12月中旬、再び日本を出発し海外へ出た。
4月に旅を中断し日本に戻ってから9ヶ月が経った。最初の頃は、数ヶ月すれば旅に戻れるだろうと思っていた。
しかし、待てども待てども状況は変わらない。むしろ次々と国境が閉鎖し、飛行機は飛ばなくなり、事態は悪化するばかりである。
もうこれ以上待っても同じじゃね?
ということで、行ける国から行こうということにした。トランプ大統領だって「コロナに人生を支配されるな」と言っているわけだし。コロナでできないことを悲観したり、コロナのせいにしてやりたいことを先延ばしにするよりも、今できることをやるべきなのだ。
しかし、コロナだからできない、と思い続けてきた思考ループからの脱却は、一手間かかる。けれども、なんでもできるという前提でやれば、それなりの道が見えてくるようになるらしい。
行きたい国ではなく、行ける国を探す
とはいえ、コロナが蔓延しているのは事実なので、この状況下で行ける国を探すところから始まる。これが結構難しい。いろんな情報が錯綜している上に、情報もコロコロ変わる。
私が行き先を探していた11月初旬時点で、日本からの観光客を受け入れ入れる国はそこそこあった。
しかし、そうした国でも、入国後に必ず自宅待機しなければいけないだとか、自費でPCR検査を受けなければいけない、などの条件が多々つく。
結局、候補として残ったのがモロッコ、トルコ、パキスタンの3カ国だった。しかし、モロッコは観光客を受けている一方で、陰性証明書が必要、コロナ感染者が急増中な上、国内で大規模な移動制限が課せられていたので、却下。
パキスタンは、日本からであればPCR検査は不要だったが、パキスタンに行くなら山岳地帯に行きたいと思い、春以降に回すことにした。
よって現状行ける国として残ったのが、トルコである。ここに到るまでにものすごい時間がかかった。
飛行機搭乗に陰性証明書が必要?
次にやるのは航空券を買うことである。いつもであれば、ポチポチで10分ぐらいで終わる作業だが、これまた時間がかかる。
航空会社によっては、飛行機に乗るのにコロナの陰性証明書が必要だからである。しかも、飛行機に乗る48時間前に受けなければいけない。検査を受けて、陽性だったら飛行機には乗れない。旅がギャンブル性を帯びたものになっている。
そのほかにも・・・
・検査と陰性証明書で3万円ぐらいかかる
・証明書は国によってフォーマットが違う
・証明書をゲットするには必ず病院に行かなければならない(郵送でできる簡易検査はダメ。国によっては病院を指定していることも)
・基本的に検査を受けれるのは、ビジネスマンと海外留学の人のみ。海外旅行者への検査をお断りしている病院も多い。
もはやドラクエ並みに、次々と難関が押し寄せてくる。
コロナ禍で旅行するというのは、こういうことらしい。
トルコ行きには、エミレーツ、エティハド、トルコ航空などがあったがどれも陰性証明書が必要。なので唯一不要だったカタール航空で行くことにした。ちなみにトルコの入国にも証明書は不要で、入国後の隔離等もない。
推しのエアラインといえばカタール航空なのである。サービスが優れている上に、値段もリーズナブル。さらに、カタール航空が提供する「トラベルアラート」というサービスがめちゃくちゃ使える。
出発国と行きたい国を入力するだけで、観光ができるのか、陰性証明書が必要かといった旅行者が知りたい情報をほぼリアルタイムでみれるのだ。
それまではIATAや外務省のサイトをチェックしていたが、どれも断片的かつアップデートされていなかったりでどうも網羅性に欠けていた。
航空券を買って、ようやく下ごしらえが完了である。ここにくるまでが本当に長かった。
コロナ対応の海外保険に入る
こうした状況なので、一応海外保険にも入っておきたい。コロナ対応の海外保険はそこそこあったが、長期の旅行に対応しているものは少なかった。
トルコ政府が観光客向けに提供するコロナ対応保険もあるが、掛け金が高い上に、補償額が3,000~5,000ユーロとめちゃくちゃ低い。なので却下。
