【2023年】キナバル登山前に知っておきたかったこと。費用、服装、持ち物など

キナバル登山をやってみて、実際に感じたことや、登山前に知っておきたかったことをご紹介。

キナバル登山のポイント

・キナバル山の標高は4,095メートル。マレーシアの最高峰
・登山ルートは登りと下りで同じ。片道8.72キロメートル
・キナバル山への最寄りの都市はボルネオ島のコタキナバル。マレーシアの首都から飛行機で2.4時間
・キナバル登山はロッジへの宿泊が基本のため1泊2日はかかる
・登山は定番コースと、ヴィアフェラータ付きコースの2種類がある。定番コースを選ぶ登山客が多い
・コースや国籍(マレーシア人 or 海外登山客)によって泊まるロッジが分かれている
・小屋のキャパにより、1日に登れる登山者数が限定されている。そのため早めの予約が推奨される
・個人であれツアーであれ、登山ガイドは必ずつける必要がある
・キナバル登山の料金は、2023年以降値上がりしている。登山許可証、ガイド料ともに50%以上値上げされている。

登山のベストシーズンは?

基本的にキナバル山は1年を通して登れるが、快適に登るなら乾季の3月から9月がおすすめ。ただし、キナバル登山は、登山者の人数がロッジのキャパ上、1日163人に限定されているため、早めの予約が必要となる。特に中国の旧正月や日本のGWは混みやすい。台湾やシンガポールなどの中華系登山者はかなり多いためだ。

目安としては、数ヶ月前の予約が推奨されている。ただし、雨季で1人だったためか、私の場合は、2週間前でも予約が取れた。また雨季の場合、コタキナバルのホテルもかなり安く泊まれるのが嬉しいポイント。

また、非常にレアなケースだが、気候の都合(主に雨)で、山頂ゲートが閉まることがある。と言っても、その確率は年間で10~15回程度(雨季が多い)のため、そこまで気にする必要はないだろう。

キナバル登山には何日必要?

1泊2日のパッケージが一般的。登山をするだけなら、十分な日程と言える。しかし、ヴィアフェラータの参加を考えている、もしくはキナバル山の自然をしっかりと味わいたいという人であれば2泊3日も考慮して良いと思う。

私はヴィアフェラータの付きで1泊2日プランにしたが、体力と天候のせいもあってか、せっかくのキナバル山の植物があまり楽しめなかったのが残念であった。ただ2日3泊にすると、小屋で過ごす時間が長くなるため、ちょっと疲れるかもしれない。

キナバル山の豊かな自然

キナバル登山にかかる費用は?

コロナ前の登山者のブログを見ると、ツアー会社を通してもだいたい4~6万円が相場だった。しかし、昨今の円安と入山料等の値上げのためか、外国人登山者の場合、おおよそ7万円〜が相場となっている。

グループで行けば割安となるが、単独の場合はさらに高くなる。キナバル山のツアー場合、単独の登山者を集めてグループで行くという方法はない模様。

私の場合は、ヴィアフェラータ込みの1泊2日パッケージを1名で申し込み、3,690リンギット(約12万円)だった。もちろん、山での食事や宿泊費はすべて込みである。

1週間のキリマンジャロ登山がだいたい30万円弱だったので、かなり高く感じた。ユネスコの自然遺産で、かなり管理が行き届いていること、ローカルガイドたちへの還元を考えると妥当なのかもしれない。

どのツアー会社がおすすめ?

私が依頼したのは、トリップアドバイザーでも評価が高かったAmazing Borneo Toursである。

正直、ツアー会社を通しても個人で言っても登山自体はそれほど変わらないと思う。個人で行っても、必ずガイドをつけなければならない。ツアー会社を通したからといって、専任のガイドが付くわけではなく、ランダムにガイドが割り当てられる。ロンプラでも、どのツアー会社であってもガイドの質はそれほど変わらない、と書いてあったのが納得だ。

ツアー会社を通すメリットとしては、宿泊予約の代行やキナバル山への送迎がついていることぐらいだろうか。どの会社であってもパッケージ内容にそれほど差はないと思う。

高山病対策と実際の体験

4,000メートルを超える山とあって、心配だったのが高山病。対策として私は以下のことを行なった。

・前日は十分な睡眠を取る
・喉が渇かなくてもこまめに水を飲む(夜に目が覚めた時も飲む)
・ろうそくの火を消すように息をしっかりはく呼吸を心がける(←富士山の診療所で、高山病にかかった患者へのアドバイスを踏襲)
・小屋でのビュッフェディナーが美味しいからと言ってあまり食べすぎない(←高山では消化機能が低下するため)

おかげで今回は全く高山病にかかることはなく、ダイアモックスにお世話になることもなかった。

ロッジでは8時が消灯時間となるが、眠れたのは9時過ぎ。高山で空気が薄く、体は疲れているとはいえ、眠りにつくのにも時間がかかった。また深夜に、脳がパニックになるような感覚に襲われ、目が覚めたが、水を飲み深い呼吸を繰り返すことで落ち着いた。

