日本の正月など比ではない。マレーシアの旧正月がスゴ過ぎた

マレーシアにやってきて初めての旧正月(チャイニーズニューイヤー)がやってきた。日本の正月みたいなもんだと思っていたが、次元が違う。同じ正月なのに、なんでこうも違うのだ・・・

というわけで、旧正月の気合いの入れ様をご紹介したい。

テーマカラーは赤

日本の正月におけるテーマカラーは?と聞かれても、いまいちピンとこないだろう。しかし、旧正月のテーマカラーは、旧正月のことを知らない人間でも一瞬で正解を叩き出せる。何せこの時期には、ラッキカラーの赤が町全体を情熱的に染め上げるのである。

マレーシア旧正月
モール内は旧正月仕様にド派手に飾られている。ジモティーたちはこうした装飾とともに、写真を撮って楽しむ。


クラルンプール随一の繁華街、ブキッ・ビンタンにあるパビリオンの入り口が、ランコムにハイジャックされている


設営されたランコムのイベント会場には、新年への願いが吊るされていた。お金が欲しい、ダイエットに成功、平和と安全、健康でいられますように、など人々の願うところは人類共通の様である。


モールの一角やチャイナタウンのショップでは、旧正月アイテムがずらりと並ぶ

旧正月だけの限定・コラボ商品が登場

普段は、朝の歌舞伎町のように閑散としている店舗でも、旧正月前はゴールドラッシュのごとく人々が押し寄せている。旧正月がどれだけ人々の購買意欲を掻き立てているかがわかる。

シャネルに並ぶゴールドラッシャーたち

よって、高い購買意欲を刈り取るため、各企業はコラボアイテムや限定商品、大規模なセールなどを繰り出す。よって、通常であればブランド的に赤を押し出さないブランドも、この時期ばかりはそのポリシーを捨て、赤に走るのである。


アディダスもレッドカーペットともに赤を全面に出している

あまり赤のイメージがないカルバンクラインもこの時期だけは、赤がメイン

ユニクロも参戦

今年の干支は辰なのでドランゴをあしらった商品も。ザラはドラゴンをあしらった旧正月限定アイテムを出している。どちらかというとポケモンのミニリュウに見える。まあ、ドラゴンには変わらないが。

スタバの旧正月限定アイテム

町中にあふれるみかん

旧正月を盛り上げるのは、テーマカラーの赤だけでない。旧正月前には、これでもか!と言わんばかりのみかんがスーパーにこんもりと積み上げられ、圧倒的な存在感を出している。果物界では普段地味なポジションにいるみかんも、縁起がいい食べ物として、この時だけはスーパースターの扱いである。

旧正月みかん
他の果物を押しのけてみかんが目立っている

我々からすれば、みかんは食べる以外の何物でもない。しかし、あれだけみかんが過剰供給されているのだ。人間の胃袋にすべて収まるはずはない。そう、旧正月ではみかんを交換したり、投げたり、食べる意外にもみかんは活用されるのである。

みかんは縁起のいいものなので、新年おめでとう〜という言葉を添えてみかんを交換したり、独身の男女が結婚できますように〜ということで、旧正月の15日目には、みかんに名前や電話番号など個人情報を書き込み、海や川に投げる風習もある。

こんなところにもみかんが活用されている

またみかんだけでなく、みかんの木もまた縁起の良いものとして、旧正月にはみかんの木が至る所で飾られる。こうしてみると、華人の人々がいかに”運”や”縁起”を大事にしているか分かる。

みかんの木以外にも、桃の花や蘭、竹なども縁起のいい植物として、旧正月の時期にはよく見られる。

スーパーも旧正月仕様に

普段はなんら変哲のないスーパーもこの時ばかりは、陳列に地殻変動が起きる。スーパーの入り口は、物流センターのごとく、箱に丸ごと入ったみかんや、ジュース、お菓子が積み上げられている。そう、旧正月は家族や親戚らが総出で祝う大イベントなのだ。

  大量のジュースやお菓子が売られている特設売り場。コストコと化している。

中には旧正月に関係なさそうなオートミールもどさくさに紛れてプロモーションをしている。通常のオートミール商品に加え、ドラゴンをあしらった限定のお皿が付いている。

まさかの玄米も旧正月バージョンに。いつも買っている商品だがパッケージがあまりにも違いすぎて、同じ商品が認識できなかった。

普段でさえ華人たちは、やたらと大勢で食事をする。恋人や数人の友達としっぽり楽しむようなレストランであっても、中国の人々は大円陣を組んで、賑やかに食事をする。実際にとあるレストランに入ったら、一人客は私だけ。近くの2人組は韓国人。10人ぐらいで席を囲むのは華人みたいなことがあった。

高齢化や核家族化が進み、「一人おせち」なんぞが登場する日本とは真逆なのである。ちなみにマレーシアの旧正月では、イーサン(魚生)というのが、日本のお節に値する。これは、中国や香港では見られないものだという。野菜を千切りにしたものを1つの皿に並べ、食べる際には、箸で高く持ち上げて願掛けをして食べる。もちろんこれは一人でやる儀式ではなく、みんなで一斉に行うものである。

スーパーに売られているイーサンセット。1パックで8~10人前。旧正月の招集力を思い知らされる。

イベントも盛りだくさん

旧正月アイテムだけでなく、イベントもこの時期は目白押し。市内の主要ショッピングモールやセントラルマーケット、チャイナタウンでは、週末の昼や夕方あたりから、ライオンダンスなどの催しが開かれる。言ってもせいぜい数十人ぐらいがみるんだろうと思いきや、ジャスティンビーバーがきましたよ、と言わんばかりの観覧数なのである。

しかも地上で獅子が舞う通常のライオンダンスに比べ、ポールライオンダンスは、もはや中国雑技団レベルである。これは、確かに足を止めて見てしまう。何せ2メートル以上もあるポールの上を、2人組の獅子がジャンプしたり、飛び跳ねたりするのだ。

そして新年といえば欠かせないのがやはりお寺参り。東南アジア最大規模とも言われ、市内で最も見応えがあると思われる天后宮では、縁起のいい赤を身につけた参拝客で溢れかえっていた。

海の神様が祀られている天后宮は、仏教、道教、儒教の要素を取り入れた寺で、日本のお寺とは似ても似つかない。人々が祈りを捧げる様子も日本とは大きく違う。線香を持って膝立ちで祈ったり、土下座スタイルで祈ったりする。タイや韓国も同じようなスタイルである。どちらかというとイスラームの祈りスタイルに似ている。

というか宗教の祈りのスタイルは、どこも似たり寄ったりなのだろう。賽銭をなげて、パンパンとして立ち去る、という日本の簡素なスタイルは、仏教界においては少数派なのではないかと思ったりもする。

旧正月といえば、爆買い、大移動というイメージしかなかったが、世界的な企業も巻き込んでの一大イベントと化しているのが実情らしい。マレーシアへ観光に来る際は、町中が活気にあふれるこの時期が一番良いのかもしれない。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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