そこで結局「Safety Wing」という会社の保険に入った。何がすごいって、コロナも補償対象で、旅行の補償が色々ついているのに、1ヶ月40ドルという破格の値段なのである。しかも、旅行後でも申し込める上、サブスク制で毎月自動で更新されていくというもの。
サイトを開くと、怪しげな鳥人間が迎えてくれる。値段といい、鳥人間といい怪しさ満載で「大丈夫なのか?」と思いきや、意外とまともな会社らしい。
「Safety Wing」はノルウェー発のスタートアップで、雨上がりのタケノコのように昨今、湧いて出てきたリモートワーカーやデジタルノマドを中心に保険を提供している。
値段が安いのは、購入者のほとんどがリスクの低い若者だからだという。さらに、東京海上と提携しているということで、まあ安心。
それまでは海外旅行者の間で定番の保険といえば、「World Nomad」だった。こちらもコロナに対応しているが、「Safety Wing」と比べると値段の高さが目立つ。
以前であれば、ポチポチと片目をつむっててもできた作業が、暗闇の地底を這いずりまわるように情報を収集して、ようやく準備が終わった。
出発するまでに一体どれぐらいの関門があっただろう。途中からは、何だかわけがわからなくなり、何でそこまでして海外に行きたいのだろう、とさえ思うようになった。
無事に入国できるのか
ようやく日本からトルコへ出発する。ノープランだが、とりあえずトルコにしけこみ、観光ビザで滞在できるMax3ヶ月滞在してみようというものである。
航空券をゲットしたものの、心配はつきなかった。前日にポリシーが変更して、搭乗に陰性証明書が必要になったらどうしようだとか、ちゃんと入国できるのだろうか、など。久しぶりの海外ということもあって、なぜだかすごく緊張した。おお、怖い。
しかも、出発の1週間前からトルコでは感染者が激増していた。それまでは1日3,000人ぐらいだったのに、一気に1日3万人近くの感染者が出始めたのである。
おかしいダロ!
徐々に増加するなら分かるが、昨日は3,000人だったのに、今日から突然3万人なんて・・・もうビビることをやめて、数字については考えないようにした。もう数字が本当なのかもわからん。
日本でも感染者数が増加する一方、「そんなん知らんがな」と強気で外に出ていく人々で東京の街はあふれていた。
ところが、空港へ向かう成田エクスプレスはガラ空きだった。というか貸切状態である。誰もいない車両で、ただ東京の夜景が過ぎ去っていく。銀河鉄道999の世界みたいだった。
誰もいない成田エクスプレス
飛行機は飛んでいるが、その9割が成田発なのである。空港の使用料の問題なのだろうか。
電車がガラ空きなので、空港もしんとしていた。夜9時頃だったが、空港内はほとんど照明が落とされて、一部のカウンターに光が灯っているぐらいだった。
人気がない成田空港
成田空港は、免税店やコンビニですら、まったく営業していない。もはやゴーストタウンである。
陰性証明書が不要ということもあってか、カタール航空のコロナ対策はかなりしっかりしていた。乗客全員にフェイスシールド、手袋やマスクなどが入った除菌キットを配る。乗客はほどしか入っておらず、そのほとんどは外国人であった。
機内で配られたプロテクトキット
人がまばらなドーハ空港
ドーハ空港、イスタンブル空港は、比較的人がおり、それほど変わっていないように見えた。検温チェックなどもまったくない。コロナ以前と変わらない。けれども、人だけは変わっていた。
9ヶ月前までは、空港でマスクをする人もちらほらしかいなかったが、今では全員がマスクをしている。アフリカの人も、ロシア人も、ヨーロッパ人も、アラブ人も。
やっぱりコロナはあったんだ。
毎日コロナ関連のニュースを見ているとどこか他人事のようで、現実味が薄れていった(というか日本ではほとんど外に出ていなかった)。けれども、マスク文化がない国の人々ですら、完全防備をしている姿を見ると、急にコロナの現実に引き戻されるような気がした。
そんなことを考えながら、トルコにやってきた。