスリアKLCCにも伊勢丹はある。いつ行っても人がたくさんいるモールだというのに、モール内にある伊勢丹に足を一歩入れるとあら不思議。まるで宇宙のような静けさが広がっている。

マレーシアの伊勢丹週末の昼間だというのに、妙な静けさが漂う伊勢丹のデパコスコーナー

客が来ないせいか、百貨店の顔とも言えるデパコスコーナーも、離島のひなびた土産物屋のようなゆるい空気が漂っている。デパコス売り場が怖いとのたまう人々に、ぜひこの光景をお裾分けしたい。

なぜ日系モールに人が来ないのか

これだけ立地が良いのに、客が来ないのは、やはり伊勢丹側に問題があるのだろう。同じブランドであっても、伊勢丹のデパコス売り場に、寄りつく客はいないのに対し、数十メートル離れた同じブランドの店には、人が集まっているのである。よって、価格帯やブランドが理由にはなりそうにない。またマレーシアでは、親日な人も多く、アニメや漫画なども人気である。

どちらかというと、日本で売れるとされる店のディスプレイや商品ラインナップが、逆に裏目に出ているような気がする。百貨店が寄せ集めた選りすぐりの品を美しく魅せ、お客はそうした洗練した雰囲気で買い物を楽しむ。伊勢丹で買い物をする、という行為自体に価値を見出している人も少なくはないだろう。

一方でマレーシアのジモティーは、そんなことはさほど気にしていないように見える。安い、美味い、コスパが良い、ブランドがかっこいい、そうしたシンプルな理由で消費をしているように思える。そもそもモールでの様子を見ると、圧倒的に賑わっているのは、飲食店やスーパーである。

活躍する日系企業たち

敗者となった伊勢丹、ららぽーとに対し、勝者もいる。もはや日系企業という枠にはまらないユニクロはもちろんのこと、ドンキやカラオケまねきねこは、最近いろんなモールに進出しているが、そこそこお客がおり、繁盛している様子がうかがえる。またイオンに関しても、しっかりとローカルに馴染んでおり、異端者の伊勢丹、ららぽーととは一線を画している。

紀伊國屋や蔦屋も同様である。マレーシアで一番巨大な本屋といえば、紀伊國屋であるし、最近できた蔦屋も常に人で賑わっている。マレーシアで本を呼んでいる人を見たことがなく、日本に比べると本を読む習慣はあまりなさそうと思っていたが、この勝利の本屋たちを前に、意外と本に対する需要は高いのだということがわかった。

もちろん漫画という強い武器があることは間違いないが、日本に関心を持つ若者が、日本語の本売り場にたむろしていたり、中国語の本の取り扱いの多さを見ると、多様なニーズがあることが伺える。

よって同じ日系企業でも、その明暗が分かれるのは企業次第なのかもしれない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。

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