マレーシアの不思議な店員その3

ただ買い物するだけなのに、マレーシアでは色々と考えさせられることがある。いや、もしかしたら私が考えすぎているだけなのかもしれない。

マレーシアのコスメやスキンケアショップに行くと、しばしば男性店員に出くわす。いや、勝手に男性と決めつけるのはよろしくないが、生物学上は雄の成りをしているので仮にここでは男性店員としておく。

東京で同様のショップに行くこともあるが、男性店員に遭遇したことは一度もない。しかし、ここマレーシアでは頻繁に起こるのである。だから、マレーシアでは”普通”のことなのだろう。

しかも店員がBTSのメンバーみたいに、キラキラしていると、こんなおばさんで、さーせんである。例によって変な先入観により、”男性”で大丈夫なのかしらん?とすら、疑念を抱いてしまう。

しかし、懇切丁寧な接客を受けると、まあ男性でも女性でも知識があれば変わりないか。むしろメイクアップアーティストは、男性の方が多いじゃないか。という脳の切り替えの速さである。それに、中東のマーケットでは、ド派手な下着をおっさんが売っているわけだし。この際、どうでも良いのである。

というか私自身、生物学上は女の成りをしているが、それほど美容の知識があるわけでもないし、女子力とやらも全くみなぎっていない出立ちである。関係ない話だが、ブログを書いていると、だいたいおっさんだと思われることが多い。

とあるスキンケアショップで接客してくれた男性定員は、日本人でもびっくりするぐらいの接客を披露した。何がすごいって、乳液とクリームの違いがよくわかっていない筆者に対して(これで通常の方は、私の女子力レベルがわかるだろう)、最初に化粧水をつけて〜、この美容液をつけて〜、などと、美容YouTuberのごとく細かく解説してくれるのである。

さらにビビったのは、それをポストイットに書き込んで渡してくれたことである。

ひえっ

こんな接客受けたことない!

と感銘を受ける一方で、店のレビューを見ると「女性のスキンケア商品なのに男性が売るなんておかしいでしょ!」という声もあった。確かにホルモンによる肌質を考えればそうなのかもしれない。

翻って日本を考えると、美容系のショップは、女性店員が多いのも不思議だよなあと思う。デパコスの美容店員といえば、だいたい女性というイメージを抱いてしまう。しかし、Shu Uemura、アンドビーなど日本のメイクアップアーティストといえば、男性が多いイメージ。

日本社会にはやたらと、女子だとか男子とかいう言葉が溢れている。女性起業家、女子プロレスラー、美容男子、山ガール、慶應ボーイ、カープ女子うんぬんかんぬん。これらに共通していることは、反対語は男性起業家とか、山ボーイなどとならないことである。

無意識であっても、日本はどこかしら女性とか男性とかといったジェンダーを意識しながら、生きていかなければならない社会なのだろう。何をやっても、男性か女性かで人々にレッテルを貼られる。あな、大変や。

もちろん日本だけでなく、これまで私が生活してきたイスラーム圏の大半の国は、特にこの差が厳しい。女だからやっちゃいけない、こうしなきゃダメ、など日本よりもその差は明確で厳しい。

マレーシアは厳格に男女というものを定義し分別するイスラーム教が国教のはずなのに、そうした厳格さは見当たらない。むしろ、そんなの関係ねい!と言わんばかりに、あるがままである。これがマレーシアは”ゆるい”と呼ばれる所以なのだろうか。

こうしたマレーシアのゆるさに、足を踏み入れるとどこかホッとしてしまう。と同時に自分が望むあるべき社会が広がっているようにも見える。たかがショッピングとはいえ、なかなか趣深いショッピングになるのがマレーシアである。

20代後半から海外で生活。ドバイで5年暮らした後、イスラーム圏を2年に渡り旅する。その後マレーシアで生活。大学では社会科学を専攻。イスラエル・パレスチナの大学に留学し、ジャーナリズム、国際政治を学ぶ。読売新聞ニューヨーク支局でインターンを行った後、10年以上に渡りWPPやHavasなどの外資系広告代理店を通じて、マーケティング業界に携わる。

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