キナバル登山に必要な持ち物と服装

後悔と教訓を込めて、これは持っていけばよかったなあという、持ち物や服装をご紹介。

ちなみにコタキナバルの市内では、登山グッズを扱う店がそこかしこにあるので、手ぶらで来た場合は、ここで手に入れても良いと思う。逆にクアラルンプール市内では、品揃えが少なかったり、アウトドア店の場所が点在していたりするので、登山装具を集めるのにも一苦労する。キナバル山のロッジでも、数は少ないがダウンや帽子などの防寒グッズを購入することができる。

靴だけはちゃんとしておいた方がいい

にわか登山者として言いたいのが、靴だけはいいクオリティのを履いておけということである。私はアシックスのトレランシューズで登ったのだが、たった2日で赤ちゃんから70歳の老人の如く靴が老け込んでしまった。つまり靴がズタボロの状態になった。

特に防水機能は必須。雨で靴が濡れると、翌日履くのもおっくうになる(ロッジで乾かしてもらったのでことなきを得たが)し、登山中も惨めな気持ちになる。


ジモティーガイドは、アディダスカンポンと呼ばれるゴム製の靴やサンダルで登っているが、これは何度も登っているプロだからできる所業である。

荷物を少なめに。不要な荷物は事務所で預けるべし

靴に続いて犯した失態が、カバンがパンパンの状態で登ったことである。登山前の管理事務所で、かさばりまくるランチと、折りたたみ式の水ボトルを渡され、泣く泣くカバンに横付けする羽目になった。

登山中に使わない荷物は、事務所で預けた方が賢明だろう。事務所で預ける場合は1つの荷物につき12リンギットかかる。また、ポーターを雇って持ってもらうこともできる。ポーターを雇う場合は、距離にもよるが10キロ当たり140リンギットから。

雨は降ることを前提で考える

乾季でも雨は降ると考えた方が良いだろう。セパレートタイプもしくは膝まで隠れるぐらいのカッパとザックカバーは必須。ジモティーガイドは傘を指している人もいたが、登山客はほとんどカッパで対応。

手袋はかなり活躍する

山頂までの岩場をロープをつたって登るコースもあるため、しっかりとしたグローブが必要。また防寒対策としても役立つ。特にヴィアフェラータをやる人は、必須。私も1枚だけ持っていったが、1日目で雨で濡れてしまい使えなくなったので、ガイドに泣きついてガイドのグローブを借りた(その後、グローブはボロボロになった)。ちなみにロッジでは軍手を販売している。

意外と寒いので防寒対策はしっかり

マレーシアの熱帯雨林だから暑いだろ、と思っていたが登山開始からやや肌寒いくらいである。キナバル登山では暑さ対策よりも防寒対策が重要なのだと感じた。ロッジ内の気温は10度程度だったが、雨に濡れたためか、寒さがかなりこたえたので、薄手のダウンやしっかりとしたフリース、カイロがあればと思った。

1日目は半袖、短パンでも気温的には問題ない。ただロッジから山頂までは、長袖、長ズボン、フリース(もしくはダウン)での対応が必要。

水は1日1~1.5リットルで十分

初日に1.5リットル+500ミリ(事務所でもらったもの)用意していったが、雨による寒さもあってか、1リットル弱しか飲まなかった。登山中の給水は大事だが、あまり多く持っていくと荷物になるので注意。途中の休憩所で、給水する場所はないが、ロッジにつけばお湯やお水が飲める。

ランチには期待するな

意外だったのが、支給されたランチと行動食のしょぼさである。季節によって違うようだが、私の時はサンドウィッチ、ゆで卵(剥いたらボロボロで食べることがほぼ不能)、りんご、とローカルスナックであった。

行動食は多めに持ってくるべし

しょぼいランチという誤算により、持参した行動食は半日でなくなり、ロッジの小屋で買い足す羽目になった(夕食のビュッフェ会場に売店があるが、山なのでお値段はやや高め)。また、1日目のビュッフェディナーは5時ぐらいから始まるため、1時ぐらいにロッジに着くと結構時間があまる。おにぎりやインスタントスープなどを持ち込んでもよかったと思う。

ヘッドランプ&帽子

2日目の山頂アタックは、朝の2時半〜から始まるのでヘッドランプは必須。登山者の多くは防寒も兼ねて毛糸帽をかぶっていたが、通常の帽子でも寒さに耐えられる。

山頂アタック用のデイパック

2日目の山頂アタックの際には、山頂で使わない荷物以外はロッジに置いておくことができる。必須ではないが、小さめのカバンがあった方が良いかもしれない。

ポールはあればよし

個人的には持っていかなかったが、下山時にガイドが貸してくれたため、かなり助かった。1本あると便利。エアアジアに搭乗する場合は要注意。登山バッグのサイドポケットにポールをさして機内に持ち込もうとしていた登山客が、ポールは預け荷物!と係員に誘導されていた。

体拭きシート

ロッジにはシャワーも付いているが、基本的に水しか出ないと考えた方が良い。寒くて入っている人もほとんどいなかったので、体拭きシートで十分だろう。

トイレットペーパーは最低限でOK

途中のシェルター(休憩小屋)にはトイレがある。紙はもちろんない。一方で、ロッジのトイレでは紙が完備してあるので、最低限のティッシュぐらいで十分だろう。1ロール使い切ることはない。

耳栓

ロッジはドミトリーなので、寝る際に音が気になる人は耳栓を持って行った方が良い。

虫除けは出番なし

通常私は蚊によく刺されるため持っていたっが、高山のためか蚊に刺されることはなかった。

登山のスケジュールと流れ

1日目

コタキナバル市内から、キナバル山までは車で約2時間。ツアーを予約した場合は、朝5~6時に迎えがやってくる。

管理事務所で手続き
キナバル公園で登山手続きを行う。この時パスポートは必須。登録時間は7時から10時半まで。ここで本日のガイド発表と、ランチが支給される。事務所には飲み物や食べ物を買う場所はないが、出発ゲートのところに、ミニキオスクがある。また、事務所から徒歩10分ほどのところに、レストランもある。

出発ゲートへ移動
事務所からミニバンに乗り、出発地であるティンポホンゲートへ向かう。車で10分ほどの距離。9時〜11時半ぐらいには、全ての登山客が出発している。

登山開始
ロッジまでの道のり6キロメートルをひたすら登っていく。直線の道はほとんどなく、ひたすら登っていく印象。途中にはシェルターと呼ばれる簡素な休憩所がある。4キロメートル地点のシェルターで、ランチをとる登山客が多い。ただ時間帯によってシェルターが混み、立ち食いとなることもある。余談だが、喫煙者に優しいマレーシアゆえか、シェルターやロッジにも喫煙所が設けられている。

ロッジ到着
標高3,200メートル付近にあるロッジに到着。12時~15時ぐらいには、ほとんどの登山客がロッジに到着している。ここでガイドとも一旦お別れする。ロッジはいくつかあり、夕食ビュッフェが開催される宿泊所付きのラバンラタ、ヴィアフェラータ参加者専用のペンダントハット、マレーシア人専用のレマイングホステルなどがある。

夕食と就寝
夕食は16時半から。時間帯によっては、席が確保できないこともあるので、早めに行くのが良いだろう。ロッジの消灯時間は20時。

2日目

山頂へ
ロッジから山頂への距離は2.72キロ。おおよそ3時間の道のりである。午前2時前に簡素な朝食(食パンのみ)をいただき、2時過ぎには再びガイドと合流し、山頂へ向かう。

山頂は狭いので、ミッキーとの撮影のごとく、記念写真のための行列ができる。日の出前に山頂に着くと真っ暗闇で記念撮影を行うため、ちょっと時間がかかる(ブレたり、光の加減でうまく撮れない模様)。一方で、夜明け以降だと、登山者が次々とやってくるので撮影を早々に切り上げなければならない。

下山
8~10時にはほとんどの登山客がロッジへ戻り、2度目の朝食をとる。ソーセージやマッシュポテト、豆などバラエティに富んでいて嬉しい食事。荷物をまとめて、11時過ぎから下山が始まる。再び、出発ゲートへ戻り、事務所へ。事務所で登頂記念カードを受け取り、コタキナバル市内へ戻る。

チップはどうする?

マレーシアにはチップ文化はない上に、登山する場合はすでにガイド料として1万円以上払うことになる。ちなみにキナバル山があるサバ州の平均賃金は20万円前後。また、ガイドといってもそこまで高度なガイドをしてくれるわけでもないので、基本的には払わなくて良いだろう。

払う場合の相場は、だいたい30リンギット。しかし、私の場合はポールやら、グローブを貸してくれ(しかもボロボロにした)たという負目により、やや多めの50リンギットを心付けしておいた。

キナバル山は東南アジア最高峰?

キナバル山を語る時、よく東南アジア最高峰と言われる。登山予約した時は、ふーんとしか思っていたなかったが、よくよく調べるとあれっと思う。そもそも東南アジアの定義も微妙だ。

東南アジアにインドネシアも入っているかと思いきや、パプア州はインドネシアなのにオセアニアの扱いである。パプア州が入れば、標高4,884メートルのプンチャック・ジャヤの方が高いわけだし、ミャンマーの最高峰カカボラジ山は、5,581メートルである。

ただ両者とも今に至るまで、それほど登山客は多くなく、登るのには相当ハードルが高い。プンチャック・ジャヤは、過去に地元部族による登山客の人質・殺害事件が起きたため、ヘリ登山となる。そのため、値段も100万円以上するのだ。

というわけで、誰もが気軽に登れる山としては、キナバル山が確かに東南アジア最高峰と言えるのかもしれない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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